幸せそうな人々を眺めながら
夫や義両親が来ていることを知り、急遽、外でご飯を食べることになった。
こういう時、
「どこに行こうか」
なんて楽しめれば良いのだけれど。
お財布の中身とも
相談しなければならないので、
大抵はいつものお店になる。
二人でパスタを頼んでも、
合計で800円ほど。
これ以上安く済ませられる場所は、
他に思いつかなかった。
子どもに、
「サイドメニューも頼んで良いんだよ」
「ドリンクバーも付けようか」
そう言ったのだけれど、
「ううん、大丈夫」
と首を振った。
多分、
お金のことを気にしたのだと思う。
料理を待つ間、
ぼんやりと周りを眺めていた。
友人同士、夫婦、家族。
それぞれが、
楽しそうに食事をしている。
なのに私たちは、
夫たちへの恐怖から、
家に帰ることもできない。
どうして、
こんなことになってしまったのだろう。
そう考えた時、
ふと、夫の言葉が頭に浮かんだ。
周りの人たちは幸せそうに見えるだろう?
何でか分かるか?
それは皆が、
お前に足りないものを持ってるからだよ。
何度も言われるうちに、
自分には、
酷く欠陥があるような気がした。
子どもは、
こんな状況でも外食を喜んでいて、
『私はいつも、この子に救われている』
そんなことを思いながら、
幸せそうに笑い合う人たちを、
ぼんやり眺めていた。
返してもらえない鍵
オーダーを済ませ、
料理を待っている間、
子どもに聞いてみた。
なるべく、
重たい空気にならないように。
「パパたち、すぐ帰る感じだった?」
その時、
驚くようなことを聞かされた。
何と、
鍵を取り出していたらしい。
家の中で待つつもりだったのだ。
それを聞いて、
余計に帰れなくなった。
本当は、
鍵を返して欲しかった。
私たちが居ない時に、
自由に出入りされるのは困るからだ。
でも夫は、
『家族だから、持っていたい』
そう言って、
返そうとしなかった。
義両親も同じだった。
家族なのだから、
持っている権利があるのだと言う。
家族――。
確かに、
まだ籍は抜いていない。
形式的に見れば、
まだ“家族”なのだと思う。
その事実を、
無理やり突きつけられたようで、
とても嫌な気持ちになった。
思わず、
目の前にあった冷たい水を、
一気に飲み干した。
あの人たちは、
きっと遅くまで居座る。
そしてそれを、
当然の権利だと思っているのだろう。
二人分のパスタが運ばれてきて、
子どもは嬉しそうに食べ始めた。
こんな外食でも、
「特別だね」
と言って喜んでくれる。
そんなこの子を、
幸せにしたいと思った。
私にもまだ、
できることがあるのだろうか。
あの頃は、
毎日そんなことばかり考えていた。






