周りの家庭が羨ましくて仕方がなかった
私は保育園の行事が苦手だった。いつもよりも子どもたちも張り切っていて賑やかな雰囲気なのに。
ポツンと取り残されているような気持ちなることが多かった。
そう感じてしまう理由は明確だ。
周りのお家ではパパとママが仲良く参加していて、どうしてもそれを目の当たりにしてしまうからだ。
仲睦まじい姿を見たりすると、やはり思うところがある。
お子さんも心の底から楽しんでいるように見えて、つい自分たちと比べてしまった。
ああ、良いなぁ。
あんな風に何の心配もせず楽しみたかったな。
そんなことを考えながら参加していた。
周りのママ友たちはとても良い人ばかりで、何か嫌味を言われるようなことも無かった。
だから環境的には恵まれていたのだけど、ついつい感じてしまう寂しさ・・・。
夫も、いつも不参加だったわけではない。
ごく稀に『今回は行こうかな』と言うことがあり、一緒に参加したこともある。
ただ、これはこれで問題だった。
夫が参加するからと言って『今日はパパ来れるんだって。良かったね!』という感じにはならない。
来たら来たで面倒なことがあり、例えば周りに人が居ようが些細なことで容赦なく子どもを怒鳴りつけた。
だけど、要所要所で使い分けるというか狡さもある人だった。
怒っていたかと思えば急に物凄く可愛がるような時もあり、周りはすっかり騙されていた。
「きちんと躾までできるなんて良いパパだね」
なんて言われたりして。
本当は違うんだよ、と言いたいけど言えなかった。
この人たちが本当の夫を知ったらどんな反応をするだろうか。
私は一緒に居る時でもそんなことばかり考えていた。
保育園では他の子の面倒まで見る夫
たまにお迎えに行ってくれることもあった。
私のことを労わって代わってくれたというわけではない。
その時々の気分で気まぐれに提案された。
仕事が忙しい時などは確かに助かる。
だから、夫から『迎えに行くよ』と言われた時にはほぼお願いしていた。
園に着くとその日の汚れ物などを集めて帰り支度をする。
帰る用意をしているといつの間にか子どもたちが集まってくることもあるのだが、夫は率先して子どもたちの面倒を見ていた。
みんなが集まって来ても、笑顔で相手をして優しく話しかける。
いつもそんな感じだったので、他のお家の子やそのママたちからは割と人気があった。
優しそうな笑顔を見せながら大勢の子と接する夫。
ただそれだけなんだけど、私の心はどうしようもないくらいに虚しさを感じた。
どうして我が子にも同じようにできないの?
あなたの愛情を一番に欲してるのは我が子なんだよ。
怒りを通り越して悲しさがこみ上げ、子どもが不憫になった。
お友達たちがキャーキャー言いながら夫と遊ぶ間、子どもはポツンと遠くから見つめていた。
まだ幼児なのだから深いことを考えていたわけではないのかもしれない。
でも、私にはとても寂しそうに見えた。
みんなに懐かれて終始ご満悦だった夫。
帰り道もご機嫌で、いつもは一人でスタスタ行ってしまうのに子どもと手をつなごうとした。
少し後ろに居る子どもの方に手を伸ばしたのだが、その瞬間子どもはパッと手を引っ込めた。
更に後ろに居た私は『あっ・・・』と思ったのだけれど、気づかないフリをしてやり過ごした。
あれは子どもなりの意思表示だったに違いない。
我が子を大切にできない人が周りには『優しいパパ』を演じていることに吐き気がした。