受け入れがたい要求
「荷物を置いておいて」指示は、それだけだった。
いつ来るのか、
引っ越してくるのか――
そういった話は、一切ない。
だから、ただの脅しなのかとも思った。
けれど、夫は無駄を嫌う人だ。
荷物を送るにも、お金はかかるし、
手間だってかかる。
伝票の字は明らかにお義父さんのものだった。
義両親が関わっていることも、
容易に想像できる。
その先の動きが読めない。
私は、戦々恐々としながら考えた。
この荷物を、どうするべきか。
子どもは、荷物が届いた瞬間、
「何かいいものが来た」と思ったらしい。
けれど送り主の名前を見た途端、
急に静かになり、部屋に戻っていった。
見たくないものを見てしまった。
そんな顔だった。
私も同じだった。
ただ、意図が読めてしまった以上、
このままにはしておけない。
――送り返そう。
そう決めた。
きっと、怒る。
それでも、そうするしかなかった。
宅配業者に連絡
悩み続ければ、
動けなくなる。
それは、これまでで学んだことだった。
だから私は、あえて深く考えないようにして、
淡々と宅配業者の連絡先を調べ、
集荷を依頼した。
まだ午後3時前だったからか、
当日中に来てもらえることになった。
少しだけ、ほっとする。
目の前から夫の荷物が消える――
それだけで、気持ちはかなり楽になる。
開けてしまった箱を閉じながら、
子どもに声をかけた。
「これ、送り返すから」
すると子どもは目を見開いて、
「え?大丈夫なの?」
と、不安そうに言った。
私だって、本当は怖い。
それでも、そうするしかない。
この荷物を置いておけば、
夫を受け入れることになる。
受け入れられるはずがないのに、
その状況だけが作られてしまう。
荷物を手渡す直前まで、
恐怖は消えなかった。
迷いもあった。
それでも――
箱を渡した、その瞬間。
ようやく覚悟が決まった。
夫と向き合う覚悟。
怒りをぶつけられることも含めて、
すべて受け止める覚悟だった。






