二人だけの運動会
周りは賑やかに応援しているのに、我が家は私だけ。お昼も二人。
仕方がないことだけど。
ポツンと取り残されたような気持ちになった。
多分、子どもも同じだったと思う。
だから、お友達に誘われると嬉しそうだった。
「シートをつなげて一緒にお昼を食べようよ」
と言われ、
「ママ、一緒に食べても良い?」
といつも私に聞きに来た。
「良いに決まってるじゃん!」
そう答えると子どもの顔がパアッと輝いた。
普通なら、『今日は○○ちゃんと食べる~』という感じなんだろうな。
でも、うちでは必ずお伺いを立ててから返事をする。
どうして園児がこんなにも気を遣うのかというと・・・。
やはり夫の影響だと思う。
夫は常に自分が一番なので、子どもに対しても『俺に気を使え』という態度を取る。
それに気付かずに何かしてしまうと手が付けられないほど怒るので、二人ともとても神経質になった。
私は大人だからいつも気を張って何とか地雷を回避できる。
だけど、子どもははしゃいだり何かに夢中になった時、ついつい忘れてしまい失敗した。
その失敗した時の記憶が強烈だったのだろう。
いつしか反射的に相手の顔色を伺うようになった。
威張り散らす夫なら運動会に来ない方がマシ
『二人は寂しい』とは言っても夫が来るよりはマシ。
機嫌がすぐに悪くなって威張り散らされると、どうしたら良いかが分からなくなる。
周りに人がたくさんいる時には尚更だ。
皆の手前、夫は外向けには良い顔をするのだが。
内心怒っている時には、私たちにだけ分かるような怒りのシグナルを発する。
そして私たちはすぐに気づいてしまう。
これが恐怖による支配というやつか。
だから、一方で『ちょっと寂しいな』と思いつつも、もう一方では『快適だな』とも感じていた。
あー今日は自由だ。
最初からそんな気持ちで臨んだこともある。
そういう時は貴重な自由時間を目いっぱい満喫しようと考えている。
それなのに、夫がわざわざやってきたのを見つけた時の落胆・・・。
こんな日さえ自由になれないのか、と心底ガッカリした。
夫の方は、『来てやった』という感じで偉そうにしていて、それが尚更腹立たしかった。
来てほしくなんかなかったんだけどね。
心の中で悪態をつきつつ、『来たんだ~』とご機嫌取りのために声をかけていた。
周りの保護者もレアキャラの夫を見つけると、
「(子ども)ちゃん、今日はパパが来てくれて良かったね!」
と声を掛けてくれた。
まぁ、そう言うよね。
だけど、言われた子どもはよく分からない表情で「・・・うん」と答えるだけだった。
これでも子どもなりに気を使っている。
大喜びなんてできないけど、『嬉しくないよ』なんて言えないし。
夫が登場した後は私の気持ちもズーンと沈んで、せっかくの競技も楽しむ余裕がなくなった。
疲れて帰った後も地獄
運動会から帰り、お弁当の残りを処分していると、夫が背後から近づいて来て
「ったく!何で全部食わせねーんだよ!」
と難癖をつけてきた。
そんなこと言われたって、子どもはお友達と遊ぶのに夢中だったんだから。
それに、会場では自分だって『食べたい分だけ食べれば良いよ』なんて言っていたではないか。
それを聞いた周りの保護者が『優しい~』と黄色い声をあげた。
それが帰ってきた途端にこれか・・・。
言うことがコロコロと変わるものだから、子どもも戸惑っているように見えた。
帰宅後に、体力的な面と気を使ったことによる疲労ですぐに動くことができなかった時、少しだけ休憩を取っていたらそれにも難癖をつけられた。
「座ってねーで、やることやっちまえよ!」
と怒鳴られたりしたのだが、疲労困憊の状態で怒られるのは非常に堪えた。
これ以上機嫌が悪くなると厄介だからと、またすぐに立ち上がって洗い物をしたり洗濯機を回したり。
一通りのことが済んでやっと休憩できると思ったら、
「飯は?!」
の声が飛んできた。
何もしない夫に何故ここまで言われなければならないのだろうか。
子どもだって汚れ物を運んだりして手伝ってくれるのに。
夫はこういう時すぐに横になっていた。
私と違って普段会わない人たちに会うから疲れるのだという。
夫が運動会に来た時のパターンは大体こんな感じで、幸せな思い出など一つも無い。
ただひたすら息苦しかった。
運動会という大事なイベントで子どもに幸せな思い出を作ってあげられなかったことが未だに悔やまれる。