給食のない夏休みが怖かった
長いお休みを、有意義に過ごしてほしい。いつも、そう願っていた。
パパと一緒に暮らしていた頃、
子どもは部屋の片隅で、
息を潜めるように過ごしていた。
怒られないように。
機嫌を損ねないように。
それでも、
何がきっかけで爆発するか分からない。
ほんの些細なことで、
突然怒鳴り声が飛んでくる。
家の中なのに、
まるで地雷原を歩いているみたい。
「地獄だった」
そう言うと大げさに聞こえるかもしれない。
でも、本当にそうだった。
だからこそ、
ようやく離れられたのだから、
子どもには思いきり自由を満喫してほしかった。
興味を持ったことには、
できる限り挑戦させてあげたかった。
「やってみたい」
その気持ちを、
もう押し潰されたくなかったから。
だけど、
現実には頭の痛い問題も・・・。
夏休みには、
当たり前だけど給食がない。
毎日のお昼を、
家で用意しなければならない。
だから、仕事へ持っていくお弁当を作る時に、
子どもの分も一緒に作っていた。
1つ作るのも2つ作るのも、
手間だけなら大して変わらない。
問題は、
やっぱり食費だった。
自分ひとりなら、
見た目なんて気にせず、
余りものだけでも済ませられる。
でも、
子どもが図書館でお弁当を開く姿を想像すると、
どうしても少し気を使ってしまった。
彩りを考えて、
なるべく寂しく見えないように詰める。
その時間は嫌いじゃなかったけれど、
正直、家計にはかなり痛かった。
スーパーの特売を回って、
安いお肉を小分けにして冷凍する。
半額シールの商品を見つけるたび、
少しホッとする。
「少しでも安く」
そのことばかり考えていた気がする。
海苔も巻けなかったおにぎり
お給料日直後は、
「今月は何とかいけるかもしれない」
そう思う。
実際、
途中までは順調なことも多かった。
だけど、
お給料日が近づく頃には、
冷蔵庫の中が見事なくらい空っぽになる。
お弁当に入れられるものが、
本当に何もない。
どうしよう。
昨日の残りものもない。
作り置きのおかずもない。
冷凍していたお肉も使い切った。
野菜室には、
使いかけのキャベツが少しだけ。
そんな日、
結局作れたのは、
海苔も巻いていないおにぎりと、
少し甘い卵焼きだけだった。
それをお弁当袋に入れながら、
涙がこぼれそうになった。
なんて情けない母親なんだろう。
育ち盛りなのに。
本当はこんなんじゃ足りないはずなのに。
もっとちゃんとしてあげたいのに。
申し訳ない気持ちで手渡すと、
子どもはいつも笑ってくれた。
「ママの卵焼き、大好き」
「優しい味がするよ」
その言葉に、
何度救われただろう。
苦しくて、
情けなくて、
自分を責めてばかりだった毎日の中で、
たった一言が、
また前を向く力をくれた。
言葉って、不思議だ。
ほんの一言なのに、
人を支える力があるんだなって、
あの頃、何度も思った。






