2025年3月18日火曜日

家から追い出されて途方に暮れたあの日

怒りに任せて子どもの傘を破壊した夫 の続き

暗闇が心細かった

戸惑っている間にも、容赦なく家のドアは閉められた。

どうしよう・・・。

ここで待っていれば開けてもらえるという保証もない。

だけど、どこかに行ってしまったら怒られるような気もする。

どうするのが正解なのかが分からず、しばらくその場に立ちすくんだ。

子どもはドアを見つめて、ただ呆然としていた。

最初の数分は何も考えられずじっとドアの前に立っていたのだが、そこで重大な問題に気づいた。

いきなり追い出されてしまったので、財布もPASMOも持っていなかったのだ。

それに、まだ肌寒い時期なのに上着も羽織っていなかった。

どちらにせよ、このままでは何もできない。

そう思って一度家の中に入ることにした。

と言っても、鍵を閉められていたらそれで終わりだ。

だからまずは家の中に入れるかどうかでかなり神経をすり減らした。

鍵がかかっていないとしても、いきなり開けるわけにもいかない。

それで、ドアの前で聞き耳を立てて夫がそこに居ないかを確認しようとした。

だけど、やっぱり音は聞こえてこない。

仕方がないので気配で感じ取ろうとしたが、よく分からなかった。

それでもう開けてみるしかないと思って、恐る恐るドアを握りしめた。

なるべく音を立てないように、ゆっくりゆっくり。

そっと引っ張ってみた。

そうしたら、ガチャリと鈍い音を立ててドアが開き、目の前に仁王立ちの夫が立っていた。

ゴクンとつばを飲み込み、思わず後ずさりした。

まさかまだ玄関に立っているとは思わなかった。

予想外のことだったので驚いてしまい、色々と考えていたことが一気に吹っ飛んでしまった。

怯える私たちを冷たい目で見つつ、

「なに?!」

と夫は詰め寄った。

この人は私たちのことが心底目障りなんだと思った。

もしかしたらそのまま家に入れるかもしれない、なんて淡い期待を抱いた私が馬鹿だった。

とにかく上着だけでも持ち出さなければと、

「肌寒いから上着がないと風邪を引いちゃうと思って」

と言いながらそそくさと家の中に入った。

それさえも許せなかったのか、夫は私の肩を掴んで、

「おい!勝手なことしてんじゃねーぞ!」

と言ってきたが、私はすばやく二人分の上着とショルダーバッグを持ち出した。

玄関の方に向かっている間も、夫はずっと文句を言っていた。

でも、私は反応しないようにして急いで靴をはいた。

子どもはずっと玄関で待っていて、その手を握りしめて行こうとした時に、

「もう戻ってくるなよ」

という捨て台詞が背後から聞こえた。


夜道に子どもと二人。どこに行こうか

「ママ、大丈夫だった?」

夫に肩を掴まれた私を、子どもは心配したようだった。

確かに結構な力で掴まれたのだが、それよりもあの場から逃げられたことにホッとした。

とにかく必死で、ただ逃げることだけを考えた。

夫が今頃どんな思いで居るだろうとか、なぜあんなに怒ったのか、とか。

考えても答えの出ないことばかりが頭の中にぐるぐると浮かんだ。

夜の道というのはどこか心細くて不安になる。

この時の私たちは、追い出されてしまったという状況も相まって非常に不安な気持ちになっていた。

時々すれ違う人たちも居たけれど、みんな家路を急いでいるようだった。

それを見て、私たちとは正反対だなーなんて思った。

帰りたいと思う家があるだけで幸せなんだ。

もう戻ってくるなと言われたのだから、家に帰ることはできない。

だけど、行くところもなくて。

今晩どうするのかさえ決められなかった。

私が泣きそうになっていると、子どもが私のポケットから携帯を取り出して

「ママ、お電話しよう。おじいちゃんにたすけてって言おうよ」

と言った。

私は困って『う~ん』と唸り、

「言えないんだよ。言ったら心配しちゃうから」

と言おうとしたのだが、言い終わらないうちに涙が出てきてしまった。

止めようとしてもどんどん溢れてきて言葉にならなかった。

そうしたら、

「ママ、大丈夫だよ」

と子どもが小さな手で私の背中をポンポンと優しく叩いた。

それって、いつもおばあちゃんがやってくれるやつだね。

思わずその小さな手を握り返したら、いつの間にか子どもも泣いていた。

夫の友人からの電話攻勢により疲弊

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