寝不足のまま朝を迎え・・・
結局、眠れないまま朝を迎えた。夫から子どもへのプレゼントは隠したまま。
何も解決できていなかった。
一番大事なのは子どもに気づかれないようにすることだ。
そして、夫を上手く納得させること。
言葉にすると簡単そうに思えるが、実際にはとても難しかった。
先輩には前日にある程度は報告していた。
報告というか相談したんだけど、事もなげに
「送り返すことはできないの?」
と言われた。
それができるならそうしたい。
でも、そんなことをしたら夫が激怒することは簡単に想像できた。
そうしたら、私たちを匿っている先輩にも影響が及ぶかもしれない。
子どもだって安全では居られない。
小学校は以前と変わらないところに通っていたため、行き帰りの不安もあった。
それを伝えたところ、
「やっぱり難しいんだね。色々と」
という反応だったので、夫のような人が周りに居ない人にはピンと来ないのだということを悟った。
多分、私だって夫と出会っていなかったらそんな酷い人が居るなんて思わずにいただろう。
こんな話を聞いたって、『大袈裟だな』と思ったかもしれない。
でも、当事者になってみて、一つでも選択を間違えると恐ろしい結果が待っているということが痛いほど分かった。
後々のことも考えると、やはり夫に返すのは実質的に不可能だ。
そうすると、あとは子どもが連絡を取り合えない理由を探すしかないのか。
情けないことに私の方も恐怖心の方が勝ってしまって頭が働かなかった。
でも、一生懸命考えて考えて一つの答えを出した。
やはり、虐待のことを出すしかない。
これは、『虐待された子どもが、離れてすぐにその相手を赦すことができますか?』っていう話だ。
私は無理だと思ったので、『後からよくよく考えて渡せないと思った』という体で話すことにした。
「無理やり渡しても逆効果になるよ」と説得
早速夫に
「虐待による心の傷が心配で渡せていない」
と伝えたところ、
「もうだいぶ経ってるのに?」
という反応が返ってきた。
既に夫の中では過去のことになっていることにとても驚いた。
やられた側はずっと忘れられないのに。
やった側は簡単に忘れてしまうんだね。
信じられないような気持ちで夫の言い分を聞いていたのだが、
「お前もそう思うだろ?」
と同意を求められて、咄嗟に
「まだ、たったの数か月だよ。それに、そんな簡単に過去のことにはできないでしょ」
と言ってしまった。
夫のことは怖いけれど、言うべきことは言わなければならない。
これは、離れてみて改めて実感したことの一つだ。
怖いからといって逃げ続けていたら、いつまで経っても本当の気持ちが伝わらない。
そうすると、相手は都合良く解釈するし、期待もしてしまうのだ。
もし目の前に夫が居たとしたら足がすくんで体が震え、言いたいことの10分の1も言えなかっただろう。
だけど、その時は目の前に居るわけではなかったから。
思い切って本心をストレートに伝えた方が良いと思い、『今でも恐怖の対象でしかないのだから無理』だと説得した。
余談だが、私は家の外に出て電話をしていた。
日曜日で子どもが家に居るのに、聞かれてしまったら困ると思ったからだ。
幸い先輩が上手くごまかしてくれて、私はスーパーに買い出しに行くと言って出かけられた。
周りには知らない人だけ。
声のトーンなども気にせず話すことができたのは良かった。
途中、怒ったり泣き言を言ったりしていた夫。
なかなか納得してくれないものだから数十分も話す羽目になった。