恐怖!夜な夜なにじり寄る夫
子どもが寝た後、電気を消してテレビを見ていたら夫がにじり寄ってきた。『嫌だなぁ』と思いつつも、あからさまに拒絶することもできなかった。
少しでも離れようと体を浮かせたら、夫が耳元で
「そろそろ二人目欲しいね」
と言った。
ゾワッと全身の毛が逆立つような感覚。
あの恐怖を表すとしたら、そんな言葉になるだろうか。
その頃にはもう、うっすらと離婚を考え始めていたから余計に驚いた。
今後を不安に思っているのは私だけなんだな・・・。
夫が『二人目が欲しい』と言い始めたら、それは絶対だ。
私の気持ちなんてどうでも良いのだろうし、興味も無かったと思う。
だけど、私の心情とはあまりにもかけ離れた提案だったので、非常に驚いてしまった。
取り繕おうにも、気持ちが追いつかない。
それでドン引きしてしまい、反射的に体を反らした。
だが、そんなことはお構いなしに夫は既にその気になっていた。
耳元に息を吹きかけてきて、更ににじり寄る夫。
このままではまずい!
焦って、とりあえずこの場を逃げ切らなくちゃと思った。
だけど、夫の力が強くて抵抗することもままならなかった。
子どもが起きれば中断せざるを得ないだろうから大声を出そうか?とも考えた。
でも、何となく子どもを利用することに抵抗感があった。
「ダメだよ、今はダメ」
それだけ言うのが精いっぱい。
懸命に両手で夫の体を遠ざけようとしているのに、薄ら笑いを浮かべる夫。
嫌だと言っているのに笑うなんて。
本当に何を考えているのかが分からなくて不気味だった。
「とにかく無理!」
そう言いながら必死に抵抗し続けた。
結局その日は事なきを得た。
私の粘り勝ちだったが、あまりにも嫌がる私に夫は気分を害したようだ。
小さな声で嫌味を言い、ため息をつきながら離れて行った。
『あ~助かった・・・』という安堵と共にわき上がる不安。
これからのことを考えると暗澹たる気持ちになった。
夫は言い出したら諦めることはしないだろう。
うかうかしていたら本当に二人目を妊娠して身動きが取れなくなってしまう。
そうなる前に策を講じなければと思った。
周りから固め始めた夫
嫌がられていることは分かっていたのだと思う。
だけど、言いくるめれば何とかなると考えていたようだ。
義両親が来た時に
「うちもそろそろ二人目を考えてるんだ」
と言っていて、周りから固めようとしているんだなとピンときた。
二人は大喜びでテンションも爆上がり。
「それじゃあ、お前ももっとしっかりしないとな」
などと上機嫌になり、
「この部屋じゃ手狭になるな」
とわざわざ私に言ってきた。
いや、そういう問題じゃない。
まず、夫がコンスタントにきちんと働いてくれないと家計もままならない状態なんだよ。
だけど仕事のことを言うと夫が不機嫌になるから、ずっと言えなかった。
それを義両親も分かっていたはずなのに・・・。
どうせ何を言っても否定されるだろうと思って『今はまだそういうタイミングじゃない』とだけ繰り返した。
それで分かってもらえるような相手ではないんだけど。
そう言うしかなかった。
案の定、理解してもらえなくて
「そんなこと言ったら、いつが良いタイミングなの?」
と責められた。
仕事のことは、時々義両親から『負担をかけて悪いね』と言われていた。
でも、それってただのポーズだ。
その後ろには、『だけど許してやってね』という言葉がついて回る。
それに、口では気遣うようなことを言っていても、こういう時に夫の援護に回ってしまうから当てにならない。
私が渋っているのが分かると、お義父さんは
「私たちのことをもっと頼って良いんだよ」
と言った。
もう何から突っ込みを入れたら良いのか分からなかった。
そもそも夫は常に不機嫌で、私たちは顔色を伺いながら過ごしていた。
自分の意にそわないと私たちに罰を与えるから、いつも怖かった。
虐待をされている子どもは日々怯えていた。
義両親はそれを目の当たりにしても何もできなかった。
その状況でもなお子どもを欲しがるという神経が分からなくて。
この人たちは自分たちの欲求を満たすことしか考えてないんだな、と改めて思った。
それから私はピルを服用することを考え始めた。
緊急避妊薬のことなんかも調べ始め、何とか身を守ろうと必死だった。