懐かしい近所のスーパー
いつぶりだろう。近所のスーパーに来たのは。
久々に足を踏み入れた途端、
苦い記憶がよみがえった。
以前は、
せっかく買い物に出かけても
ゆっくりなんてしていられなかった。
必要な物を慌ただしく探し、
手早く会計を済ませる。
分刻みに報告を求められる生活。
それがどれほど窮屈で、
どれほど息の詰まる日常だったか。
きっと、普通は想像もつかないだろう。
そんな日々を生き抜いて、
表面上は、ようやく自由を手に入れた。
その日、
子どもが珍しく言った。
「ネギトロ丼が食べたい」
普段なら、
親子丼や唐揚げを選ぶのに。
でもその日はなぜか、
ネギトロ丼にこだわった。
残り二つになっていたそれを、
迷わず両方、カゴに入れる。
もしかしたら――
お金のことを考えたのかもしれない。
他のお弁当はまだ二割引きなのに、
ネギトロ丼だけ半額だった。
お金の心配は、
この頃いつもそばにあって、
それを口に出すことも増えていた。
だから子どもなりに考えて、
一番安く手に入る
ネギトロ丼を選んだのだろうか。
もしそうだとしたら、
本当はさせなくていい苦労を
させてしまっている。
そう思うと、
胸の奥が重くなり、
やるせない気持ちになった。
義両親からの電話
私が仕事に行っている間、
子どもは留守番になる。
学校から帰ってきて、
一人で過ごす時間も長い。
だからせめて、
少しでも寂しさが紛れるようにと、
お菓子を少し多めにカゴに入れた。
それくらいで
何かが変わるわけじゃないかもしれない。
それでも、
少しでも楽しく過ごしてほしかった。
お菓子を選んでいる間、
子どもは珍しくテンションが高く、
売り場を行ったり来たりしていた。
真剣な顔で悩み、
いくつかを選び出す。
そろそろ会計を済ませようと、
私たちはレジへ向かった。
その時だった。
ポケットの中で、
携帯が震えた。
遅る遅る取り出し、
画面を確認する。
表示されていたのは、
お義父さんの名前。
一瞬で、
胃のあたりが重くなった。
「気づかなかったことにしようか」
反射的に、
そんな考えがよぎった。
でも、
後から何を言われるか分からない。
結局、
仕方なく通話ボタンを押した。






