2026年3月9日月曜日

パパへの嫌悪感、記憶を消したい子ども

「中身が汚れちゃった」

夫がようやく帰り、

やっと拷問のような時間から解放された。


たった2時間。


楽しいことなら、

あっという間に過ぎる時間。


でも、

苦しくて辛いだけの2時間は、

果てしなく長い。


一言答えるだけで、

頭をフル回転させる必要があった。


怒らせないように。

ただ、それだけを考えて。


大人の私でさえ、

これほど消耗しているのだ。


子どもが平気なはずがない。


ましてや、

ずっと虐待されてきた父親との時間だ。


心配して様子を見ていると、

子どもが突然、

「ママ、お風呂いれてもいい?」

と聞いてきた。


さっきまで眠そうだったのに、

目がはっきりしている。


どこか、

切迫したような表情。


そう言われて、

私も気づいた。


今日は、まだお風呂に入っていない。


すっかり抜け落ちていた。


「こんな時間だけど大丈夫?

 眠いでしょう?」


そう聞くと、

「絶対に入りたい」

と強い口調で言った。


結局、

夜の12時にお風呂に入ることになった。


お風呂上がり。


ドライヤーで髪を乾かしていると、

「綺麗になって良かった」

と、ぽつり。


意味が分からず聞き返すと、


パパと過ごすと、

自分の中身が汚れてしまった気がする。


そう教えてくれた。


体ではなく、

中身が。


それほどまでに、

強い嫌悪感を抱いているのだ。


歯磨きも念入りに

その後の歯磨きも、

いつもよりずっと長かった。


いつもなら、

「もう少し丁寧に磨いたら?」

と声をかけたくなることもあるのに。


あの日は違った。


鏡を見つめながら、

黙々と磨いている。


パパと接した後は、

中身が汚れてしまったと感じる子ども。


体を洗い、

歯を磨き、


それでも、

どこか落ち着かない様子だった。


寝る前、

「もう、ピカピカだよ」

と声をかけると、


ほんの少しだけ、

力が抜けた表情になった。


その顔を見て、

胸が締めつけられる。


この話を夫にしたら、

どんな顔をするだろう。


きっとまた、


私の育て方が悪いと

言うのだろうか。

2026年3月7日土曜日

居座り続ける夫を何とか撃退

電車の時間も気になり、焦る私

強く言えないまま、

ただ時間だけが過ぎていく。


時計の針の音が、

やけに大きく感じた。


この人は、

はっきり言わなければ動かない。


分かっているのに、

その一言が喉に引っかかって

出てこなかった。


子どもは、

眠そうに目をこすりながら、

うつらうつらし始めていた。


ただ眠いだけじゃない。


極度の緊張状態が続くと、

急に睡魔に襲われることがある。


以前、

虐待を受けた後も、

こんなふうだった。


その日は、

パパが怖くて、

神経がすり減っていたのだと思う。


必死に我慢していたけれど、

限界が来たのだろう。


そこまできて、

私もようやく腹を決めた。


心が壊れそうな子どもが

目の前にいるのに、

何もしないなんて。


そんなの、

母親としてどうかしている。


そう自分に言い聞かせ、

夫の方を向いた。


「そろそろ私たちは寝る時間だから。

 今日はありがとう」


ありがとう。


その一言は、

波風を立てないための保険。


少しでも怒らせないように。


この場で機嫌を損ねれば、

余計に長引くだけだ。


むしろ、

意地になって帰らなくなる。


そう思って、

必死に角を丸くした。


驚きの展開

普通なら、

「そろそろ寝る時間だから」

と言われれば、帰るだろう。


ところが夫は、

何でもない顔で、


「そうか。俺はどこに寝るかな」

と言った。


一瞬、

意味が分からなかった。


でも次の瞬間、

泊まるつもりなのだと悟り、

背筋が冷えた。


焦った私は、

「布団は2枚しかないよ」

と付け加えた。


義実家に戻るとき、

夫は自分の布団を持ち帰った。


「俺が買った物だから」


そう言って。


正直、

せいせいしていた。


夫の物が大量に残る部屋で、

心なんて休まらない。


布団が無ければ、

さすがに帰ると思った。


けれど夫は、

急にこちらへすり寄り、

「2枚あれば、くっつければ何とかなるだろ」

と笑った。


思わず後ずさる。


「ちょっと厳しいかな」

そう言いながら、

できるだけ距離を取った。


近い。


気持ち悪い。

気持ち悪い。


本当に、

心の底から気持ち悪い。


散々、

私たちを傷つけてきた人が、

どうしてそんなことを言えるのか。


体が拒絶していた。


隠そうとしても、

隠しきれない。


それが伝わったのか、

「仕方ない、今日は帰るか」

と夫は言った。


あの時、

ほんの少しだけ

傷ついたような顔をした。


冗談じゃない。


私たちは、

その何万倍も傷ついてきた。


そんなことで

傷ついたなんて、

言わないで。


心の中で、

強く、強く叫んだ。

2026年3月6日金曜日

最悪の誕生日

独りよがりな夫

この人は、いつもそうだ。


いつだって独りよがりで、

自分の気持ちばかりを優先する。


だから、

一緒にいても孤独だった。


同じ空間にいるのに、

ひとりきりの感覚。


子どもが産まれても、

何も変わらなかった。


むしろ、

更に厳しくなり、

子どもにも手を上げるようになった。


「子どもが産まれれば変わるだろう」


そんな期待を、

抱いた私が甘かった。


以前、この部屋で

夫が暴れた日のことを思い出す。


物が倒れる音。

荒い息遣い。

泣き声。


その光景が急に蘇り、

何も起きていないのに、

体が勝手に身構える。


家を出た日のことも、

まだはっきりと覚えている。


あの時の決意と、

震える手。


またいつ暴れ出すか。

そう怯える私たちに向かって、


「やっぱり家族は一緒が良いな」


と夫は言った。


上手く返事ができない。


うなずきも、

否定も、

どちらも出来なかった。


だって、

1mmたりとも

そんな風に思えなかったから。


ただひたすら、

この悪夢の時間が

早く終わればいいと願う。


子どもも無口だった。


視線を落とし、

必要以上に動かない。


それが気に入らなかったのか、


「子どもはもっと元気でなくちゃ」


と夫は言う。


何と、

残酷で滑稽なことだろう。


まるで、

夫が用意した舞台に、

私たちが立たされているみたいだ。


主役は夫。


自分の描いた筋書きから外れることを、

決して許さない。


帰らない夫

突然の訪問だけでも迷惑なのに、

一向に帰る気配がない。


そのことが、

じわじわと怖くなった。


もう寝る時間という頃にやってきて、

「ケーキを食べよう」

と子どもを誘い、

食べ終われば帰ると思っていた。


けれど、

1時間経っても動かない。


時計を見るたび、

胸がざわつく。


もし私が、

もう少し強く言えたなら。


「そろそろお開きにしよう」


それくらいは

言えたのかもしれない。


でも、

モラハラ夫の言うことは

いつも100%正しい。


そう思い込む癖が、

奥底まで染みついていた。


逆らえば、

何が起きるか分からない。


だから、

何も言えなかった。


内心は苛立ちと恐怖でいっぱいなのに、

口元だけが勝手に笑ってしまう。


その結果、

都合の悪い部分を決して見ない夫が、

歓迎されていると勘違いする。


そんな悪循環。


それでも我慢していた。


けれど、

時計が11時近くを指したとき、


意を決して、

「そろそろ寝る時間だから」

と伝えた。


声が、

わずかに震えていたと思う。


それでも、

夫は帰らなかった。

2026年3月5日木曜日

味のしないケーキ

招かれざる客

ドアを開けた瞬間、

場違いな笑みを浮かべた

夫の姿が目に入った。


大きな体で見下ろされる。

それだけで、

喉がひくりと鳴る。


思わず、

一歩、後ずさった。


ドアを閉めようとした、その時。


隙間に、手が入った。


反射的に、

息が止まる。


指が、

ドアの縁に食い込んでいた。


そして、

そのまま押し返された。


本当は帰ってほしかった。

でも、その力で、

もう言えないと分かった。


私は強張ったまま、

「どうしたの?」

と声を絞り出した。


自分の声が、

少し遠くに聞こえた。


背後では、

テレビに出ている芸人さんたちの

明るい笑い声。


この状況とあまりにちぐはぐで、

現実味がない。


子どもは、

相変わらず固まっている。


耳を塞ぎたいはずなのに、

両手をぎゅっと握りしめて、

膝の上から動かさない。


ああ、

夢ならいいのに。


怖くて顔を直視できない私に、

夫はいつも通りの調子で、


「ちょっとだけいい?」


と言った。


ケーキなんて要らない

手土産まで持ってきていた。

歓迎されるとでも思ったのだろうか。


夫の手には、

カットケーキが三つ入った箱。


けれど、

「一緒に食べよう」

と言われても、

喉を通るはずがない。


私たちはすでに、

シュークリームを食べたあとだった。


しかも子どもは、

二つも食べている。


張り切って手伝ってくれた料理も、

ぺろりと平らげ、

さっきまで上機嫌だった。


その幸せな空間が、

いつの間にか、

重く、息苦しい時間へと変わっていた。


ずかずかと上がり込んだ夫が

腰を下ろしたのは、

子どもの正面。


私はとっさに、

キッチンから子どもを呼び寄せた。


皿を運んでもらうふりをして、

さりげなく距離を取らせる。


何とか、

真正面で向き合う形だけは避けられた。


三人で向かい合う。


夫は、

何事もない顔で

箱を開けた。


白いクリーム。

赤い苺。


この部屋の空気とは、

あまりにも不釣り合いだった。


フォークを持つ手が、

わずかに震える。

子どもも、

同じようにフォークを握っている。


甘いはずなのに、

何も感じなかった。


噛んでも、

味がしない。


飲み込むのに、

時間がかかる。


水が欲しいのに、

誰も言い出せない。


ただ、テレビの笑い声だけが響く。


三人で食べた、

味のしないケーキ。


甘いはずなのに、

喉の奥がひりついた。

2026年3月4日水曜日

不気味な笑顔

帰る気配はなく・・・

しばらく待ってみた。


けれど、

夫はそこに居続けているようだった。


帰る様子もなく、

ただ、ドアの向こうに立っている。


最初は息を殺してやり過ごしていた私たちも、

だんだんと疲れてきた。


迎え入れる勇気はない。


それでも、

このままというわけにもいかない気がして、


ドアの前で、

ただ立ち尽くしていた。


その間も、

夫は大きな声で話している。


近所に響いているのが分かって、

胸がざわついた。


どうか、

これ以上騒がないでほしい。


祈るような気持ちでいたけれど、

帰る気配はなかった。


このままずっと、

叫び続けるのだろうか。


そう思うだけで、

体の奥が強張るようだった。


ふと、

子どもを見ると、

両手で耳をふさいでいる。


動かずに、

ただ、じっと。


こういう時、

私たちはいつも固まってしまう。


嵐が過ぎるのを、

待つことしかできなかった。


ドアを開けてしまった後悔

結局、

私はドアを開けてしまった。


時計は、

九時半を回っていたように思う。


どうして、

こんな時間に。


そんなことを考えながら、

どこか現実逃避していた。


もし本当に、

一緒に祝う気持ちがあるのなら、

もっと早く来たはずだ。


子どもは、

いつもならもう寝る時間。


わざわざ、この時間に。

何をしに来たのだろう。


小さな怒りが、

胸の奥に灯った。


恐る恐る、

ドアを開ける。


そこに立っていたのは、

満面の笑みを浮かべた夫だった。


私より二十五センチほど大きい体。


立っているだけで、

圧を感じてしまう。


怒っていると思っていた。


そう構えていたのに。


何故か笑顔だった。


でもそれは、

少しもあたたかいものではなかった。


見た瞬間、

冷たい水をかけられたような気持ちになった。

2026年3月3日火曜日

恐怖!夫の突撃訪問

寄り道してケーキ屋へ

誕生日当日。


帰り道、

少しだけ寄り道をした。


向かったのは、

近所のケーキ屋。


とはいえ、

ホールケーキを買ったわけではない。


自分のために

誕生日ケーキを買うなんて。


考えただけで、

なんだかくすぐったい。


でも、

何もないのは寂しい気がして。


子どもが、

がっかりするかもしれないと思って。


シュークリームを、

三つ買った。


三つにしたのは、

子どもに二つ食べてもらうため。


一つだけじゃ、

少し物足りない気がしたから。


私たちにとっては、

それだけで特別だった。


小さな贅沢。


それだけで、

心はじんわり満たされた。


帰宅して、

さっそく準備を始める。


いつもなら遊んでいる子どもも、

その日は率先して手伝ってくれた。


その姿が、

ただただ愛おしかった。


深夜の恐怖

食事を終え、

二人でテレビを見ながら

ゆっくり過ごしていた、その時。


——ピンポン。


突然、

インターホンが鳴った。


心臓が、

ドクンと大きく跳ねる。


一瞬で、

空気が変わった。


誰。


そう思った瞬間、

答えは分かっていた。


音を立てないように、

そっとドアへ近づいた。


電気はついている。


居留守だと、

すぐに分かるだろう。


それでまた怒り出したら——


そんな考えがよぎり、

体がこわばった。


震える指で、

スコープをのぞいた。


ドアの向こう。


そこにいる。


姿ははっきり見えなくても、

分かる。


夫だ。


ただそれだけで、

胸の奥が冷えた。


どうして、

こんな日に。


こんな幸せな夜に。


一番会いたくない人が、

どうしてここにいるのか。


悲しいのか、

悔しいのか。


自分でも分からないまま、

息を殺した。


ただ、

帰ってくれるのを待った。


けれど。


時間が過ぎても、

帰る気配はない。


それどころか——


「(子ども)〜、パパだよ〜」


突然、

大きな声が響いた。


やめて。


近所に聞こえる。


迷惑がかかる。


でも。


ドアは、

開けたくない。


開けられない。


静まり返った室内と、

ドアの向こうの気配。


もはやこれは、

心理戦だった。


引けば終わる。


でも、

引けない。

2026年3月2日月曜日

誕生日の前日、夫の不穏な動き

夫からの迷惑な連絡

あの日は、

私の誕生日の前日だった。


私は、

自分の誕生日にはあまり関心がない。


子どものお祝い事なら、

全力で準備をして、

全力で盛り上げる。


でも自分のことになると、

特別なことはしない。


いつも通り。

静かに過ごすだけ。


それが、

私にはちょうどよかった。


けれど——

その前日は、少し違った。


夫が、

落ち着かない様子を見せていた。


ああ……これは。

きっと何かを考えている。


鈍い私でも、

なんとなく察してしまった。


でも、

どうすることもできない。


できるのは、

気づかないふりをすることだけ。


連絡が来ても、

当たり障りのない返事を返す。


波を立てないように、

静かに、そっと。


それでも。

何度も、連絡は続いた。


こういう時の熱心さには、

少し驚いてしまう。


こんなふうに

まっすぐでいてくれたら、と

思わなくもないけれど。


そんなことを考えながら、

私はただ、

穏やかにやり過ごそうとしていた。


やがて、

終業の音楽が鳴った。


仕事はしていた。


でも心が、

ずっと落ち着かなかった。


「気にしない」なんて、

やっぱり難しい。


小さな違和感でも、

胸の奥に引っかかる。


帰り道。

少しだけ早足になった。


無意識に、

後ろを気にしてしまう。


何も起きていないのに、

心だけがそわそわしていた。


嵐の前の静けさ

今思えば、

あれは嵐の前の静けさだったのかもしれない。


前日は、

驚くほど穏やかだった。


子どもは少し嬉しそうで、

「ママのお誕生日、どうするの?」

と何度も聞いてきた。


「え〜、普通でいいよ」


そう答えながらも、

その顔を見ると、

少しだけ特別にしたくなる。


だから、

ご飯をほんの少しだけ、特別に。


メニューは、

ドリアとクラムチャウダー。


きっと、

よくある献立。


でも、

私たちには少しだけ特別。


一日千円未満でやりくりしていた我が家。


ドリアとスープは、

ちょっとしたごちそうだった。


冷凍チキンライスに、

市販のソース。


チーズをのせて、

オーブンへ。


スープは、

温めるだけ。


たったそれだけなのに。


当日は、

食卓を囲む時間が、

いつもより少しだけ

あたたかく感じた。


「明日はどうしようか」


そんな話をしているだけで、

自然と笑顔になる。


大きな幸せじゃなくていい。


こういう時間があれば、

それで十分だと思えた。


明日もきっと、

穏やかに過ぎる。


そう信じて、

眠りについた。


その時は、まだ。


何も、

知らなかった。

パパへの嫌悪感、記憶を消したい子ども

「中身が汚れちゃった」 夫がようやく帰り、 やっと拷問のような時間から解放された。 たった2時間。 楽しいことなら、 あっという間に過ぎる時間。 でも、 苦しくて辛いだけの2時間は、 果てしなく長い。 一言答えるだけで、 頭をフル回転させる必要があった。 怒らせないように。 ただ...