2026年2月16日月曜日

夢にまで見た新生活がスタート

気持ちも新たに——

自宅に戻り、

私たちは新生活をスタートさせた。


夫のいない家。


もう自宅で怒鳴られることもない。


それが、

ただただ嬉しかった。


けれど同時に、不安もあった。


夫がこのまま疎遠になるとは、

どうしても思えなかったからだ。


案の定、

それからも私たちは関わり続けることになるのだけれど……。


あの頃の私たちは、


「これからの生活が楽しみ!」


そう言い聞かせるようにして、

必死でその事実から目を背けていた。


そして——


そんな願いも虚しく、

夫の介入は少しずつ、

けれど確実に激しくなっていった。


私がもっとも心配していたのは、

子どもが帰宅した後のこと。


夫が仕事をしていれば、

その時間にわざわざ来ることはないだろう。


けれど、無職の期間は違う。


いつだって来られてしまう。

毎日だって、可能だった。


それが怖くて、

私は子どもに『学童』を提案した。


放課後は友達と遊びたかった子ども。


その気持ちはよく分かる。

でも——危ないかもしれない。


そんな思いが、私の中で渦を巻いていた。


結局、

しばらくは様子を見ることになった。


断ち切れない鎖

私も子どもも、朝が弱い。


なかなか起きられない。


毎朝目覚ましはかけていたけれど、

一つでは足りなかった。


二つに増やし、

夜は早く寝るようにした。


それでも、

ギリギリになってしまうことがある。


ハッと目が覚めたら、

家を出る10分前——


そんな日もあった。


大騒ぎで支度をして、

バタバタと二人で家を飛び出す。


そんな毎日。


思い出すと、

とにかく慌ただしかった記憶が強い。


でも同時に、

楽しかった。


よく笑っていた。


ちょっとしたことで笑いが止まらなくなるくらい、

たくさん笑った。


夫がいないだけで、

こんなにも楽なんだ。


怒鳴られないだけで、

こんなにも安心して暮らせるんだ。


そんな日常に、

どこか戸惑いすら感じていた。


けれど——


心の片隅には、

いつも夫の存在が引っかかっていた。


抜けない棘のように。


罪悪感に入り込むように、

毎日鳴る電話。


やがて私は、

子どもを遠ざけることさえ難しくなっていった。


嫌々電話に出て、

恐怖の対象である「パパ」と話す子ども。


自由になったはずなのに。


私たちの心は、

少しずつ追い詰められていった。

2026年2月14日土曜日

夫からの驚きの提案

「毎日声が聴きたい」

重い気持ちで、

電話をかけた。


話し始めた瞬間から、

どうやって切り上げようか、

そればかりを考えていた。


それほどまでに、

夫との電話が嫌だった。


ずっと避けてきたのは、

怒鳴られたり、

なじられたりするのが

怖かったから。


それに、

夫のペースに乗せられて、

いつの間にか

勝手に話を進められてしまう。


それも、

強く警戒していた。


その日、

夫は開口一番、

こう言った。


「これからは、

 毎日、声が聴きたい」


その言葉を聞いた瞬間、

頭の中が真っ白になった。


――毎日?


それは、

毎日電話をする、

ということだろうか。


慌てて、


「それは、ちょっと難しい」


と、できるだけ柔らかく伝えた。


すると、

すぐに強い口調で返ってきた。


「こっちは譲歩してるんだ。

 それくらい、いいだろ?」


胸の奥が、

ぎゅっと縮む。


毎日、

こんな時間が待っている。


そう考えただけで、

とても耐えられないと思った。


子どもだって、

きっと同じだ。


毎日の電話が当たり前になったら、

いつか必ず、

話さなければならない日が来る。


その光景を想像して、

背筋がぞっとした。


言葉が、

出てこなくなった。


この人は、

私たちを

解放するつもりなどない。


離れてもなお、

縛り続けるつもりなのだ。


そう感じ取ってしまい、

叫び出したい衝動に駆られた。


何とか答えを保留に・・・

毎日の電話だけは、

絶対に嫌だった。


そう思っても、

はっきりと拒否することができない。


けれど、

言いなりになるわけにもいかず、

私は必死に言い訳を並べた。


最終的に、

結論は先延ばしになり、

ひとまず

保留という形に落ち着いた。


「時々、電話しろ」


くらいは言われるだろうと

思っていた。


まさか、

「毎日、電話しろ」

と言われるとは

想像もしていなかった。


だから、

想定外の提案に

完全に動揺してしまったが、


それでも、

その場で承諾せずに済んだことに、

心の底から安堵した。


私は、

忘れていた。


夫が、

決して諦めない人間だということを。


翌日から、

夫は執拗に

電話をかけてくるようになった。


着信履歴は、

夫の名前で

埋め尽くされていく。


数分おきに鳴る電話。

ひどい時には、

数十秒後に、また。


私は、

少しずつ、

追い詰められていった。

2026年2月13日金曜日

別居しても終わらない、夫からの支配

自由なはずなのに、心細い帰り道

誰もいない帰り道。


薄暗い道を、

ゆっくり、ゆっくり、

おしゃべりしながら歩いた。


自分たちの家なのに、

なぜか、

帰りたくない。


現実から目を逸らしたいような、

後ろ向きの気持ちが

確かにあった。


それでも、

夫がいる家に帰るよりは、

何万倍もましだ。


そう思って、

何度も自分に言い聞かせ、

気持ちを奮い立たせた。


あの日、

二人で歩いた帰り道の情景は、

今でもはっきり覚えている。


自由なはずなのに、

心細かった。


心は不安定で、

そわそわして、

落ち着かない。


理由ははっきりしないのに、

何もかもが怖かった。


子どもも、

同じように感じていたのだと思う。


「なんだか、嫌だな」


そう、何度も口にした。


これが嫌だ、

と一つに絞れるようなものではなく、

あれも、これも、

全部が嫌だった。


二人とも、

明るく振る舞ってはいたけれど、

本当は怯えていた。


そんな心細さを抱えたまま、

寄り添うように歩いた帰り道。


まるで、

この世界に、

二人ぼっちになってしまったような

気がしていた。


逃げられない一本の電話

夕飯を終え、

お風呂に入り、

本来なら、

ほっと一息つく時間だ。


けれど私には、

まだ終わっていない用事があった。


夫に電話をする。


それは、

これ以上ないほど、

気の重い役目だった。


子どもに話させるのは酷だ。

だから、

最初から決めていた。


自分だけ話して、

短く終わらせる。


さて、

そろそろかけるか。


そう思っても、

なかなか通話ボタンを押せない。


気が重くて、

携帯を手に取っては、また置く、

というのを繰り返した。


この電話は、

一体、何時になったら終わるのだろう。


そう考えれば考えるほど、

胸の奥が重くなった。


結局、

電話をかけたのは、

子どもが眠ってからだった。


その時間なら、

「子どもに代われ」

と言われずに済む。


そんな計算をしている自分に、

嫌気がさしながら。


震える手で通話ボタンを押すと、

すぐに、

夫は出た。


私は、

できるだけ子どもから離れた場所へ移動し、

声を潜めて話し始めた。

2026年2月12日木曜日

空気を読まない夫

「寂しい」と言う夫

電話口でお義父さんが、

「代わるね」

と言ってすぐ、


この世で、

いちばん聞きたくない声がした。


夫の声だ。


もちろん、

嬉しい気持ちなど

微塵もない。


心の奥底から、

言葉にできない嫌悪感が込み上げ、

何も言えなくなった。


そんな私を気にする様子もなく、

夫はいつもの調子で言う。


「どう? 落ち着いた?」


まるで、

これまでの出来事が

何ひとつ無かったかのように。


その瞬間、

はっきりと実感した。


この人は、

自分が悪いなどとは

一度も考えたことがないのだろう、と。


ごく普通の声色で

話しかけてくる夫に、

全身が警戒する。


これまでと、

まったく同じ構図だ。


手のひらは汗ばみ、

心臓の鼓動が速くなる。


気づけば、

酸欠のような浅い呼吸になり、

息苦しさを感じていた。


そんな私をよそに、

夫は繰り返す。


「お前らに会えなくて、寂しい」


意味不明な長電話

固まったままの私を、

子どもが不安そうに見上げていた。


しっかりしなければ。

これ以上、

不安にさせてはいけない。


私は慌てて平静を装い、


「今、外だから。

 これからお会計するところ」


そう伝えた。


それを聞けば、

さすがに電話を切るだろう。

そう思った。


でも、

甘かった。


買い物中だと伝えても、

一向に切る気配はない。


何を買っているのか。

子どもは何を選んだのか。


今すぐ聞かなくてもいい話を、

延々と続ける。


困った私は、


「(子ども)ちゃんがお腹空いちゃうから、

 そろそろお会計して帰るね」


そう伝えた。


すると当然のように、

こう言われた。


「じゃあ、(子ども)に代わって」


冗談じゃない。


部屋を明け渡したことで、

すべて許されたつもりなのだろうか。


憤りが込み上げる一方で、

夫は変わらず、

自分の話を続けている。


切りたくても、

切らせてくれない。


十分ほど経った頃、

これ以上は無理だと思い、


「これから帰って、ご飯だから」


半ば強引に、

切り上げようとした。


それで終わるはずだった。


けれど、

返ってきた言葉はこうだった。


「じゃあ、家着いて飯食って、

 落ち着いたら電話して」


一気に、

身動きが取れなくなる。


その間、

お会計は子どもにお金を渡して、

お願いしていた。


何も知らずに戻ってきた

子どもの顔を見た瞬間、

胸の奥から、

申し訳なさが一気に溢れ出した。


涙が、

こぼれそうになる。


せっかくの、

二人きりの時間。


電話をすることを知ったら、

きっと、

がっかりさせてしまう。

2026年2月11日水曜日

モラハラ夫への感謝を促す義両親

「誰のおかげ?」

電話に出ると、

お義父さんは開口一番、こう言った。


「もう落ち着いたか」


まだ到着してから、

ほんの数時間しか経っていない。


部屋が最初から片付いていれば、

確かに、

それほど時間はかからなかっただろう。


けれど、実際は違った。


夫やその友人たちの私物が溢れ、

とてもそのままでは

暮らせる状態ではなかった。


片付けで体力も気力も削られていたところに、

この一言。


胸の奥に、

小さな棘が刺さったような感覚がした。


それでも、

義両親なりに

助けてくれた部分もある。


だから私は、

感情を抑えて、


「はい、おかげさまで」


とだけ答えた。


すると今度は、

唐突にこう言われた。


「感謝しないといけないな」


一瞬、

何のことか分からなかった。


言葉を返せずにいると、

お義父さんは続けた。


「そこに住めるのは、

 (夫)のおかげなんだから」


頭の中が、

一気に混乱した。


一体、

どこが「夫のおかげ」なのだろう。


散々居座り、

家賃も払わず、

この家を仲間内のたまり場にした。


その痕跡が、

今も色濃く残る部屋で、

子どもと二人、

必死に再スタートを切ろうとしているのに。


それでもお義父さんは、

「夫のおかげ」と

言わせたいのか、


同じことを、

何度も問いかけてきた。


家族にまで演技する夫

なぜ、

お義父さんが

こんなことを言い出したのか。


理由は、

すぐに分かった。


それは、

夫がそう仕向けたのだ。


電話の途中で、

お義父さんがこんなことを言った。


「二人が幸せに暮らせれば、

 それでいいって、

 あいつは言っている」


その瞬間、

はっきりと理解した。


これは、

夫の策略だと。


弱々しく、

そう語られたら――

親なら、

きっと放っておけない。


その気持ちを利用して、

夫はまた、

自分を被害者のように見せている。


それだけではなかった。


夫は、

「いつかまた、

 三人で暮らしたい」


そう言って、

泣きながら話しているらしい。


その結果、

義両親から告げられた。


「これからのことは、

 よく考えてくれ」


「(夫)だけが、

 辛い思いをすることのないように」


言葉が、

頭を素通りしていく。


私はもう、

返事をすることすらできず、

ただ黙って聞いていた。


ようやく話が途切れ、

終わるのかと思った、その時。


「今から(夫)に代わるから」


「一言、

 何か言ってやって」


そう言われて、

頭の中が真っ白になった。

2026年2月10日火曜日

タイミングの悪い義両親からの電話

懐かしい近所のスーパー

いつぶりだろう。

近所のスーパーに来たのは。


久々に足を踏み入れた途端、

苦い記憶がよみがえった。


以前は、

せっかく買い物に出かけても

ゆっくりなんてしていられなかった。


必要な物を慌ただしく探し、

手早く会計を済ませる。


分刻みに報告を求められる生活。


それがどれほど窮屈で、

どれほど息の詰まる日常だったか。

きっと、普通は想像もつかないだろう。


そんな日々を生き抜いて、

表面上は、ようやく自由を手に入れた。


その日、

子どもが珍しく言った。


「ネギトロ丼が食べたい」


普段なら、

親子丼や唐揚げを選ぶのに。


でもその日はなぜか、

ネギトロ丼にこだわった。


残り二つになっていたそれを、

迷わず両方、カゴに入れる。


もしかしたら――

お金のことを考えたのかもしれない。


他のお弁当はまだ二割引きなのに、

ネギトロ丼だけ半額だった。


お金の心配は、

この頃いつもそばにあって、

それを口に出すことも増えていた。


だから子どもなりに考えて、

一番安く手に入る

ネギトロ丼を選んだのだろうか。


もしそうだとしたら、

本当はさせなくていい苦労を

させてしまっている。


そう思うと、

胸の奥が重くなり、

やるせない気持ちになった。


義両親からの電話

私が仕事に行っている間、

子どもは留守番になる。


学校から帰ってきて、

一人で過ごす時間も長い。


だからせめて、

少しでも寂しさが紛れるようにと、

お菓子を少し多めにカゴに入れた。


それくらいで

何かが変わるわけじゃないかもしれない。


それでも、

少しでも楽しく過ごしてほしかった。


お菓子を選んでいる間、

子どもは珍しくテンションが高く、

売り場を行ったり来たりしていた。


真剣な顔で悩み、

いくつかを選び出す。


そろそろ会計を済ませようと、

私たちはレジへ向かった。


その時だった。


ポケットの中で、

携帯が震えた。


遅る遅る取り出し、

画面を確認する。


表示されていたのは、

お義父さんの名前。


一瞬で、

胃のあたりが重くなった。


「気づかなかったことにしようか」


反射的に、

そんな考えがよぎった。


でも、

後から何を言われるか分からない。


結局、

仕方なく通話ボタンを押した。

2026年2月9日月曜日

落ち着かない我が家

夫の気配がそこかしこに・・・

夫の気配が、

そこかしこに残っている。


かつて家族三人で暮らし、

そこには確かに日常があった。


嫌な思い出ばかりだけど、

必死に探せばほんの少しだけ、

楽しかった記憶もある。


本当に、

ほんのわずかな時間だったけれど。


再び足を踏み入れた我が家には、

そんな面影はどこにも残っていなかった。


代わりにあったのは、

夫やその友人たちが

楽しく過ごしていたであろう痕跡。


無造作に置かれた私物が、

まるで「まだここにいる」と

主張しているようだった。


それを見た途端、

子どもの表情が一気に曇った。


夫の私物を、

まるで触れてはいけない物のように

恐る恐る持ち上げ、

部屋の端へ追いやる。


多分、

目に入ること自体が

もう受け入れられないのだ。


その光景を見て、

私はすぐに声を掛けられなかった。


このままでは暮らせない。

いつも夫の気配を感じながらなんて、

耐えられるはずがない。


そう思って、

私たちは掃除をすることにした。


とはいえ、

勝手に捨てることはできない。

彼らの物は、

ひとつひとつビニール袋に入れていく。


夫の物に触れるたび、

心臓がギュッとなる。

無意識に息を止めている自分に気づく。


本人はいない。

それなのに、

私物に触れるだけで

こんなにも怖い。


片付けながら、

ふと、ある考えが浮かんだ。


もしかしたら夫は、

わざと自分の物を

置いていったのではないか。


触らせるために。

思い出させるために。

恐怖を残すために。


そう考えた瞬間、

背中がひんやりとした。


逃れられない夫の影

正直に言って、

非常に居心地が悪かった。


「これじゃあ、

なんだか気を抜けないね」


そんな話をしながら、

私たちは黙々と手を動かした。


とりあえず、

視界に入らないだけでも

だいぶ違う。


目に触れない場所へ

一生懸命しまい込んでいるうちに、

いつの間にか外は夕方になっていた。


二人ともクタクタで、

疲労だけが溜まり、

モヤモヤは消えない。


この部屋に戻るよう

指示したのは夫だ。


言う通りにしなければ、

出て行ってはくれなかった。

他に選択肢はなかった。


それなのに、

まるで嫌がらせを

受けているような気分になる。


日も暮れ、

薄暗くなった部屋で二人。

沈んだ気持ちのまま、

片付けに没頭した。


途中、

「これはどうしようか」

と小声で相談しながら、

それでも結局、

丁重にしまい込む。


離れてもなお、

私たちは恐怖に支配されていた。


気づけば、

いつもの夕飯の時間は

とっくに過ぎていた。


お腹が空いていることに気づき、

外へ買いに行くことにした。


本当は節約したい。

でも、作る気力が残っていなかった。


子どもは外食をしたがったけれど、

何とか宥めて、

近くのスーパーへ向かった。

夢にまで見た新生活がスタート

気持ちも新たに—— 自宅に戻り、 私たちは新生活をスタートさせた。 夫のいない家。 もう自宅で怒鳴られることもない。 それが、 ただただ嬉しかった。 けれど同時に、不安もあった。 夫がこのまま疎遠になるとは、 どうしても思えなかったからだ。 案の定、 それからも私たちは関わり続け...