見えない誘導
一度は、納得したように思えた。
実際、夫も、
「本人がやりたい事を
やらせるべきだよな」
と言った。
それなのに、
週末に押しかけてきては、
文句を言うようになった。
直接的に、
何か言うわけではない。
ただ、
言葉の端々に、
棘がある。
心配するフリをして、
結局は、
貶めている。
いつものやつだ。
内心、
ウンザリしながらも、
表面上は調子を合わせた。
そうしないと、
いつ爆発するか分からないから。
何とかやり過ごそうと、
上手く交わしながら、
嵐が過ぎるのを待つ。
ずっと、
そうやって過ごしてきた。
ただ、
この頃の夫は、
自分の影響力が弱まることを、
とても恐れていた。
そのせいか、
とてもしつこかった。
夫の攻撃は、
なかなか収まらない。
「お前は(子ども)の将来に
責任持てるの?」
「間違った選択で
苦しむのは(子ども)だよ?」
私には、
そう言う。
そして、
子どもには、
「何が本当に正しいのか、
自分で考えろ」
と迫る。
一見すると、
子どもに
自分で考えさせているように見える。
でも、
実際には違う。
自分の意見に従うよう、
誘導しているだけなのだ。
それは、
子どもにも、
分かっていたのだと思う。
それでも、
怖かった。
それでも、
迷ってしまった。
それほどまでに、
長い間、
夫の言葉に
縛られていた。
それでも前へ
とうとう、
私たちは根負けした。
仮入部中は、
いろいろな部活を
見学できる。
一度は、
決意を固めたはずだった。
それなのに、
夫が入ってほしそうにしていた部活へ、
仮入部してしまった。
初めて顔を出した日、
子どもに、
「どうだった?」
と聞いた。
「つまらなかった」
「ノリが合わない」
返ってきたのは、
そんなネガティブな言葉ばかり。
実際に行ってみて、
やっぱり自分には合わない。
そう、
再認識したようだった。
その日のうちに、
二人でじっくり話した。
そして、
やりたかったことを、
諦めないように伝えた。
子どもは、
渋った。
でも、
それは、
夫が怖いからだ。
本当は、
別のことをやりたい。
なのに、
恐怖心から、
夫の意向を
くみ取ってしまう。
このままでは、
今までと何も変わらない。
そう思った。
だから、
私は伝えた。
「ママが説得するから。
もう迷わなくて大丈夫だよ」
部活を決めるだけなのに。
どうして、
こんなにも葛藤しなければ
ならないのだろう。
普通なら、
自分がやりたいことを選ぶだけ。
それなのに、
私たちにとっては、
それさえも、
簡単なことではなかった。
この異様なやり取りこそ、
私たちの歪な関係を、
よく表していたのだと思う。






