兄弟喧嘩、勃発
知らないうちに、また新たな問題が発生していた。義実家にお義兄さんが戻るという話を聞かされた夫が文句を言い、そこから喧嘩に発展した。
何というか・・・。
どっちもどっちなのよ。
私から見れば夫もお義兄さんも変わらない。
エゴの塊で自分の意見を押し通そうとする人たち。
エゴ VS エゴの闘いになったらどうなる?
そりゃーどちらも引かなくて激しい争いになるに決まってる。
多分義両親もそれが分かっているから夫には言わなかったのだ。
それなのに、けん制する意味もあったのか、お義兄さんがわざわざ夫に直接伝えてきた。
『俺が実家に戻るから、お前は戻って来るなよ』と。
そんなことを言われて、『はい、分かりました』なんていう人ではない。
その後はもう普通の話ができないほどいがみ合った。
そんな中で『離婚の話を進めましょう』というわけにもいかず・・・。
どうしてこうも振り回されてしまうのかな、と落胆した。
この件で、一つ良いこともあった。
お義兄さんに腹を立てた夫が、みるみる元気になった。
煩いほどの怒鳴り声で私たちを威嚇していた夫が戻ってきた感じだ。
そうなってくると、あの弱っていた夫は一体何だったんだろうという気持ちにもなった。
何はともあれ元気になったのは良かった。
これで兄弟同士の争いが収まってこちらの話し合いを再開させてくれれば言うことは無いと思った。
義両親から、考え直すよう説得されたが
兄弟同士の諍いが起きた時、お義母さんは何故かお義兄さんの肩を持った。
常日頃から平等に接してきたと言っていたので、これには本当に驚いた。
二人の意見が対立したら必ずお義兄さんの言い分に加勢するんだもの。
夫としては面白くなかったはずだ。
お義父さんはほんの少し夫びいきで、だけど表立ってどちらか一方に肩入れすることは無かった。
頑固な兄弟の喧嘩は予想以上に長引き、どちらも折れる気配は無く・・・。
私は段々と『この長々とした内輪揉めを待っている意味ってあるの?』と思い始めた。
夫はその頃毎日イライラしていて話し合えるような状況では無かった。
だから、焦った私は義両親に相談した。
でも、その行動が間違いだった。
お義母さんから、
「ねぇ、離婚のこと、本当に何とかならないのかしら」
と泣かれてしまった。
ハンカチで目元を押さえながら、
「あの子も今回ばかりは反省してるのよ。毎日毎日(子ども)ちゃんのことばかり話してるわ」
と言うので、
「戻るつもりは無いんです。同じことの繰り返しになってしまうので」
と答えた。
淡々と話しているつもりだったが、何だか自分がお義母さんを泣かせてしまったようで、それ以上何も相談することができなかった。
お義父さんは黙って聞いていたのだが、お義母さんが泣き始めたのを見たら、
「周りは皆今まで通りに家族三人で暮らしてもらいたいと思ってるんだよ」
と言い始めた。
「私たちだって本当は(夫)が不憫で仕方がないし、(子ども)ちゃんにも会いたいんだ」
と、自分も我慢しているとアピールしてきて、暗に私を責めているようだった。
こんなに気持ちを伝える努力をしてきたのに、結局何も分かってもらえていなかった。
まるで宇宙人と話しているみたい、とその時思った。
夫にそう感じることがあったが、義両親も同じだった。
程度の差はあっても、肝心なところで分かり合えないのだ。
私が相手なら自分たちのエゴを通せるだろう、と考えているのも夫と同じだった。
『お前さえ我慢していれば丸く収まるんだよ』と言われているようで。
とても嫌な気持ちになり、それ以上話すことを止めた。
あの日、一緒に居たら丸め込まれてしまいそうで、逃げるようにその場を後にした。
「また連絡するから」
というお義父さんの呼びかけにも振り返らず、駅へと走った。