残されたお金
義実家に向かう前に、手持ちのお金を確認した。
お給料日から
だいぶ日が経っていたため、
やはりほとんど入っていなかった。
正確に把握しようと、
テーブルの上に並べる。
1万円札は既になく、
5千円札が1枚。
あとは千円札が数枚と、
小銭だけだった。
この時点で、
1万円にも満たないお金で、
お給料日までの食費や雑費を
やりくりしようとしていた。
そんな中で、
突然の制服代。
どう考えても無理な話だった。
それでも、
『何とか用意しなければ』
そう考えてしまった。
「そっちが勝手に
用意した制服でしょ」
そう言えたなら、
どんなに楽だっただろう。
でも、
言えなかった。
夫を怒らせることは、
私たちにとって、
何より避けるべきことだった。
怒らせてしまったら、
もう終わり。
そんな思いで、
お金をもう一度
財布へしまった。
そして、
一時金として渡せるお金すら
残っていない現実に、
途方に暮れた。
震える手で下した決断
それから、
夜も眠れないほど考えた。
『誠意を見せる』
とは、
どういうことなのか。
自分なりに考えた末、
月賦で返金するためにも、
少しでもお金を
用意しなければと思った。
当日は休日で、
ATM手数料がかかってしまう。
だから私は、
前日にATMへ行き、
お金を下ろすことにした。
これは、
子どもの将来のために、
少しずつ貯めてきた
大切なお金。
何かやりたいことができた時、
諦めなくて済むように。
必死で積み立ててきたものだった。
夫とのやり取りの中で、
奪われそうになったこともある。
それでも、
このお金だけは、
絶対に手放してはいけない。
そう思って、
何が何でも守ろうと、
抗い続けてきた。
離れてからも、
たとえ千円でもいい。
毎月少しずつ、
コツコツ貯め続けてきた。
そのお金を、
使うなんて。
これまでのことが思い出され、
ATMを操作する手が震えた。
でも、
お金はまた貯めればいい。
子どもと二人、
無事に過ごすことができれば、
それだけでいい。
私は、
苦しい思いを振り切るように、
そのお金を引き出した。






