「出来が悪ければ早めに手を打て」
小学校低学年の頃、子どもの成績が芳しくなかった。理解していないという感じではなく、ケアレスミスが目立った。
小さいうちはそういうこともあるだろうから、ひとまず様子を見守ることにした。
だが、これに口出しをせずにはいられない人たちが居た。
そのうちの一人が夫だ。
夫は日々何かしらの文句を言っていたのでいつも通りと言えばいつも通り。
予想外だったのは義両親まで色々言ってきたことだった。
呑気に構えている私に対し、
「今のうちからちゃんとしなければだめ」
「このまま行ったら落ちこぼれちゃうから」
「出来損ないと思われも良いの?」
などなど、色んなことを言ってきた。
『子どもが勉強しなかったり真剣に取り組めないのは家庭環境のせい』とまで言われた。
家庭環境のせいと言われると非常に困ってしまった。
その責任の一端は夫にもある。
それを私だけのせいにされるのも納得できなかった。
義両親からは、そういう諸々を含めて私が管理するようにと言われた。
この時『簡単に言わないでよ!』と内心思っていた。
家庭環境を整えるのはかなり難しい事だと義両親も知っているはずなのに。
日頃どんなに辛い思いで過ごしているかも知っているはずなのに。
私の頑張りが足りないような言い方をされてショックだった。
あのモラハラ虐待夫が家に居たら普通に暮らすだけでも非常に大きなストレスを抱えることになる。
その上、子どもの成績まで『普通』では許されないなんて。
一緒に聞いていた子どももショックを受けたみたいで表情は硬かった。
その後、夫から
「お前、今のままじゃダメなんだぞ。どうするんだ?!」
と詰め寄られ、子どもは半泣きになりながら
「頑張る。頑張るから」
と言った。
そうしたら夫が、
「前にもそう言ったよな!もう聞き飽きたって言ってるんだよ!」
と怒鳴った。
傍で聞いていたお義父さんが子どもに
「ほら、ごめんなさいってしちゃいなさい」
と促し、それを聞いた夫が更に激高して
「そういう話じゃねーよ!こんな落ちこぼれでどうしようもねー奴、どうやって普通のレベルまで持って行くのかって聞いてるんだよ!」
と叫んだ。
子どもは手をギュッと握りしめてポロポロと涙を流していた。
それを見た私はたまらず、
「もう止めてよ。何でそんな酷いことを言うの!」
と子ども抱きしめた。
夫に歯向かってしまったことでドキドキしていたが、子どもが可哀そうで言わずにはいられなかった。
義両親にも夫を止めて欲しくて視線を送ったら、二人は口々に
「ママがそんなに感情的になってちゃ話もできないわ」
と馬鹿にしたように言った。
『塾代を出すから通うように』と言った義両親
怒られた子どもは私の後ろに隠れて『ごめんなさい』と繰り返した。
私にしがみつきながら、しゃくり声をあげて泣いた。
あまりにも泣くものだから義両親も少し戸惑ったようだ。
でも、夫は子どもの手を無理やり引っ張って自分の方に引き寄せた。
「泣いてちゃ分かんねーんだよ!」
更に怒鳴られて肩を揺らしながら涙を流す子ども。
このままではまずい。
そう思って咄嗟に夫と子どもの間に入ろうとした。
だけど、義両親から
「今、大事な話をしているの」
と止められた。
私にはどう見ても子どもを虐めているようにしか思えなかった。
それなのに、この3人からしたらこれは教育的指導ということになるのだ。
自分たちのしていることは正しいと信じて疑わない様子に正直ゾッとした。
結局子どもは無理やり
「塾に行かせてください」
と言わされた。
夫がそう言うように促し、義両親も満足そうに聞いていた。
決して子どもの意思ではない。
それは、そこに居た全員が知っていることなのに、夫は
「お前が決めたんだからな!一度決めたことを途中で投げ出したら許さないからな!」
と脅した。
お義母さんも、
「自分で決めたんだもん。頑張れるわよね」
と言っていて、私は絶句した。
きっとこれで成績が上がらなかったらなじられる。
そうなったらまた別の意味で地獄だ。
子どもは本当は行きたくもない塾に通うことになり、しばらく落ち込んでいた。