知らないふりをするということ
真実を知った時、私はまた、
大きく失望した。
お義母さんにではない。
夫に対してだ。
むしろ、
お義母さんは
被害者だと思った。
あの人に言われたら、
たとえ血を分けた息子であっても、
意見なんてできなかったはずだ。
私も、
そういう場面に
何度も出くわしてきた。
本当は言いたいことがある。
意見をしたい。
でも、
何も言えない。
そのもどかしさは、
痛いほど分かっている。
だから、
お義母さんが
最後に本当のことを
話してくれたことが、
余計にありがたかった。
真実を知ったことで、
私の中で何かが
ストンと落ちた。
これまで感じていた違和感も、
すべて納得できた。
ただ――
このことを、
夫に伝えてもいいのだろうか。
そこだけは、
最後まで迷った。
もし話したら、
お義母さんが
窮地に立たされる。
責められて、
なじられて、
心が折れるまで
攻撃される。
そんな光景が
容易に想像できた。
とてもではないけれど、
言えなかった。
申し訳なさそうに、
本当のことを
話してくれたお義母さん。
これ以上、
心の重くなるような状況を
作りたくない。
私は、
知らないふりをして
何とかできないかと
考え始めた。
お義母さんを守るために
それから、
お義母さんとは
何度か連絡を取り合った。
このことが夫に知られたら、
どうなるだろう。
そんなことを考えながら、
いろいろなパターンを
想定した。
そして、
二人で一つの結論を出した。
『このことは、
聞かなかったことにする』
それが、
お義母さんを守るためには
一番いいと思った。
でも、
そうなると、
別の問題が残る。
やっぱり、
お金のことだった。
聞かなかったことにするのなら、
私は予定通り、
制服代を分割で
払い続けなければならない。
やっと、
問題が解決したと思ったのに。
また、
お金のことで
悩み続けることになる。
お義母さんだって、
買ってもいない制服代を
受け取るのは、
きっと気が重いはずだ。
そこで、
私たちはいろいろな案を
出し合った。
実際には払っていないけれど、
払ったことにしてしまう。
あるいは、
お義母さんが自分の口座に
現金を振り込んで、
私から入金があったように
見せる。
どれも、
一見すると
うまくいきそうに思えた。
でも――
どの案も、
実行することはできなかった。
夫が近くにいる間は、
制限が多すぎたのだ。
夫だけではない。
お義父さんもいる。
お金のことも、
ほぼ管理されている。
お義母さんが
自由に使えるお金は、
ほとんどなさそうだった。
そんな状況で、
万単位のお金が動けば、
絶対に気づかれてしまう。
そうなれば、
この計画も
すべて明るみに出る。
私だけではなく、
お義母さんも責められるだろう。
結局、
二人とも窮地に立たされる未来しか
想像できなかった。
それなら――
やっぱり、
最初の予定通り、
少しずつでも
払い続けるしかないのか。
真実を知ったことで、
気持ちの上では
救われたような気がした。
お義母さんが
嘘をついていたわけではない。
夫に言われて、
仕方なく合わせていただけだった。
それが分かっただけでも、
私にとっては
大きなことだった。
でも、
一つ問題が解決したと思ったら、
また別の問題が目の前に現れた。
結局私は、
またしてもお金の問題に
直面することになった。






