2026年4月16日木曜日

子どもとの連絡手段を確保しようとする夫

差し出されたキッズ携帯

食事のあと。

夫に連れて行かれたのは、

携帯ショップだった。


たぶん、下見は済ませていたのだろう。


店に入るなり、迷いなく歩き出す。

一直線に、目的の場所へ。


並ぶ携帯の中から、一つを手に取った。


そして子どもに向かって言う。


「これ、どうだ?」


子どもは、青ざめた顔でそれを見ていた。


私も、言葉が出なかった。

勢いに押されて、断る理由すら浮かばない。


こうやって準備してくる時の夫は、厄介だ。


弱い抵抗なんて、通じない。

目的のためなら、何でもやる。


そんな気配があった。


だけど——


携帯なんて持たされたら、

逃げ道がなくなる。


きっと言うだろう。

「いつでも連絡が取れるようにしろ」と。


そう思っただけで、息が詰まる。

眩暈がするほどの、絶望。


止めなきゃ。


理由を並べて、なんとか諦めさせようとした。

でも、まったく聞かない。


困って、義両親に助けを求めた。


親なら止めてくれるかもしれない。

そう思ったのに——


「携帯があれば安心ね」


嬉しそうに、そう言った。


「何色がいいの?」


子どもに選ばせようとする。


味方は、いなかった。


子どもは今にも泣きそうな顔で、

立ち尽くしていた。


夫の逆鱗に触れた

子どもも、何度も断っていた。


「まだ使わないから」


必死の声だった。


でも夫は引かない。

こんな時だけ、理解ある父親を演じる。


「今の子は、みんな持ってるだろ」


そう言って、押し切ろうとする。


店員さんまで巻き込んで、

「持っていた方がいいですよ」


そんな空気ができあがっていく。


おかしい。

まるでこちらが、善意を拒んでいるみたいだ。


普通なら、喜ぶはずの提案。


でも私たちは、違う。


だから聞かれる。


「携帯、反対なんですか?」


違う。

そうじゃない。


でも——


「虐待する父親から守りたい」

なんて、言えない。


曖昧に笑うしかなかった。


このまま耐えれば、

今日は引くかもしれない。


そう思って、小さく抵抗を続ける。


それしか、できなかった。


——けれど。


数分後。

夫は、強引に動いた。


了承もないまま、話を進めようとした。


「じゃ、これでお願いします」


店員にそう告げた瞬間。

血の気が引いた。


気づけば、叫んでいた。


「本当に要らないんです!」


一瞬の、静寂。


重たい空気。


私は、恐る恐る顔を上げた。


そこには——


目の据わった夫が、こちらを睨んでいた。

2026年4月15日水曜日

不穏な空気が流れ始めた昼食

お店決めでひと悶着

お昼が近づき、

どこで食べるかという話になった。


こういう時、

どうせ私の意見は通らない。


最初から分かっているから、

何も考えなかった。


一応、子どもにも聞かれる。


けれど、

意に沿わなければ却下される。


却下されるだけならまだいい。


その場の空気が悪くなるのを、

子どもはよく知っていた。


だから、何を聞かれても

「なんでもいいよ」

そう繰り返す。


文句を言われるくらいなら、

最初から答えない。


それが子どもなりの、

精一杯の防御だった。


誰も決めないまま時間だけが過ぎ、

夫が徐々に苛立ち始める。


そんなにイライラするなら、

最初から自分で決めればいいのに。


どうせ最後は、

そうなるのだから。


心の中でそう思いながら、

やんわりと口にした。


「(夫)が決めて」


とても面倒くさいけれど、

“頼まれて決めた”という形が

この人には必要だった。


案の定、選ばれたのは

夫の好きな店だった。


義両親はなぜか、何度も

「(子ども)ちゃん、本当にここでいいの?」

と確認してくる。


そのたびに、

子どもは困ったように黙り込んだ。


子どもに「プレゼントがある」と意味深な夫

店に入り、注文を済ませると、

場の空気はどこか重くなった。


疲れているのか、

誰もほとんど話さない。


料理が運ばれてきても、

無言のまま口に運ぶだけだった。


その沈黙が、

妙に長く感じた。


『何か気に障ることをしただろうか』


そんなことまで考えてしまう自分がいた。


ようやく食事が進んだ頃、

夫がふいに口を開いた。


「今日は(子ども)にプレゼントがあるんだ」


その一言で、

空気が変わった気がした。


嫌な予感がする。


この人がこういう言い方をする時、

ろくなことがない。


内容を確かめようとすると、

「あとのお楽しみ」とだけ言われた。


それ以上は何も教えてくれない。


ただでさえ喉を通らない食事が、

さらに重くなる。


子どもは、

「残すと怒られる」という恐怖から、

必死に食べていた。


その様子があまりにも必死で、

思わず声をかけた。


「大丈夫?食べきれそう?」


すると夫は、

鼻で笑った。


「好物だからいけるだろ」


自信たっぷりにそう言う夫を、

信じられない気持ちで見つめた。


それ、むしろ苦手なものだよ。


前にも伝えたはずなのに。


こういうことが、何度もある。


そのたびに、

この人は本当に子どもを見ていないのだと

思い知らされる。


そして、同じくらい

悲しくなる。


問題は、このあとだった。


食事を終えた夫が向かった先を見て、

背筋が冷たくなる。


携帯ショップだった。


嫌な予感は、

外れることなく的中した。


一気に冷や汗が出る。


子どもに携帯なんて、

絶対に持たせられない。


直接やり取りできる手段を、

与えるわけにはいかない。


どうにかしなければ。


泣きそうになるのをこらえながら、

足早に進む夫の背中を追った。

2026年4月14日火曜日

試練のゴールデンウィーク

虚像の家族団らん

一緒に過ごすその日は、

私たちの気持ちとは正反対の、

よく晴れた日だった。


普段よりも早く目が覚めたのは、

気が重くて眠れなかったから。


嫌だな、と思いながら過ごしているうちに

深夜になり、

夜中の2時に携帯で時間を確認した。


そのあと、いつの間にか眠っていた。


そんな状態なのに、

朝は早く目が覚めた。


重たい気持ちを引きずったまま、

静かに準備を始める。


子どもは、まだ眠っていた。


必要以上に早く起こす必要はない。


物音を立てないように気をつけながら、

朝ごはんを用意する。


8時半を過ぎて、

そろそろ起こそうかと思い、

顔を覗き込んだ。


すると、子どもはもう起きていた。


学校の日でさえ、

自分で起きることはほとんどない。


いつもはギリギリまで

布団の中でゴロゴロしているのに。


その日は、

すでに目を覚ましていて、

無言のまま席に座った。


「嫌だなぁ」


ぽつりとこぼれたその一言は、

私の気持ちとまったく同じだった。


「嫌だなぁ」という空気が

部屋いっぱいに広がる中で、

二人で黙々とご飯を食べた。


会話もないまま、

準備だけが淡々と進んでいく。


テンションの高い義家族に圧倒されて

待ち合わせ場所には、

予定より10分早く着いた。


けれど、すでに

夫と義両親は到着していた。


私たちを見つけると、

笑顔で手を振りながら近づいてくる。


お義母さんは涙を浮かべて、

「今日はよろしくね」と言った。


そういう場面に弱い私は、

自分がひどいことをしているような

気持ちになった。


孫にも会わせず、

電話も取り次がない。


それがどれほど残酷なことなのか。


誰に責められたわけでもないのに、

「これでいいのか」と

自分に問い続けていた。


夫は終始ご機嫌で、

子どもと手をつなごうとする。


それをさりげなく避けながら、

子どもは私たちより前へ前へと歩いていった。


本当は隣に行きたかった。


でも、それをすれば

「二人で固まっている」と

受け取られるかもしれない。


そんなことを考えてしまう私は、

結局、少し後ろからついていくしかなかった。


傍から見れば、

きっと普通の家族に見えただろう。


子どもは無理をしてはしゃぎ、

夫はそれに満足そうな顔をしていた。


「楽しそうだな」


その一言で、はっきりと思い出した。


この人は、そういう人だった。


子どもの気持ちを見ているわけではない。


自分が満たされていれば、

それでいいのだ。


この日は、子どもと会えて、

義両親にも会わせることができた。


それだけで十分なのだろう。


夜まで時間があるせいか、

どこか余裕すら感じられた。


まだ、

長い試練の時間は始まったばかりだった。

2026年4月13日月曜日

ゴールデンウィーク一週間前、新たな提案

家で過ごすのを回避したい

本来、家というのは

もっとも落ち着ける場所だ。


けれど私にとっては、

そう思える場所ではなかった。


元々、モラハラ夫と過ごしていた場所だから、

嫌な記憶ばかりが蘇る。


それでも、

引っ越しができない以上、

そこで過ごすしかない。


だからこそ、

これ以上嫌な思い出を増やしたくなかった。


長時間、夫たちと過ごすなんて、

考えたくもない。


ゴールデンウィークが近づくにつれて、

その思いはどんどん強くなっていった。


とはいえ、

彼らの中ではすでに、

「うちで過ごす」ことが前提になっている。


それを覆すには、

ただ断るだけでは足りない。


納得させるための“理由”が必要だった。


何度も何度も頭の中でやり取りを繰り返し、

どうすれば一番被害が少なく済むのかを考えた。


家以外で、

できるだけ短い時間で済ませたい。


そう考えていくうちに、

ショッピングモールという選択肢が浮かんだ。


外で会う方が、

まだ気が楽だと気づいた。


そしてその時、

自分でも分かるくらい打算的な考えが浮かんだ。


義両親は、出かけるとすぐに疲れる。


モールに行けば、

きっと一日はもたない。


おそらく夕方前には、

帰りたくなるはず。


それを見越して、

計画を変えてもらうことにした。


映画で時間稼ぎ

「観たい映画がある」


子どもがそう言えば、

義両親はきっと喜ぶ。


そう考えた私は、

映画とショッピングを組み合わせて提案した。


映画を観れば、

それだけでかなり時間を使える。


時間稼ぎとしては、

ちょうどいい。


ショッピングモールなら、

早朝からは開いていない。


朝8時集合という流れも、

自然に回避できた。


10時に集合して、

少しぶらぶらしてから昼食。


そのあと映画を観る。


映画の後に夕食を一緒にとることも、

あえて受け入れた。


そこにも理由があった。


おそらく、そこまでで疲れて、

そのまま解散になる。


そんな見込みがあった。


子どもからの前向きな提案だと、

そう思い込んだ夫と義両親は、

迷うことなく受け入れた。


嬉しそうな様子を見て、

胸の奥が、少しだけ痛んだ。


どうして、

こんな形でしか関われないんだろう。


何がいけなかったんだろう。

2026年4月11日土曜日

あなたはもう家族ではない

拒否しても通じない言い分

その夜、予想通り電話がきた。


夫は、結局お昼過ぎまで

部屋で過ごしていたのだと言う。


あまり長い時間過ごされるのも嫌だから、

「今度からは一緒に家を出て」

と遠回しにお願いした。


本当は、家に来られること自体が嫌だった。

万が一来てしまっても、

一人にしたくなかった。


こういう話をすると、いつも決まって

「家族なんだから」

と言う。


もう既に、私たちの中では

夫は家族ではなかった。


そんなことを言えば何が起きるか、

分かっていたから言えなかったけれど。


鍵の話になった時も、

「家族だから持っていたい」

のだと言う。


せっかく離れているのに、

何一つ要望は聞き入れてもらえず、

夫のペースで話が進んでいく。


これが、

力関係の歪な夫婦の難しさだと思う。


さて、夫の本題は

ゴールデンウィークのことだった。


最初の要望は、子どもを泊まりによこせ。


それは絶対に無理だから強く拒否したが、

次に出されたのは、

1日遊びに行くという妥協案だった。


手紙にもそう書かれていたが、

子どもは読んでいない。


「(子ども)は何て?」


そう聞かれて、私は正直に答えた。


手紙は読んでいないこと。

読むのを嫌がるくらいだから、

一緒に遊びに行くのも難しいこと。


どうせ反論される。

それでも、正直に話すしかなかった。


譲歩に見せかけた押しつけ

最終的に提案されたのは、

夫と義両親の3人が家に来て、

1日過ごすという案だった。


1日って、

何時から何時まで?


そんな言葉が、

喉の奥まで出かかる。


数分だって嫌なのに、

朝から晩までなんて耐えられない。

そう思った。


しかも、狭い部屋に

大人4人と子ども1人。


座る場所も選ぶようなスペースで、

息が詰まりそうだった。


当然拒んだが、

まるで最初から決まっていたかのように、

話は進んでいく。


朝の8時前から来て、

一緒に夜ご飯まで食べる。

それが最大限の譲歩らしい。


義両親は朝が早く、

5時台から起き出す。


だから、嫌な予感はしていた。


せっかく立てていた予定も、

連休の真ん中で崩れることになった。


電話を切った後、

呆然としながら子どもに伝えた。


断れなかった自分が情けなくて、

子どもに申し訳なくて、

せっかくの休みを台無しにしてしまった気がした。


それからの一週間、

重たい気持ちを引きずったまま過ごした。


世間が少しずつ浮かれ始める中で、

私の気持ちだけが、

静かに沈んでいった。

2026年4月10日金曜日

夫が残した置手紙

警戒しながら帰宅

警戒しながら帰宅したその日、

久しぶりに学校へ迎えに行った。


ほんの少しだけ早退して。


とてもではないが、

一人で帰らせる気にはなれなかった。


もし帰宅した時に、

まだ夫がいたら。


そんな想像をするだけで、

背筋が冷たくなる。


夫を警戒することで、

私たちの行動はどうしても制限される。


先のことを考えすぎて、

身動きが取れなくなることもあった。


それでも、

安全を優先するしかなかった。


家に着いて、

まず最初にしたのは、

ドアを開けて室内を見回すこと。


夫は鍵を持っている。


だから、鍵がかかっていたとしても、

中にいないとは限らない。


次に、部屋の中に変わった様子がないか、

一つひとつ確認して回る。


物を使われているとか、

配置が変わっているとか、

そんなことはどうでもよかった。


怖かったのは、

何か仕掛けられているのではないか、

という不安。


疑心暗鬼になっていた。


テレビで見るように、

盗聴器があるのではないか、

と思ったりもした。


何をされるか分からない。


そんな恐怖の中で、

しばらく警戒しながら過ごした。


手紙に残されたもの

帰宅してすぐ、気づいた。


テーブルの上に、手紙が置かれていた。


また、自分勝手な言い分を書いてきたのだろうか。


そんな思いと一緒に、

怒りに似た感情が込み上げる。


けれど同時に、

これだけで済んだのなら良かった、

とも思ってしまった。


恐る恐る読んでみると、

そこにあったのは主張ではなく、

どちらかといえば泣き落としだった。


繰り返されていたのは、


「パパは寂しい」


という言葉。


子どもは嫌がって読もうとせず、

結局、目を通したのは私だけだった。


手紙の中には、

ゴールデンウィークの誘いも書かれていた。


読んだ時に浮かんだのは、

「やっぱり」という気持ちだけ。


前の日、

手土産を持ってまで来た理由を考えた時、

思い当たるのはそれしかなかった。


その頃、夫の頭の中は、

ゴールデンウィークのことでいっぱいだったのだと思う。


義両親とも約束してしまったらしく、

一緒に過ごすことが前提になっていた。


断っているのに納得せず、

無理にでも進めようとしてくる。


その理由が、ようやく見えた気がした。


夜の8時になれば、また電話が来る。


その時、どう答えるか。


手紙を見た瞬間から、

私は断る理由を探し始めていた。

2026年4月9日木曜日

出勤前の攻防

長い夜のあとに

眠れないまま、朝を迎えた。


何度も時計を確認して、

5時を見た時、

そのまま出社しようと決めた。


眠気はない。

ただ、重たい疲労感だけが残っていた。


横になったまま時間をやり過ごしていると、

カーテンの隙間から朝日が差し込んでくる。


ようやく朝が来たのだと、実感する。


長くて暗い夜が終わった。


あの恐ろしい時間に区切りをつけるような光に、

少しだけ安堵した。


子どもも、きっと眠れなかったのだと思う。


何度も寝返りを打って、

そのたびに顔を覗き込むと、

ぎゅっと目を閉じていた。


本当に眠っているなら、

こんなふうに力は入っていないはずだ。


少しでも安心させたくて、

背中をそっとさすった。


朝方になって、

ようやく眠りに落ちた様子の子ども。


起こすのは気が引けたけれど、

学校に遅れるわけにはいかない。


耳元で、小さく


「朝だよ」


と声をかけた。


夫は相変わらず、

テレビのある部屋で眠っていた。


大の字になり、

自分の上着を掛けただけの姿で。


私たちは起き上がり、

できるだけ音を立てないように、

静かに朝の支度を始めた。


家に一人で残られる不安

支度をしていると、

夫が起きた気配がした。


それを感じながら、

パンを焼き、牛乳を注ぐ。


夫の分は用意していない。


もともと準備していなかったのに、

自分の分もあると思ったのか、


「俺は食わねーよ」


と声をかけてきた。


「分かった」


とだけ返して、

そのまま黙々と準備を続ける。


子どもは、朝ごはんを待つ間に、

学校の荷物を玄関へ運んでいた。


いつもなら、こんなことはしない。


出る直前になって慌てて持ち、

飛び出すように家を出る。


けれど、この日は違った。


1分でも、1秒でも早く、

この家を離れたかったのだと思う。


私も、同じ気持ちだった。


ただ、一つ問題があった。


出かける時間になっても、

夫が帰ろうとしない。


「俺も少ししたら帰るから」


そう言いながら、

まだくつろいでいる。


このまま一人で家に残すのは嫌で、


「一緒に出よう」


と声をかけても、

知らないふりをされた。


鍵を持っているから、

出入りは自由だとでも言いたげな態度。


言い争っている時間はない。


結局、私たちは先に家を出た。


大切な場所を、

そのまま残してきてしまったような感覚。


自分たちの居場所を、

侵されてしまったようで、


心が、落ち着かなかった。

子どもとの連絡手段を確保しようとする夫

差し出されたキッズ携帯 食事のあと。 夫に連れて行かれたのは、 携帯ショップだった。 たぶん、下見は済ませていたのだろう。 店に入るなり、迷いなく歩き出す。 一直線に、目的の場所へ。 並ぶ携帯の中から、一つを手に取った。 そして子どもに向かって言う。 「これ、どうだ?」 子どもは...