先生からの連絡
そろそろ塾が終わる頃かな。買い物を済ませてから向かえば、
ちょうど合流できそう。
帰りの予定を考えていると、
突然、電話が鳴った。
画面には塾の名前。
まさか今日サボった?
でも、通い始めてから一度も休んでいない。
今朝も楽しみにしている様子だった。
何だろう――。
そう思いながら電話に出た。
こういう時は、いつも不安になる。
「何事もありませんように」
そんな気持ちで応答ボタンを押した。
電話に出ると、
先生がその日の出来事を話し始めた。
どうやら、同じ塾の子が先生に伝えたらしい。
「○○さんがおじさんに怒られているみたい」と。
先生が外へ様子を見に行くと、
実際に怒鳴られている場面だったという。
事情は詳しく話していなかったが、
表面的な経緯だけは伝えてあった。
だから念のため、
連絡をくださったのだった。
その日以降、
子どもは塾の中で待たせてもらった。
私が迎えに行くまでの間は、
自習をしながら過ごしていた。
「お前を信用できない」
その出来事のあと、
私はしばらく責められ続けた。
「もう、お前のことは信用できない」
その言葉を、
何度も何度も繰り返された。
でも、
私には他の選択肢が思い浮かばなかった。
内緒で塾に通うという選択は、
思っていた以上にうまくいっていた。
このまま卒業まで通えるかもしれない。
そんな期待もあった。
どうせ話したところで、
納得してもらえるとは思えない。
それなら、
子どもの意思を尊重したかった。
バレる日が来ることは、
もちろん覚悟していた。
それでも私は、
子どもの未来を優先することを選んだ。
そして実際、
かなり長い間、
夫に知られず通い続けることができた。
もう大丈夫。
そう思い始めていた矢先だった。
バレた瞬間は肝を冷やした。
それでも、
不幸中の幸いだったことがある。
夫が真実を知った時には、
もう受験できる時期ではなかったことだ。
無理やり義実家へ連れて行こうとしても、
子どもは強く拒否する。
夫にとっても、
もう状況を変えられないタイミングだった。
私たちにとっては、
最悪の事態だけは免れたと言えた。
「義実家で暮らすしかない」
それでも夫の怒りは収まらなかった。
「俺や親に詫びを入れろ」
「うちの親もがっかりしている」
「みんなが納得するには、
もう義実家で暮らすしかない」
同居を迫る連絡が、
毎日のように届く。
時には電話で、
直接責め立てられることもあった。
私はそのたびに、
こう伝え続けた。
「申し訳ないと思ってる。
でも、(子ども)の意思を尊重したい」
ここで私は、
余計な一言を口にしてしまう。
「そう思ってしまうのが、
親なんだよ」
その瞬間だった。
「どういう意味だよ!
俺が親じゃないって言うのか?!」
手が付けられないほど怒り、
電話の向こうで、
何かが壊れる音が響いた。
以前、
夫が暴れて家具を壊した日のことが、
頭をよぎる。
背筋が、
すっと冷たくなった。




















