温かい同僚の手
お義父さんから一方的にまくし立てられ、上手く言い返すこともできなかった。
職場では“仕事モード”を貫きたい。
ずっと、そう思っていたのに、
不覚にも涙が浮かんだ。
そんな異変に真っ先に気づいたのが、
いつも話を聞いてくれていた同僚だった。
「ちょっと、こっちに……」
そう言いながら、
目立たない場所まで手を引かれて行った。
この時、
同僚は歩きながら、
ずっと背中をさすってくれていた。
その手がとても温かくて、
余計に涙が出てきた。
一人で闘っているわけではない。
そう思えた瞬間だった。
その後、オフィスの片隅で、
小声で事情を説明した。
「取り乱しちゃって、ごめん」
そう謝ると、
同僚は私以上に憤っていた。
特に、
夫のことが許せないようだった。
甘い顔をしてはいけない。
譲歩してもいけない。
それは、
これまで何度も言われてきたことだ。
私も、
そのつもりではいた。
でも、
どうしても罪悪感が出てしまう。
相手の言っていることの
全てが正しいとは思わない。
それでも、
どこかで
「私にも悪い部分があるのではないか」
そんな不安が、
ずっと消えなかった。
慎重さとは少し違う、
弱気な部分が出ていたのだと思う。
不安そうに待つ子ども
その日の帰りは、
できるだけ急いだ。
夫や義両親が来たら大変だ。
子ども一人では、
追い返すことなんてできない。
そう思って急いで駅へ向かうと、
ちょうど電車が来た。
息を切らしながら乗り込み、
最寄り駅へと向かう。
改札を通った瞬間、
私の目に飛び込んできたのは、
不安そうな表情で待つ子どもだった。
最近は忙しくて、
駅まで迎えに来ることなんてなかったのに。
何かあったのかな。
少し緊張しながら声をかけると、
子どもは泣きそうな顔で言った。
「パパが来たんだよ」
「おじいちゃんもいた」
学校から帰ったあと、
友達と遊ぶために一度出かけ、
帰宅した時には、
家の前に夫たちがいたらしい。
鉢合わせるのを避けるため、
遠くから様子を確認するのが、
いつの間にか子どもの習慣になっていた。
そのお陰で、
難を逃れることができた。
「そっか。怖かったね」
そう言いながら背中に触れると、
手の平に鼓動が伝わってきた。
それほどまでに、
怖い思いをしたのだ。
もし、
まだ近くをうろついていたら危険だ。
お財布には厳しい。
それでも、
背に腹は代えられなかった。
その日の晩御飯は、
外で食べることにした。






