2025年6月10日火曜日

夫との交渉決裂

お互いが譲らず、関係が悪化

途中までは上手くいっているような気もしたのに。

結論から言うと、あの話し合いは明らかな失敗だった。

何の収穫も得られなかった。

むしろお互いが言いたいことを言ったことにより関係が悪化して、収拾がつかない状態になってしまった。

きっとそれまでも私が自分の主張をしていたら同じようになっていたんだと思う。

そうならなかったのは、何も言わずグッと我慢してきたから。

夫と言い合いになるのは、とても怖かった。

結婚生活の中で軽い言い合いも経験したけれど、何度そんな場面に遭遇しても慣れるものではなかった。

元々言い争うことが苦手というのもあるとは思うのだが。

それを差し引いても、夫の口調や雰囲気は恐怖を感じるのに十分だった。

あの日、別れ際に言われた言葉が今でも忘れられない。

「お前がそんな人間だったなんて」

夫は確かにそう言った。

あれは一体どういう意味だったのだろう、と時々思い出す。

いつも従順だった私が歯向かったから、怒りに任せて言ったのだろうか。

それとも、『そんな本性だったとは』という意味かな。

どちらにしても夫が私に失望していたことは間違いないと思う。

次回の取り決めもしなければならないから、最後は穏やかに別れたかったのに。

夫は乱暴に椅子を引いて伝票をひったくるように持ち、足早に入口へと向かった。

「あっ、待って。自分の分は払うよ」

そう言いながら追いかけたのだが、手でシッシッと追い払うような仕草を見せて近寄れない雰囲気だった。

これはもう払うタイミングはないな。

そう思って夫が出てくるのを待っていた。

出てきたのでお礼を言おうとしたら、こちらを一度も見ることなくNに

「行くか」

と言って、そのまま去って行った。

Nは歩きながらこちらを何度か振り返り、『ごめんね』と口を動かしながら顔の前で手を合わせていた。

あー、Nには最後まで気を使わせちゃったな。

申し訳ないのと、夫への失望と。

色んな感情がぐちゃぐちゃになって、何だか無性に悲しくなった。

強い憎しみは人の心を深く傷つける。

その時の私も言葉では言い表すことができないほど傷ついて、途轍もなく悪いことをしてしまったような錯覚に陥った。


連絡しても出てくれない

交渉がこのままストップしてしまうことだけは避けたかった。

だから、何度も連絡を入れた。

でも全く出てくれなくて、どうすれば良いのかが分からなくなった。

もう、いっそのこと離婚届を送り付けてしまおうか。

そんな考えさえ浮かんできた。

だけど、どうせ送ったところで書いてくれるはずもなく。

やはり交渉を続けるしかないのか、と暗澹たる気持ちになった。

そのまま別居を続けていれば離婚自体は認められるという。

それを待つという方法もあるけれど・・・。

数年間、ずっと先輩のところにお世話になっているわけにもいかない。

別に家を借りるとして、その費用はどうしたら良いの?

2軒分を維持するほどの収入はないし、夫がその間払ってくれる気配もない。

実質的に今の家を引き払わなければ、新たな賃貸契約を結ぶことなど不可能だった。

それならば、夫に出て行ってもらうしかない。

いつも堂々巡りで『これが正解』という答えは出なかったが、それでも夫に出て行って欲しいという部分は一貫していた。

連絡がつかない日が続くと、精神的に疲弊してくる。

ある時、『これ以上待っても意味が無い。それならばこちらから行動を起こそう』と思い立ち、一件のメッセージを送った。

「部屋を解約します。引っ越しの準備をお願いします」

あえて期日を書かなかったのは、その方が焦って動くと思ったから。

案の定、夫からすぐに連絡がきた。

その怒りようは凄まじく、近くに居たら恐ろしい目に遭っていたであろうことは容易に想像できた。

幸い夫は先輩の所に居ることを知らない。

話し合いの時に何度も聞かれたけれど教えなかった。

だから、直接文句を言うこともできず、ひたすら電話口で怒鳴っていた。

私は耳から離してその声を聞いていた。

居所不明の別居状態が続く・・・

「そろそろ居場所を教えろ」と言われたけれど 家を出て以来、夫とは携帯一つでつながっていた。 連絡手段を絶つと離婚の交渉ができなくなる。 そう思って、完全に関係を絶つことを避けた。 連絡を取り続けていると、相手も望みを持つものだ。 『元に戻れるのではないか』というのが言葉の端々から...