離婚を回避したい夫
既に離婚に向けて動き出していたのに。夫はまだ回避できる道があると思っているようだった。
親権や財産について話し合ったのは何だったのか。
これでうやむやにされたらいけないので、私の方はこのまま推し進めるつもりでいた。
正式な文書にして、次に話し合う時に押印してもらって。
2部作ってお互いが持っているようにしよう。
そんな感じで着々と準備をした。
あの話し合いの日。
あれが私の運命の分岐点だったように思う。
あのタイミングで子どもを取り戻せなければ一緒に暮らせる日はやってこなかったかもしれない。
実は私の中ではその日に勝負をかけることは決めていた。
でも、当時お世話になっていた先輩にもその話はしなかった。
いつも話を聞いてくれて、かなり心配もかけてしまったから。
まだ確定事項でもない話をすることはできないと思った。
それに、上手くいかなかったらがっかりさせるだろう。
そういう思いもあって言えなかった。
あの日は、子どもを連れて帰ることが決まった直後に連絡を入れた。
すぐに反応があり、まるで自分のことのようにとても喜んでくれた。
そこからまたしばらく3人での生活が始まったのだけれど。
再び連れ去られることを恐れて、文書にその旨も記した。
押印する時もかなり渋ってたなぁ~。
きちんと話し合って決めたことでも、後で反故にする気満々だったということだ。
向こうがその調子なので、色んなパターンを想定しなければならなかった。
予想外のことが起きたからと言って、【想定外】では済まされないのだ。
無職が直接の原因ではないのに
離婚の話が持ち上がったのは無職だからだ、と思い込んでいた夫。
「そろそろ仕事を再開するから」
と突然言ってきた。
【次回はいよいよ、より詳細な離婚の条件を詰めよう】というタイミングだった。
働くかどうかは本人が決めれば良い。
正直、どちらでも良いと思っていた。
夫は宣言することでこの流れを変えたかったのかもしれないが。
私の方は、このまま進めたかった。
それに、何年も働けなかった人が急に働けるようになるというのも腑に落ちなかった。
どういうこと?と引っ掛かっていて、夫の本心をはかりかねた。
ただ、よくよく考えてみると仕事を再開してもらうのは悪い話ではない。
離婚後に養育費を貰うためにはその方が良い。
そんな考えが浮かんできて、
「良いんじゃない?応援するよ」
と伝えた。
ああいうタイプの人に、これは禁句だった。
もっと慎重に考えて伝えなければならなかったのだ、ということを後から思い知ることになった。
【応援】という言葉から勝手に色んなことを連想した夫。
その頭の中ではある答えができ上ってしまった。
仕事再開 → 応援を受ける → 関係改善 → 離婚取り止め → 元通り
普通はそんな風に考えないでしょう?という常識は通用しない。
彼らは自分に都合の良いストーリーに仕立て上げるのが得意なのだから。
夫がそんなことを計画しているとは露知らず。
『早く決まれば良いなぁ』なんて呑気に考えていた。