私の発言が失礼だと言うが・・・
お義父さんが学校に出向いて子どもを説得しようとした件は、すぐに夫の知るところとなった。驚いたことに、夫から見ると『間違ったことはしていない』のだと言う。
おじいちゃんが孫に会いに行くことの何が悪いの?という感じだった。
ただ会いに行っただけなら私もここまで反応しない。
もちろん夫が行くのはNGだけど。
問題なのは『パパのことを許してあげて』と圧をかけたことだった。
許すと言ったら、夫のことだから多分元通りの生活を求めると思う。
お義父さんもそれを望んでいることは百も承知だ。
だけど、私たちにそのつもりはない。
こちらの気持ちを無視して一方的に説得しようとするなんて。
これでは以前と何ら変わり無いではないか、と思った。
あの日、お義父さんが子どもににじり寄っているのを見つけて慌てて駆け寄った。
そして、子どもとお義父さんの間に入るような形で事情を聴いた。
最初は言葉を濁していたが、すぐに状況を理解できたので、
「これ以上は止めてください」
と言ってお義父さんの言葉を制止した。
『子どもの気持ちを考えて欲しい』とお願いもしたけれど、あまり響いていないようだった。
そのまま帰宅して今後どうすべきかを考えてはいたが、夫に連絡するつもりは無かった。
きっとお義父さんの肩を持つだろうし、私の言い分なんて聞いてくれないだろうから。
『対策も考えなきゃな―』なんて思っていたところ、急に夫から連絡が来た。
最初からとても怒っていて、
「うちの親に対して何であんな態度を取るんだ!」
と怒鳴られた。
あんな態度と言われても、ただお願いベースで話をしただけだ。
まさか事情も知らず、子どもに会いに来たお義父さんを追い返したと思ってる?
不審に思って確認してみたら、夫は全部聞いて知っていた。
その上で、私の発言が非常識だと憤っているようだった。
「ろくに会わせてもらえない孫に会いに行っただけなのに。それのどこが悪いんだ!」
と話にならなくて。
恐る恐る、
「パパを許してあげて」
という発言に対してはどう思っているのかを確認してみたら、
「別に何もおかしいことはない」
と言い切った。
夫にとってお義父さんは親なのだから、親が子どもを想って発言するのはごくごく普通のことだ、と正当化していた。
あんな人でも自分の親を気遣う心は持ち合わせているらしく、
「心配ばかりかけて申し訳ないと思ってる」
と言うので、思わずため息が出た。
二度と同じようなことが起こらないように・・・
夫があの部屋に居る限り、リスクは無くならないと思った。
小学校に通わせるのも本当は怖かった。
これが一時のことならその間だけお休みすることもできたのだが・・・。
その時点では夫がいつ義実家に引っ越せるかが分からなかった。
それで、放課後に学校で見てもらえるサービスを利用することに決めた。
手続きは意外と簡単で、先生から書類をもらって提出するだけ。
子どもに伝えて用紙を持ってきてもらい、翌週からスタートとなった。
それを利用すれば、私も学校内まで迎えに行くことができる。
引き取りをした後に安全に帰れるから、最初からそうしておけば良かった。
当時は色んなことを考えているようでいて、実際には気が回っていないことも多かった。
だから、後から気づくこともたくさんあったのだけれど。
不思議と上手くまわっていた。
困難な状況の中で子どもの純真さや明るさに救われた部分もある。
夫と離れてから、子どもは本来の姿を取り戻したのか明るくなった。
積極的に色んなことにチャレンジし、お友だちと遊ぶことも増えた。
外出中に異様に時間を気にしたり大きな音にビクッとしてしまう癖はなかなか消えなかったけど。
それでも、自由な環境が少しずつ子どもを変えてくれているのだと思えて嬉しかった。