味のしないご飯
無理やり連れて行かれたお昼ご飯。
案の定、
子どもも私も
喉を通らなかった。
だけど、
そんなことは
赦してもらえない。
夫や義両親が
御馳走してくれたんだから。
喜ぶフリをしなければ。
分かってはいた。
でも、
それを子どもに強いるのは、
酷だと思った。
案の定、
4貫ほど食べたところで、
「お腹いっぱい」
と子どもが言った。
その瞬間、
一気に空気が悪くなった。
「お前のために来たのに!」
夫が、
何度もしつこく怒鳴る。
あまりの声量に、
耳の奥がジーンとした。
耳が、
心が、
そして、
人々の視線が、
痛い。
思わず、
その場から
逃げ出したくなった。
ジロジロと見られるのは、
本当は嫌だった。
でも、
人目があることが、
幸いでもあった。
「申し訳ないけど、
(子ども)も疲れてるみたいだから」
意を決して、
そう言った。
密室だったら、
絶対に出ない言葉。
でも、
周りに人がいたから、
思い切って言えた。
やっと笑えた
夫たちと別れた後、
実はこっそり、
二軒目に向かった。
本当は、
思いきりお祝いしたかった。
なのに、
不完全燃焼だったから。
子どもは、
夫たちから離れた途端、
急に元気になった。
「お腹空いた」
先ほどまでの
消え入るような声が、
嘘みたいだった。
それほど、
あの場が辛かったのだ。
二人で歩きながら、
あれやこれやと迷い、
イタリアンのお店に決めた。
パスタに、
ピザ。
サラダもオーダーした。
ホッとして、
自然と笑みがこぼれる。
「嫌だったねー」
以前なら、
心の内を吐き出すことも
できなかった子ども。
でも、
夫と離れて暮らすようになり、
ようやく、
口に出せるようになった。
少しずつ。
本当に、
少しずつだった。
長い時間がかかった。
やっと、
ここまで来た。
最後にケーキも食べて、
束の間の
幸せな時間を楽しんだ。
恐怖も、
不安もない。
そんな時間が、
とても尊い。
いつまでも、
続けばいいのに。
つい、
そう願ってしまう。






