夫の思いどおりにはならない
相手が怒っているからと言って、言いなりになる必要はない。
ましてや、
我が家は別居中だ。
接触を避けたいと思うのが
普通だろう。
それなのに、
夫は相変わらず、
私たちを思いどおりにしようと
思いをぶつけてきた。
状況を変えたくて、
抵抗する私。
携帯をしまった後は、
それまでと同じように
お出かけを楽しもうとした。
子どもも同じだったが、
ふとした瞬間に見せる顔が
こわばっていて……。
気づいているのだと、
すぐに分かった。
でも、それを悟られないように、
同じテンションを保ったまま
散歩を続けた。
時折、無言になり、
遠くを見つめるのは、
心が疲れていたから。
元気に振る舞うのにも
パワーがいる。
空元気を保つことさえ困難なほど、
心が疲弊していた。
それでも、
帰らないと決めた。
夜も更け、
段々と人もまばらになり、
本来なら帰る時間になった。
だけど、
夫が来ているかもしれないから。
まだ粘っているかもしれないから。
しばらく歩いた後、
喫茶店に入り、
時間をつぶすことにした。
子どもの笑顔を取り戻したくて
席について窓の外を眺めていたら、
雨が降ってきた。
「折り畳み持ってきて良かったね~」
そう言いながら、
子どもがやっと笑顔になる。
最初に注文したのはジュースだけ。
ただ、食事メニューを見ていたので、
「何か食べたら?」
と声を掛けると、
更に笑顔になった。
こんな笑顔を見られるのなら、
いくらだってがんばれる。
そんな気持ちと、
お財布の中身とは別問題なのだけれど……。
実際、手持ちがかなり少なくて、
足りるか冷や冷やした。
夫はそういう思いも
理解できないのだろう。
義実家で一緒に暮らせば、
家賃が浮くのに。
引っ越さないのは私のせい。
いつだって、
そうやって責められた。
歩き疲れたのもあり、
しばらく、ぼんやりと
外を眺めていた。
静かな空間で飲み物を口に運び、
また外を眺める。
そんなことを繰り返していたら、
少しずつ気持ちも
落ち着いてきた。
それと同時に、
帰る時間も気になり始めた。
分かってる。
いつまでも、
ここにいるわけにはいかない。
何時くらいなら安全かな。
そんなことを考えていたら、
子どもが言った。
「これ飲んだら帰ろう。
多分もう大丈夫だよね」
その一言で、
家に帰ることを決めた。






