夫を想う気持ちはもう残っていない
あの日の話し合いで分かったことがある。それは『もう夫のことが完全に嫌いなんだ』ということだった。
それまでは、嫌いと言いつつもグダグダと考えていた。
一緒に居た頃の思い出もあるし、子どもに優しくしてくれたこともあった。
働いていた時には頼りになった。
あのまま夫の体調が悪くならなければ、そこそこ幸せに暮らしていけたのではないか。
滅多にない幸せな時を想い出しては、そんな風に惜しんだ。
そうやって過去の色んなことを掘り返すのは意味が無いのだと思う。
良い時があったとしても、現状は苦しめられるばかりなのだから。
それに、幸せだと感じていたことも実はそうでも無かった。
三人で過ごす時間に楽しみや喜びを見出そうと必死だった私は、ごく普通のことでも大げさに感動した。
そうしなければ、やっていられなかったというのもあるが。
それ以上に『大丈夫。私たちはこのままやっていける』と思いたかった。
そう思い込まないと崩れて跡形も無くなってしまいそうで。
必死にしがみついていたのだ。
その結果がこれだ。
夫は私が何でも許してくれると思うようになり、モラハラは更に悪化していった。
虐待も止めることができなくて苦しいことばかり。
そんな日々を思うと、夫と離れられることがこの上ない喜びだと気づいた。
その日、目の前に座る夫に対し、情のようなものも湧かなかった。
『あぁ。この人のこと好きじゃないな』とはっきりと自覚しただけ。
好きじゃないというか嫌い。
こんなに嫌いなのに一緒に暮らせるわけがない、と思った。
自分の気持ちにしか興味がない夫
私は思っていることが顔に出てしまう。
隠そうとしても上手く隠すことができないので、何を考えているのかすぐに悟られてしまうことが多かった。
夫との生活で大分上手く隠せるようになったけれど。
嫌だなとか嫌いだとかの感情はだだ漏れていたと思う。
普通ならそういう雰囲気を察知すれば気になるものだ。
でも、夫の場合は私の気持ちなどどうでも良いようだった。
嫌がる私に対し、
「俺は今の所、復縁の方向しか考えられない」
と言い切った。
「離婚はいつでもできるんだから。まずは復縁の方向で話し合いたい」
と言われたって受け入れることができず困ってしまった。
どうせ本心は見抜かれているのだろうし、こちらも正直に
「私は離婚しか考えられない。もう一緒に暮らすのは無理だと思う」
と伝えてみたが、『まずは俺の話を聞け』という感じでスルーされた。
スタートからこのように対立してしまったので、Nは困って
「えーと。どうしようか」
と私たちの顔を交互に見て、
「とりあえず、両方の可能性を探ってみようか」
と提案してきた。
夫は終始イライラしていて、ずっと貧乏ゆすりをしながらこちらを睨みつけてきた。
話し合おうという態度では無かった。
そんな夫の態度を見て、注意してくれたN。
私が言ったら多分烈火のごとく怒ったと思うのだが、相手がNだったので夫も
「あー、悪い。そうだよな」
と素直に聞いていた。
こういうのを一つとっても強く自覚してしまう。
あー、やっぱり私の扱いって酷いんだな、と。
愛情なんて全くないのだろう。
それなのに、なぜ私たちを手元に置いておきたいのかが不思議で仕方がなかった。