幼い頃の子どもの口癖
子どもが幼児期~小学校低学年の頃、よく『パパをやっつける!』と言っていた。もちろん私がそう言うように仕向けたわけではない。
物心つくかつかないかのうちから自然と言い始めた。
最初耳にした時には驚いた。
こんな小さな子の言うような言葉ではないと思ったからだ。
でも、よくよく考えてみたらテレビの影響なのかな?とも思った。
ヒーローものなどを見て真似する子が居るが、恐らくその類だろうと。
実際にはそんな微笑ましいものとは違っていた。
それは父親へのネガティブな感情から出た言葉だった。
私が気づいた時には子どもは既に夫のことを強く拒絶していて、その感情を消し去るのは難しい感じだった。
この子の中で夫は敵になっているのだ、と悟った瞬間がある。
ある朝、保育園の準備をしていたら前日にお箸を洗っていなかったことに気づいた。
「しまった!昨日出してなかったんだ!」
と言いながらいそいそと洗い始めた私。
それを見た夫が、子どもに
「お前は何で出さねーんだよ!!!」
と怒鳴り、お箸とかコップを入れておく小さな巾着袋を投げつけた。
まさかそんなことをするとは思わなくて一瞬動きが遅れてしまった。
すぐに洗っていた箸を放り出すように置き、慌てて夫の元に駆け寄って
「私が忘れたのに何で子どもに怒るの?しかも投げつけるなんて酷い」
と訴えたら、夫は
「コイツのものは全部コイツにやらせろ」
と言った。
そして、威嚇しながらジェスチャーで子どもに『洗ってこい』と命令した。
例えばこれが6歳の子なら『なるべく自分のことは自分でやろうね』っていうのもあるかもしれない。
でも、まだ2歳だった。
2歳って家の中でもいたずらをしたり予期せぬ行動をしたりして大変な時期だ。
外に出たら無鉄砲に走って行ってしまうこともあり気が抜けない。
そんな年頃の子に保育園から持ち帰った箸は忘れずに出して洗えって???
もう話にならないと思って、それ以上何も言わずただ黙って箸を洗って保育園の準備をした。
別に洗い忘れに気づいたからといって、夫が何か大変になるわけじゃない。
出勤前の慌ただしい時間に私が洗うことになるだけ。
夫からしたらどっちでも良いだろうに、なぜそんなことで怒るのかが分からなかった。
その後、保育園へと向かいながら子どもと話をしていた時に子どもが
「早く大きくなりたいな。そしたらパパをやっつけられるのに」
と言った。
この言葉は、もうすぐ3歳という年齢よりだいぶ大人びていると感じた。
その後も何度も
「パパをやっつける!」
と繰り返した。
きっと子どもの目から見ても理不尽に映ったのだろう。
まだたどたどしい口調の我が子からそんな言葉を聞いた時の衝撃は今でも忘れられない。
早く大きくなりたいな
子どもが『パパをやっつける!』と言うたびに私は戸惑った。
情けないことに、本当に何て返したら良いのかが分からなかった。
本来なら『そんなことを言うもんじゃない』と窘めるところだろう。
でも、子どもの気持ちが良く分かるし、窘めるどころか共感してしまった。
もしかしたら、私のそういう気持ちを感じ取って出た発言かもしれない。
そうすると私のせいだよなぁと思って何も言えなかった。
元はと言えば夫がモラハラや虐待を繰り返すのが悪い。
2歳といえども自我が芽生え始めているのだから色んなことを感じ取っていたはずだ。
それなのに、まるで自分の言うことを聞かなければうちから追い出すようなことばかり言って。
子どもに嫌がられるのも当然だ。
ただ、威勢の良いこと言っていてもまだ小さな小さな2歳児。
たとえ直接夫に『パパをやっつける!』と言ったとしても鼻で笑われたと思う。
それを子ども自身が分かっていたかどうかは定かではないが、よく
「早く大きくなりたいな」
と言っていた。
うちの子は小柄で周りから『ちっちゃくて可愛い』と言われることが多かった。
これは子どもからしたら誉め言葉ではなかったようで、
「早く大きくなりたいのにっ」
と怒っていた(笑)
こんなエピソード一つ取っても、夫が子どもから嫌われていたことは明らかだ。
それに気づいてないのは本人だけ。
未だにその事実に気づいていなくて、将来面倒を見てもらおうとしているのも図々しい。