離婚できないストレス
一日でも早く離婚したいのに、なかなか進展がなかった。私の人生でこれほどまでに人を嫌いになったことがあっただろうか。
その相手が、まさか結婚した相手だなんて・・・。
段々と夫のことを考えるだけでストレスになり、そのストレスに耐えかねて最初にした約束を撤回できないかと考え始めた。
その約束とは【お互いに弁護士を立てずに直接やり取りすること】というもの。
お金が無かった私には好都合だったけれど。
よくよく考えたら、口下手な私が交渉なんてできるはずがなかった。
ただ、一度約束したことを勝手に反故にはできないので、何とか夫に了承してもらおうとした。
まずは相手の反応を確かめるためにメッセージを送信。
すぐに反論してくるかと思いきやスルーされた。
めげずに再度メッセージを送信したら今度は短く一言、
「嫌です」
とだけ返ってきた。
嫌ですって・・・、子どもじゃないんだから・・・。
検討もしてもらえないなんて、OKしてくれる可能性は無いのかな。
その反応を見て諦めそうになったが、よくよく考えたら他にもう手は無かった。
それでしつこく送り続けたら、
「では、こちらの出す条件をのんでくれるのなら考えます」
という提案をもらった。
その条件次第ではあるが、もし重要でない部分ならそれもアリかな、と思ってその旨を送信したら、
「親権と養育費を要求します」
と言われ、こりゃ駄目だと思って、
「弁護士の件は諦めます」
と返事をした。
この件はこれで終わり。
また意味のないことをしてしまったと思ったが、このやり取りをきっかけに夫との話し合いを復活させられそうな雰囲気になった。
だから、すかさず
「では、直接話し合いましょう。次回は〇月〇日でどうですか?」
と送り、夫からは前回と同じ場所を指定された。
子どもを愛するということ
季節はすっかり秋へと変わっていた。
朝晩ずい分涼しくなり、肌寒いと感じる日も増えた。
困ったことに子どもの服を持ち出せていなくて、夏服に上着を羽織るだけになっていた。
そのままではマズいので週末に買い物へ。
その時、先輩が一緒に行ってくれて
「いつも頑張ってるご褒美だよ」
と一枚買ってくれた。
それを見た子どもは大喜び。
お気に入りの服となり、その後頻繁に着ていた。
着た日に洗って乾くとまた着るというのを繰り返すので、一日おきのペースで。
『服がくたびれちゃうよ』と言ったら、ようやく2日おきになった。
それくらい気に入ったということだ。
それを見た先輩も、
「いや~、可愛いね~」
と目を細めていた。
お世話になっている上に服まで買ってもらうなんてとんでもないと思って、最初は断った。
だけど、
「最近ね、こういう幸せもあるんだなっていうのに気づいたのよ。だから買ってあげたいの」
と言ってくれた。
数か月前に初めて会った子どもに、ここまでしてくれるなんて。
私は感激して思わず泣きそうになった。
思い返してみると、先輩はとても愛情深い人だった。
一緒に働いていた頃も、いつも面倒を見てくれた。
その一万分の一でも夫が愛情を持って接してくれていれば・・・。
そうしたら子どもは悲しい思いをせずに済んだのに。
世の中には、子どもを愛するということが難しい人もいる。
夫もその一人だ。
それは仕方の無いことだけど、傷めつける必要は無かったはずだ。
多分夫は永遠に本当の意味での愛情を注ぐことができない。
そのくせ、親権を欲しいと言ってくる。
ただただ私が望んでいるものを奪いたいだけなのかもしれない。