不気味な沈黙、気づかなかった義両親の変化
思い切って夫にこちらの要求を突き付けた。そうしたら、あれほど頻繁に来ていた連絡がパタッと途絶えた。
それまでも離婚に関する話し合いには積極的では無かった。
だけど、どうでも良い話は毎日のようにメッセージで送ってきていて。
反応にも困ることも多かった。
それがいきなり不気味なほどの沈黙。
きっと何かあったんだと思った。
ただ、何かあったとしても私たちが直接関与するようなことではないかもしれないと考え、連絡は控えた。
義実家の方ではお義兄さんの件でもゴタゴタしていた。
だから、その件でまた色々と悩ましい問題が発生しているのかもしれない。
そう思って、相手から何か言ってくるまでは静観しようと決めた。
実際に私から動くことは無かったのだが、その間、義両親からちょっとした連絡があった。
質問されたことに答え、いつも通りに接したつもり。
相手もいつも通りだったような気がしたけど。
後から考えると少し雰囲気が違っていた気もする。
どことなくよそよそしいと言うか・・・。
でもそれは、離婚話の真っ最中で私に対して複雑な心情を抱いているからだと思っていた。
それが、まさか夫があんなことになっていたなんて。
その頃の私には知る由もなく、『早く連絡来ないかな~』なんてのほほんと過ごしていた。
私への抗議のつもりなのか・・・
夫がご飯を食べなくなった、と聞かされたのはそれから数日後のことだった。
『困っている』と義両親から連絡があり、初めて夫の状況を知った。
「何日ぐらい食べてないんですか?」
と聞いてみたのだが、その返事は要領を得ないものだった。
恐らく、正確には分からなかったのだと思う。
全く食べていない感じではなくて、リンゴひとかけとかゼリー一個とか。
僅かな量を取っていて、それ以上は食べようとしなかったらしい。
水分はちゃんと取っていると言っていたが。
それだけでは体力が持たないだろう。
本人が嫌がると言っても何かしらの方法で食べさせた方が良いと思い、義両親にそう伝えた。
そうしたら、
「すっかり気落ちしちゃってるから、厳しく言うことができないんだよ」
と強い口調で言われた。
それが何だか非難されているように感じて・・・。
その時初めて『ああ、そうか』と理解した。
私への当てつけなんだ。
『夫の元に戻るつもりはない』と告げた時から少しおかしかった。
急に無口になって、私との対話を避けるようになった。
心当たりのある私は何も言えなくなり、ただ
「すいません」
と謝った。
謝っても夫の気持ちが晴れることはない。
それでも、謝ることしかできなくて、
「私にできることはありますか?」
と声をかけた。
もう離婚する夫のために何かするなんておかしな話かもしれない。
でも、最後くらい元気に笑ってお別れしたくてそんな発言になってしまった。
義両親の返事を待つ間の長い長い沈黙。
なかなか返事をもらえないので、もしかして電波が悪いのかと思って、
「あの・・・」
と言いかけたら、
「あなたにできることは何もない!」
とハッキリとした口調で言われた。
明確な拒絶だった。
私のせいでそうなったのだから関わって欲しくない、という意思表示だった。
義両親からそれほどまでに強い憎しみを向けられた私に、一体何ができると言うのだろう。
最後まで噛み合わない二人だったが、とうとう分かり合える日はやって来なかった。