大満足の休日
あの日、私たちは心の底から楽しんだ。
見るもの全てが新鮮に見え、
些細なことにも感動した。
こんな時間を、
欲していたのだ。
いくら二人で暮らしていると言っても、
いつ夫や義両親が来るか分からない状況で、
常に気が張っていた。
居心地の良い家にしたくても、
実際は、彼らの影に怯える生活。
できることには、
限界がある。
だけど、外に出て
遠くまで足を伸ばしたら、
本当の意味での「自由」を実感できた。
二人とも一日中笑顔で、
頬が痛くなるほど笑い転げた。
帰りが近づいてきても
帰りたくなくて……。
「こっちに
泊まれたら良かったのにね」
なんて言い合った。
だけど、
そういうわけにはいかない。
いや、予算に余裕があれば、
もしかしたら……。
でも、当日に取れる宿も
ないだろう。
日も暮れてきた頃、
名残惜しさを感じつつ、
帰ることにした。
一気に現実に引き戻されて
楽しかった休日は、
間もなく終わりを告げようとしている。
二人とも、
先ほどまでのテンションとは打って変わり、
口数も少なくなった。
疲れていたのもある。
思い切りはしゃいだから、
いつもより体力を使ったはずだ。
ただ、それだけでなく、
やはり楽しい時間というのは
いつまでも続いてほしいと思うものだ。
子どもは、
いつまでも窓の外を
残念そうに眺めていた。
「また、来よう」
と言いながら。
帰りの電車に揺られながら、
私は既に
別のことを考えていた。
もし夫と、
もっと早く離れることができていたら。
きっと子どもにも
たくさんの楽しい思い出を
残してあげられた。
勇気を出すのが遅すぎて、
そんな時間を奪ってしまった。
無邪気に楽しむ子どもを見ながら、
何だか申し訳なくて、
胸の奥がギュッとなった。
失ってしまった時間は、
もう戻らないのだ。
事の重大さを実感した時、
いつも思う。
『もっと早く出ていれば』
過ぎ去ってしまったことは、
もう、どうしようもない。
分かっていても、
消化しきれない思いが残った。
間もなく乗り換えの駅に到着する。
うつらうつらしている子どもに
「降りるよ」と声を掛けた。
私も荷物を確認し、
何の気なしに
バッグの中を見た。
その時、目に入ったのが、
携帯だった。
一日中、電源を切っていた携帯。
夜になるまで、
そのままにしてしまった。
気づいた瞬間、
心臓がドクンとなった。






