何にキレるか分からない夫が怖い
何に対してキレるか分からない夫が怖かった。気を付けていても、ふとした瞬間に地雷を踏んでしまう。
そもそも何が地雷になっているのかも分からない。
だから対策の立てようがない。
でも、夫は自分の意思が尊重されないと怒り出すから厄介だった。
いやぁ~、エスパーでもない限りは無理よ。
夫の頭の中のことなんて知りようがないんだから。
普通に考えたらそんなこと分かるはずなのに、思い通りにならないことを受け入れられないようだった。
そもそも、家族が何でも整えてくれると思うのが大間違いなのだと思う。
気に入らないといちいちキレるのもおかしいし。
何度か義両親に相談して本人に伝えてもらおうとしたが、二人は
「○○(私)さんに気を許してるのよ」
という訳の分からない弁護をした。
気を許してるから何だっていうのだと思ったが、義両親はそれ以上介入しようとはしなかった。
他のことは介入してくるのにね。
結局、実の親でも夫の扱いが難しかったということだ。
『お宅の息子さん、酷いんですよ。少し言い聞かせてくれませんか』
そうお願いしているのに、
『暴言を吐くのは気を許しているからだよ』
と諭されるなんて。
まあ、確かに義両親に対しても暴言を吐くことがあったから。
息子と言えども対応が難しかったのかもしれない。
でも、私と違って敬われたり大事にされている時間もあったはずだけど。
思い出の品も壊されて
目の前をコップが飛んで行った。
夫がコップを投げて、顔の横を通過して行ったのだ。
そして家の柱に当たった。
別に喧嘩をしたわけでもなく、ただ単に私が自分の意見を言っただけ。
その意見が気に入らなかったようだ。
夫の方を向いていたから、一歩間違えば顔に当たっていたかもしれない。
コップは保冷効果のある、いわゆるタンブラーというやつで。
つまり硬かった。
壊そうとしてもなかなか壊れなそうなそのコップが目の前を飛んで行き、べっこりと凹んだ。
これがどれほどの衝撃か分かりますか?
凹んだコップを見て、夫は薄ら笑いを浮かべた。
怖い。
気持ち悪い。
この状況を見て笑えるなんて。
もしかしたら、『お前に当たれば良かったのにな』なんて思ってるんじゃ・・・。
そう想像したら更にゾッとした。
この時、夫のことが本当に分からないと思ったのは破壊されたのが思い出のタンブラーだったからだ。
数年前にお出かけをした時にお揃いで買った物。
咄嗟に自分が飲んでいたタンブラーを投げたから。
夫のが壊れたというわけだ。
もうお揃いじゃなくなったね。
「大事にしようね」
なんて言いながら買った光景を思い出し、私は思わず涙ぐんだ。
こうやって、この人は思い出まで破壊していくんだ。
楽しかった思い出が全部無くなって、最後に何が残るのだろう。
涙をこらえ、
「これ、思い出のやつだったよね」
と言いながら片付けようとしたら、夫が
「くそっ!お前のせいで!」
と舌打ちした。
残った私のタンブラーを見たら、きっとこのことを思い出して夫が不機嫌になるから。
残った私のタンブラーを、気づかれないように棚の一番奥にそっとしまった。