夫の行く末を案じたか
義両親にとって、夫はいくつになっても可愛い子どもなのだ。辛い未来が予想されれば放っておくことができなかったのだと思う。
離婚に関する動きがいよいよ本格的になり始めた頃、義両親から頻繁に連絡が来るようになった。
いつも最初は当たり障りのない話をしているのだが・・・。
段々と本題に入り始める時には電話口の声が緊張しているのが分かった。
それでこちらも感づいてしまう。
『ああ、また夫の援護をするつもりなのか』と。
電話に出なければ良かったのかもしれない。
でも、目上の人からの連絡を無視しても良いものだろうかと悩んだ。
悩んで、やっぱり最低限の礼儀は必要だと思い、電話がかかってくればできるだけ出るようにした。
お義父さんやお義母さんの言いたいことはだいたい決まっていた。
『(夫)から(子ども)を取り上げないであげて』
もっと前に夫も同じようなことを言っていた。
義両親から孫を取り上げるなと。
お互いのことを考えての発言なのだろうが、そこに私たちへの配慮や思いやりはなかった。
あれほどまでに苛め抜かれたのに、それに対する罪悪感が無いのも信じられなくて。
ますます彼らのことが分からなくなった。
既に無かったことになっているのかな。
それとも、不都合な事実から目を背けているのだろうか。
あまりにも同じことを繰り返し言ってくるので、段々と怒りがわいてきて、
「取り上げるという言い方は違うと思います。これまで(夫)さんがやってきたことをご存じなんですよね?」
と反論したこともある。
だけど、私が少し強い口調になってしまったら相手は更に強く言ってきて険悪な雰囲気になった。
「アンタがそうやって頑なだから、(夫)だって話し合いも何もできないんだろう」
などと言われ、
「こっちには良い弁護士がいるんだから!」
と喧嘩腰になった。
まさかここまで攻撃的になるとは想像もしておらず、私はただただ驚いて言葉を失った。
きちんとした教育を受けさせたいと言われ
ある日、義両親が
「教育のことも、もう少しきちんと考えて欲しい」
と急に言い始めた。
何も考えてなさそうな私に子どもを任せておけないのだそうだ。
そう言われても、できることは精一杯やっていた。
ただ、実質シングルマザーなのだからできることは限られている。
それをダメだしされてもどうしようもない。
『ご心配いただかなくて結構です』とでも言おうかと思ったが。
更に怒りそうなので止めた。
こんなところで喧嘩をしている場合ではなかった。
翌日は、待ちに待った話し合いの日。
やっと再開したばかりで少し緊張していた。
気持ちはそちらの方に行っていて、正直なところ義両親との話には集中できていなかった。
だから、早く切って欲しいのになかなか話が終わらず・・・。
「明日、今後どのようにしていくのか計画を持ってきて」
と指示され、思わずため息が出た。
それを持って行ったところで、どうせ足りないとか文句を言うのだろう。
多分、何をやっても気に入らないのだ。
子どもの親権を私が持つ可能性が高くなったから。
応援してとは言わないが温かく見守って欲しかった。
全てきちんと終われば、また会える日だってあるかもしれないのに。
それを潰しているのは他ならぬ夫や義両親なのだということを、本人たちは気づいてすらいなかった。
自分たちだけが正しいと信じ、延々と攻撃し続けてくるという現実。
もうがっかりすることには慣れた。
でも、子どもを奪われるのではないかという不安には慣れなくて。
この頃は頻繁に夢に見てしまうくらい怯えていた。