夫の機嫌が直るのを待つしかない
へそを曲げてしまった夫の機嫌を取るのは大変だ。その最中は永遠にこのままなのではないかと思うくらいに絶望した。
どちらに転ぶか分からない状況で待っているだけというのは辛い。
とてつもなく長い時間が経過しているように感じ、檻に閉じ込められたままポツンと世間から取り残されてしまったような錯覚に陥った。
もちろん何もせずにただ待っていたわけではない。
何度もメッセージを送った。
だけど、怒っている時にはいつもスルーされる。
どうせ返事は来ないんだろうなと思いながら送り続け、いつしかメッセージを送ることが日課になった。
これは私にとって良くないことだった。
夫関連で何か継続的にしなければならないことができると、日々そのことに思考を奪われてしまう。
できれば離れている間は自由に過ごしたかったのに・・・。
こんな感じで気持ち的にも相変わらず縛り付けられていた。
子どもは、先輩の家に戻ってからとても落ち着いていた。
まるで夫と過ごした日々が無かったかのように。
家に居た時のことを聞こうとしても、
「普通だったよ」
としか言わないので、それ以上のことは分からなかった。
ただ、楽しくなかったというのだけは表情や口調から伝わってきた。
「パパが怒った時には、おじいちゃんやおばあちゃんが助けてくれた?」
と聞いたら、
「うん、まあ」
と歯切れの悪い返事。
具体的にどうだったのかが分からないので、その間のことを想像してはやきもきしていた。
取り戻せたのだから良いじゃない。
そう思おうとしても、子どもを傷つけられたかもしれないと考えるだけで沸々とした怒りがわいてしまう。
そんな自分を止めることができなかった。
夏休みの思い出を作りたい
日々めまぐるしく状況が変わる中でも、子どもは着実に成長していた。
春頃よりも少ししっかりして、お手伝いも率先してやるようになった。
先輩の家に居る間は褒めてくれる人が二人も居たからね。
私だけでなく先輩まで『すごい!』と言うので、まんざらでもなさそうな様子でいそいそとお手伝いをしてくれた。
夏休みは時間がたっぷりある。
宿題をやったって、まだまだ余っている。
それで空いた時間を何に使おうか、と二人で考えたが良い案が浮かばなかった。
そんな時、へそを曲げていた夫から連絡があって、
「夏休みだからどこかに連れて行ってやりたい」
と言われた。
やっと連絡が来たと思ったら離婚の話ではないのか。
がっかりしたが、一応子どもの意思を確認しなければと思って聞いてみた。
どうせ嫌だと言うだろうなと思っていたら、案の定『絶対に嫌!』と言われ、夫はすっかりしょげていた。
それにしても急にお出かけの提案なんてしてきて、どういうつもりだったのだろう。
一緒に居た頃は一度だってそんな風に声を掛けたことなんて無かった。
それを急に父親らしいことをしようとしても、もう遅いんだよ、と思った。
分かりやすい点数稼ぎのように思えて、私はまた夫に失望してしまった。
こうやって表面上だけ取り繕うとしても上手くいくわけがない。
その後も子どもと色んな話をして、その夏の過ごし方の計画を立てた。
最後の方の1週間は二人で楽しむとして。
それまでの2週間弱をどう過ごそうか。
悩んでいたら、子どもから
「(私の実家の)おじいちゃん家に行きたい!」
と提案された。
久々におじいちゃんとおばあちゃんに会いに行きたい。
そう言われ、すぐに実家に電話をかけた。
普段連絡なんてほとんど取らないから最初は驚いていたけれど、用件を伝えたら大喜びで『待ってるよ』と言ってくれた。
そんなこんなで、その週末に子どもを実家まで送りに行った。