早速、携帯にはメッセージが・・・
家に着き、こっそり紙袋から携帯を取り出した。とりあえず電源を入れようとしたら入ったままだった。
しかも、LINEにはメッセージが届いていて。
私は恐る恐るそれを確認した。
読むとしても、既読はつけたくない。
だから、通知から確認することにした。
内容は相変わらず独りよがりなもので、
「連絡してね」
などというメッセージを送ってきていた。
受け取った時には『子どもの方から一言送ってもらえるように伝えてくれ』と言われていたはず。
それを待ちきれなかったのか、早速自分から送ってきていた。
何か物凄く勘違いしているようだが、このプレゼントは決して喜ばれるものではない。
そもそも、あんな父親からの贈り物など全て嫌がられる対象だ。
その中でも携帯は別格。
もっとも拒絶したいものの一つだった。
そんなことも分からずに、勝手に選んで勝手に押し付けて・・・。
どこまでも自己中心的な人だと思った。
子どもは私の動向を逐一気にしていて、帰宅してからずっと
「ママ、どうしたの?」
と何度も聞いてきた。
「何でも無いよ」
と答えつつ、この件をひた隠しにした。
受け取った紙袋は取り合えず見えない場所に隠し、今後の対応を考えることに。
気が重かったけれど放置するわけにもいかなかった。
かと言って、子どもに
「これ、パパからのプレゼントの携帯だよ。連絡取りたいんだって」
と言うわけにもいかず。
本当に困ってしまった。
この件以外にも、夫には終始困らされっ放しだった。
離婚すると言ったり、しないと言ったり。
家を出ると言った直後に『事情が変わって無理だ』と覆されたり。
親権を譲ると言いながら、徹底的に争うと宣言されたり。
よくもこんなにコロコロと言うことが変わるものだと呆れるほどだった。
常に一貫していたのは『俺は何も悪くない』ということだった。
自分は悪くないのに、周りのせいでこんな目に遭っている。
いつもそんな態度だった。
夫からの催促
携帯をどうするのか。
どのような選択をしても何かしらの影響が出そうで決められずにいたら、夫から催促が入った。
早く渡せ、と。
携帯だと分かった時点で、初めから渡すつもりなんて無かった。
私が悩んでいたのは、どうやって夫を納得させるかであって。
子どもには見せないという点はずっと変わらなかった。
だから、急かされた時の気持ちは言い訳を考える時間が足りないことへの焦燥感だけだった。
もう少し待っていてくれれば、納得させられるような理由をじっくりと考えたのに。
急かされたことにより、雑な言い訳を発してしまいそうになった。
夫は自分が何かを求めている時にそれが得られないと、しつこい位に促してくる。
そうやってプレッシャーを掛けたら余計に遅れるよ、ということでも我慢できない。
携帯のことは夫だけでなく義両親の願いでもあったから、いつも以上にうるさかった。
うるさすぎて本当に他のことを何も考えられなくなるくらいに連絡がきた。
逐一チェックしていた私も段々と疲れてしまい、数時間後には放置することに・・・。
それはそれで怖いのだけれど。
あの場合には他に手が無かった。
放置したと言っても頭の片隅には常にあり、ずっと考えていて心は休まらない状態。
どうにかこの事態が収まって欲しいという他力本願なモードになっていた。
そんな私に更なる試練が訪れた。
義両親から、お義兄さんの離婚が正式に決まりそうだとの報告を受けたのだ。
それでは夫が義実家に帰るチャンスが無くなってしまったではないか・・・。
八方ふさがりとは、まさにこのこと。
夜になり、携帯も大分大人しくなったので『今日はもう来ないかな』と少しホッとしたところに来た連絡で。
確認したら義両親だったから、ついつい気を緩めてしまった。
それが、まさかそんな話になっているなんて。
その日は結局眠れないまま翌朝を迎えた。