2025年6月7日土曜日

子どもを取り戻してから初めての話し合い

雨の中、待ち合わせ場所へ

その日は雨が降っていた。

服が体に纏わりついてくるような蒸し暑さだった。

夫との話し合いというだけでも憂鬱なのに。

その上この天気だ。

一日中止むことはないという予報だったので、大きめの傘を選んだ。

子どもは先輩とお留守番。

話し合いに行くことを伝えていたので、少し不安そうだった。

それでも当日は、

「ママ、がんばってね」

と送り出してくれた。

待ち合わせ場所に到着した後、すぐには店内に入らず、遠目から見てNが居ることを確認した。

夫と一対一で話す勇気が無かったのだ。

これは今も変わらない。

離れてもなお夫は恐怖の対象であり、声を聞くだけで嫌な思い出がブワーっと蘇ってくる。

お店に入ると、真っ先に私の姿を見つけたのはNだった。

軽く手を挙げ、にこやかに

「あいにくの雨だね~」

と言った。

夫は無言で、私が席に座るのを待っていた。

ただ、その表情には険しさも無く結構穏やかな感じで始まったので、その後にあんなに荒れるとは思ってもみなかった。

前回、夫がひた隠しにしてきた財産のことに触れたからかもしれない。

実際にはまだ調べるようなこともしておらず、ただ単に『そういう手段もあるよ』というのを示しただけなんだけど。

それでも、夫の譲歩を引き出すのに十分だった。

それからまたしても状況が変わった。

一番大きかったのは夫の再就職。

職を得たことで強気になった夫がどう出てくるか。

それが分からないから、夫の出方次第で対応を考えなければならなかった。


経済面での不利が無くなったことをアピールする夫

仕事に就き、収入を確保できることになった夫。

話し合いでは、それを重点的にアピールしてきた。

確かにそこは私が有利に進める上で重要なポイントだった。

でも、一つ忘れてはいないかい?

もっと気にすべき重大な事案があることを。

前回、私は虐待の証拠を見せた。

不鮮明な画像であっても証拠能力を持つという。

こういう不利な証拠が出てきた時、夫なら勝手に消去しかねないと思った。

だから、画像を印刷した状態で持参した。

あれを見た瞬間顔色が変わり、Nの様子も一変した。

どうせ仲間内では私のことを鬼嫁扱いして、勝手に子どもを連れ去ったとでも言っていたのだろうけど。

真実を雄弁に語るその画像は、一瞬にして不利な状況を変えてくれた。

と言っても、夫は虐待など認めていない。

あれは教育だったと思い込んでいて、友人にもそう話していたようだった。

あの日の話し合いでもそれが分かったので、

「叩いたり蹴ったりが日常茶飯事だったんだよ」

とNに説明した。

でないと、『たった一回のことで、離婚までいってしまうの?』という雰囲気になりそうだった。

上手に嘘をつく夫と闘わなければならない時、どうしても相手のペースに飲まれてしまう。

口が上手すぎる夫と説明の下手な私。

最悪の組み合わせだよね。

それでも弁護士を立てないという約束をしたから、一人で頑張った。

仕事を確保した夫は、それで全て解決できると思い込んでいたようで・・・。

「一番の問題は収入面だったんだから、それが解決した今、見方を変えるべきなんじゃないか?」

と急に言い始めた。

言いたいことはだいたい分かっていても受け入れたくなくて黙っていたら、

「懸念事項が無くなったのだから、離婚自体がどうなの?って話になるよな」

と単刀直入に言ってきた。

やっぱりそう来たか。

この人は何でこんなにも私たちに執着するんだろうかと不思議だった。

虐げて馬鹿にしているのに、離れるのは嫌ってどういうことなの?

私がもっとも困惑していたのはその部分であり、サンドバックのような扱いを受けるあの日々には戻りたくないと強く思った。

居所不明の別居状態が続く・・・

「そろそろ居場所を教えろ」と言われたけれど 家を出て以来、夫とは携帯一つでつながっていた。 連絡手段を絶つと離婚の交渉ができなくなる。 そう思って、完全に関係を絶つことを避けた。 連絡を取り続けていると、相手も望みを持つものだ。 『元に戻れるのではないか』というのが言葉の端々から...