正直に言うように詰め寄られて
夫は怒っていた。「俺に内緒で金なんて受け取りやがって!」
端的に言うならば、そういう感じだった。
一緒に居るお義父さんやお義母さんに聞けば良いのに。
わざわざこちらに、
「全部でいくら受け取ったのか教えてください」
と送ってきた。
本当に意地が悪い。
私が答えにくいことを分かっていて送ってくるのだから、質が悪いとしか言いようがない。
あちらはあちらで、きっとお義母さんあたりが詰め寄られたはずだ。
それぞれに聞き取って答え合わせでもするつもりだったのではないだろうか。
そんな夫のことが心の底から怖いと思った。
私は怯えながらも腹を立てているという訳の分からない状態でメッセージを読んだ。
援助の件はお義母さんの方から声を掛けてくれたのだが。
それがどのように伝わっているのかも不安だった。
暴れそうな息子を前に、お義母さんが本当のことを言えるだろうか。
それとも、最初から私を悪者にしたい夫がそういう部分をスルーしたかな。
状況がよく分からなくて、対応を考えあぐねていた。
お義母さんに連絡してみようかとも思った。
でも、もしかしたら目の前に夫が居るかもしれない。
裏でこそこそと連絡を取っていることがバレたら、それこそ怒らせてしまう。
そんな想像をしたら義両親に確認することもできず、成す術が無かった。
夫からの質問にもあったが、いくら援助を受けたのかと聞かれたら家賃1か月分だ。
0.5か月分を2回受け取って、1か月分の援助をしてもらった。
それを返還しろと急に言われても困ってしまった。
ほんの少し余裕が出たタイミングで、これまで買えなかった学用品などを買ったから。
夫ならそういう事情も無視して、
「そちらの都合でしょう?自分で何とかしてください」
と言うんだろうなと思った。
1か月分の援助を受けたことを正直に伝えた
しばらく夫はあの部屋に住み続けるつもりなのに、2回援助してもらったところですぐに知られてしまった。
しかも、そのことにより夫が激怒しているという最悪の状況で。
これからの家賃をどうしよう、というのと。
怒りを爆発させている夫への対処はどうしたら良いのか、というのと。
一気に窮地に追い込まれた。
困って困って、だけど何もできずにいた頃、お義母さんから電話が掛かってきた。
お義母さんの近くに夫が居ないことを確認し、
「家賃の半分を助けて頂いていること、知られてしまったみたいです」
と一応報告した。
やはりお義母さんは既に知っていて、そのことで掛けてきたようだった。
「そうなのよ。あの子は『返してもらえ』と言うんだけど、返さなくていいわよ」
と言ってくれた。
大変ありがたいお話だが、それでは夫が納得しない。
そのあたりをどうするつもりなのかと質問してみたら、
「『返した』って話を合わせておけば良いのよ」
と軽い感じで言われた。
この言葉を聞いて、私は考え込んでしまった。
そんなんで夫が納得するわけがない。
恐らく追及の手を緩めないだろうし、嘘をつき続ければいつかボロが出る。
そうなった時に騙し通せる自信が無かった。
もう少し待てばボーナスが入るから、それで返してしまおうか。
でも、そのお金は今後のために残しておきたい。
こんな感じで迷っているうちに、時間だけが過ぎて行った。
1週間が経過した頃、夫からメッセージが届いた。
『この口座に振り込んでください』という内容で。
確認してみると、指定されたのは夫の口座だった。