何もくれなかった人から、突然届いた誕生日プレゼント
一緒に暮らしていた頃、
プレゼントなんて
一度も貰ったことは無い。
誕生日はもちろん。
バレンタインのお返しさえ、無かった。
付き合っている頃、
夫の友人カップルとの食事会で、
贈り物の話になった時。
夫は、平然と言った。
「俺はそういうの疎いから」
あの時は、
そういう人も居るんだろうと、
軽く受け流した。
でも、違った。
夫は「しない人」じゃない。
「しないことを選ぶ人」だった。
自分への気遣いは、
当然のように要求してくる。
誕生日も、バレンタインも。
欲しい物を察して、
外さずに用意すること。
それが当たり前だった。
正直、面倒だった。
でも、何もしなければ、
露骨に機嫌が悪くなる。
空気が一気に重くなる。
だから私は、
波風を立てないために、
必死で「正解」を探した。
夫の仲間内ではきっと、
『妻の方が愛情深い』と
思われていたはずだ。
夫自身も、
その「理想の自分」に
酔っていたと思う。
――なのに。
別居してから、
突然プレゼントが届くようになった。
最初は誕生日。
次は、何でもない日。
そんなこと、
今まで一度も無かったのに。
嬉しいはずなのに、
心はまったく動かなかった。
驚きと、戸惑いと、
そして――警戒。
どうしても、
その裏を考えてしまう。
嬉しいはずなのに、怖かった
プレゼントをもらって、
気が重いなんて。
そんなこと、
絶対に言えない。
でも、本当は。
全く、嬉しくなかった。
むしろ――怖かった。
この後、何を求められるのか。
何を返さなければいけないのか。
そればかりが頭に浮かぶ。
荷物が届くたびに、
気持ちは沈んでいった。
ただの好意なはずがない。
何の見返りもなく、
こんなことをする人じゃない。
絶対に、裏がある。
そう思わずにはいられなかった。
疑いはどんどん膨らんで、
『盗聴器でも入っているんじゃないか』
とまで考えるようになった。
そこまで考えてしまう自分にも、
少しだけ驚いた。
急にプレゼントを
送りつけてくるようになったのは、
家に戻ってから一年後。
私の気持ちが変わるのを
待っていたのか。
それとも、
思い通りに動かない状況に、
焦り始めたのか。
子どもにも、
同じように贈り物をするようになった。
でも反応は、
あまりにも正直だった。
送り主の名前を見た瞬間、
無言で視線を逸らすか、
一言。
「捨てて」
その姿を見て、
胸がざわついた。
こうやって、
優しさと圧を使い分ける。
それもきっと、
モラハラの一部なんだと思う。
それでも私は、
捨てきれなかった。
選んだ時間や気持ちを考えると、
可哀そうだと思ってしまう。
――甘い。
そういう甘さが、
隙になる。
分かっていても、
捨てられなかった。
だからきっと、
夫は最後まで、
諦めなかった。
そして私は、
最後まで――
その“プレゼント”を、
素直に受け取ることができなかった。
