突然の来訪
卒業式の前の日。今日は早めに寝て、
明日に備えようね。
そう話して、
早々に眠りについた。
疲れていたのか、
横になってから数分後には
すっかり夢の中。
気持ち良く寝ていたところ、
急にインターホンが鳴り、
目が覚めた。
夢の中でも誰かが訪問してきて、
起きた直後は
夢なのか現実なのか
区別がつかずにいた。
ボーっとしながら、
玄関を見るけれど、
スコープを覗かなければ
誰なのか分からない。
迷っていると、
再びインターホンが鳴り、
私は慌てて玄関に向かった。
そっとドアスコープを覗くと、
案の定、
夫の姿が……。
このままでは、
子どもを起こしてしまうし、
ご近所迷惑になってしまう。
仕方なく、
ドアを開けた。
どこまで行っても分かり合えない
私だって学習している。
ドアを少しでも開けたら、
入り込んで来ようとすることは
もう分かっている。
だから、
チェーンをしたまま
薄くドアを開けた。
夫はそれに気づかずに、
大きく開こうとして
ガシャンと鳴った。
私はそのままの状態で、
「(子ども)が起きちゃうから」
と、やんわりと拒絶した。
立ち話になるとは思っていなかった夫は、
少しイライラ。
顔は怒っていたが、
「明日、やっぱり俺も行こうと思って」
と参加を宣言し、
紙袋を見せてきた。
そこには、
卒業式に着るスーツが
入っているという。
「わざわざ用意した」
と言われたが、
そんなことは頼んでいない。
『この状況で、
よくそんなことを言えたね』
と呆れながら、
「明日は二人だけで行く」
と告げた。
その後も、
まだ電車があるから帰るように促しても、
なかなか帰ってくれなくて。
子どもを起こしたくない私は、
必死で納得してもらおうとした。
こんな大事な日を前にしても、
夫は自分のことばかり。
何度失望し、
早く関係を断ちたいと思ったことだろう。
夫は夫で、
家族に戻りたいと懇願した。
どこまで行っても、
分かり合えない二人なのだ。





