ゴミ袋の中に思わぬ物を発見
子どもの服を取りに行ったつもりが、思わぬ物を発見した。
それは、子どもの大事にしていたぬいぐるみだった。
以前、うちの両親と一緒に動物園に行った時に買ってもらった物。
子どもはとても大事にしていて、大切な物を入れるケースにしまっていた。
それをわざわざ取り出してゴミ袋に入れたということだろうか。
夫ならやりそう、とも思ったが。
そんな意地悪なことをする意味が分からなくて、発見した時には怒りがわいた。
服と一緒に入れられていただけなので汚れなどは無かった。
ただ、無造作にゴミ袋に放り込まれたことを想像したら子どもが可哀そうで・・・。
こうやって大事にしている物まで躊躇なく捨ててしまうんだな、と更に夫への嫌悪感が強くなった。
『もう好きじゃない』という所で留まっていれば、まだ必要最低限のやり取りはできる。
でも、『嫌い』まで行ってしまうと、普通のやり取りさえ億劫になる。
私の場合は更にその上の『大嫌い』というレベルまで行ってしまったのだから。
関係を修復するのは絶対に不可能だった。
ぬいぐるみ自体はそれほど大きな物では無い。
だから、服を詰めた後一番上に乗せて持ち帰ることができた。
これを見たら驚くだろうな。
まあ、寝ているだろうから発見するのは明日だろうけど。
そんな風に思いながら帰ってみると、なんとまだ子どもが起きていた。
眠い目をこすりこすり、先輩の隣でボーっとテレビを見ていた。
小さめの声で、
「ただいま~」
と入って行ったら数秒後に覚醒したのか、
「ママ!おかえり~」
と嬉しそうな顔で近づいてきた。
上にちょこんと乗せていたぬいぐるみを手渡すと更に嬉しそうな表情になり、
「これっ!持ってきてくれたの?!」
と大事そうに胸に抱えた。
パパを恐れる子ども
「パパ、怒って無かった?」
とぬいぐるみを抱きしめながら子どもが言った。
直接会って話したわけではないんだけど、そういうことにしてあったから話を合わせる必要があった。
「うん、大丈夫だよ」
そう答えたけれど、実際の所は顔も合わせてない。
外に出されていたゴミの中から、こっそり持ち帰ってきただけだ。
子どもは『パパが怒っていない』ということを聞いてホッとしたような表情へと変わった。
子どもの中で夫は恐怖の対象だ。
怖い以外の感情はほとんど無かったかもしれない。
尊敬とか慕うような気持ちもゼロだと思う。
ただ怖いから言う通りにしていただけ。
だから夫と会うと伝えた時には、常に不安そうにしていた。
「ママ、危ないよ」
とも、よく言っていた。
子どもに危ないと言われてしまうほどの人物なのだ。
ゴミに出そうとしている物であっても私が勝手に持ち出したとなれば夫は激高するから。
気づかれない程度の枚数だけ持ち出した。
その後は元通りになるように袋の結び方にも気を付けた。
注意深く見ていなければ開けたことに気づかないだろう。
私が取りに行くとは夢にも思わないだろうから怪しまれる心配は無いと思った。
それにしても、まだ着られる服がずいぶん捨てられていたな・・・。
夫が怒ると本当に手がつけられなくなる。
捨てる時、お義父さんやお義母さんは止めなかったのだろうか。
いや、止めたとしても言うことを聞かなかったのだろうな。
私たちの初冬まで着られるような服は、ほとんど捨てられてしまった。
ああは言ったけど、実際に行動に移すことは無いんじゃないかとうっすら考えていた私が甘かった。
憎しみのあまり、目の前にある物をどんどん捨ててしまったんだろうなというのは容易に想像できた。
そこまで憎んでいるのに、なぜそんなにも執着するのかが分からない。
どうせなら、とことん憎んでもう顔も見たくないくらいになって、私たちと縁を切ってくれれば良いのに、と思った。