夫に内緒で離婚届を準備
仕事から帰ると嫌味を言われたり怒鳴られたり、無視をされることも多かった。暗い雰囲気の中、何とか状況を変えなければと話しかけると舌打ちされた。
こんなんじゃ一緒に居る意味無いや。
早く離れたいと思っていたけど、それすら言い出せない雰囲気だった。
夫が怖いという気持ちと見捨てたら可哀そうだという両方の気持ちがあった。
見捨てたら夫は生きていけないのではないかという思いも決断の邪魔をした。
大の大人なんだから離婚したって何とかなるとは思うけど・・・。
一歩踏み出そうとすると何故かいつも勘づかれてしまう。
それで脅しのようなことを言われると怖くて動けなくなった。
その頃の子どもがどう思っていたのかというと、
「パパのことは嫌いじゃない」
と言っていた。
当時の私はその言葉を真に受けてしまったのだが、本心ではなかった。
では、なぜそんな言い方をしたのか。
それは言ったことを夫に知られるのを恐れたからだ。
嫌いだなんて言ってしまったら、それまで以上に厳しく接するはずだ。
当時でさえ我慢できないレベルだったのに、それ以上だなんて考えただけでも恐ろしいと思ってしまったそうだ。
これに関しては私にも本心を隠していた。
何だか信用されていなくてショックだったけど。
あの状況下では誰も信用できなかったというのも理解できる。
うちの両親とはなかなか連絡を取れず、義両親は息子の顔色を見ながら対応していた。
真正面から反論できる人など居なかった。
日々苦しくて辛くて、このまま何もせず時間だけが経過していくことに我慢ができなくなって。
こっそり離婚届を用意することにした。
もちろん、スムーズに離婚できるとは思っていなかった。
だけど、とりあえず離婚届だけでも用意しようと決めた。
実は離婚するまでに何度か離婚届をもらいに行っている。
夫に知られたらいけないから、タンスにしまったりバッグに潜ませたり。
その時々で隠し場所を変えた。
見つかったら大変なことになるから、それだけは避けたかった。
職場のお昼休みに役所へ
職場のお昼休憩は1時間。
役所は近いので、歩いて往復しても10分かからないくらいだ。
用紙をもらうだけならすぐに済むから、お昼を早めに切り上げてもらいに行っても十分に間に合うと思った。
実際に時間的には十分に間に合った。
ただ、気持ち的に落ち着かなくて、いつもなら30分位かけて食べるのに10分以内で食べ終えてしまった。
ああいう時って何だかソワソワしてしまう。
とてつもなく重要な任務をこなす時のような・・・。
まあ私にとっては最重要課題だったんだけど。
取ってきた離婚届けは会社に保管した。
会社のデスクには鍵がかかるので、他の人に見られる心配もない。
以前手に入れた時に自宅のタンスにしまったら、ひょんなことからバレてしまった。
あの時の焦りは言葉では言い表すことができない。
本気でもう終わりだ!と思った。
それからは、もう二度と失敗してはいけないのだと肝に銘じた。
自宅に保管するといつ見られてしまうか分からないから会社に置いておくのが一番安全だ。
そう思って厳重に引き出しの奥にしまいながらふと向かいの席を見ると、同僚が楽しそうに家族の話をしていた。
その瞬間、私には持てなかったものを持っている同僚のことが羨ましくなった。
それと同時に自分の置かれた状況を再認識してしまった。
家が辛くて夫と離れるためにコソコソ動く私とはあまりにも対照的に思えた。