「パパに見つかってはいけない」
子どもは学校から帰ると、まず遠目から我が家を確認していた。
パパがいるのが見えたら、
絶対に近寄ってはいけない。
もう自分で考えられる年齢だったので、
自分なりに安全策を練っていたのだと思う。
誰もいないと分かると、
急いで家に入り、
鍵とチェーンをかける。
その間、ほんの数秒。
よその家の壁際に隠れながら、
事前に鍵を用意しておくのも
子どもの“マイルール”だった。
まるで忍者みたいだ、と
一瞬思った。
でも本当は、
そんなことを子どもにさせている状況が異常だった。
周囲を警戒しながらコソコソと家に入る。
帰り道も、
家の前でも、
帰宅してからも。
常に気を張っていなければならない。
傍から見れば、
「そんな可哀想なことある?」
と思うような状況だろう。
だけど、モラハラ虐待を受けた人になら
きっと分かってもらえると思う。
逃げ場がない時は、
警戒するしかないのだ。
『孫に会いたい』という圧
放課後の不安は、
夫だけではなかった。
義両親もまた、
「孫に会いたい」
と、たびたびやって来た。
その中でも忘れられない出来事がある。
ある日、手紙にこう書かれていた。
「うちの親も会いたいと言っているから、
〇月〇日16時頃行くと伝えて」
また一方的だった。
こちらの都合などお構いなし。
子どもの気持ちなんて、
夫にとっては最初から存在していない。
義両親が寂しがっている。
だから会わせる。
優先されるのは、いつだってそちら側の感情だった。
どんなに子どもが怯えていても、
義両親は
「自分たちがいれば大丈夫」
という謎の自信を持っていた。
あれだけ目の前で
虐待が繰り返されていたのに。
そういう身勝手な都合に、
私たちは何度も振り回された。
その時は、急いでLINEを送った。
「お友だちと一緒に
勉強する約束があるんだって」
すると案の定、
怒りのこもった返事が来た。
だから私は続けた。
「塾を辞めちゃったから、
勉強遅れないように頑張ってるんだよ」
辞めさせろと言ったのは、あなたでしょう。
その影響が出たとしても、
文句を言える立場ではないはずだ。
責める気持ちも込めて送った言葉だった。
でも、夫には全く響かなかった。
その次の日から、
また毎日のようにポストに手紙が入るようになった。
確認するたび、
ため息がこぼれた。






