モラハラ夫の執着
一緒に居た頃はあんなに子どもを虐めてたくせに。離れた途端、『大事だ』と連呼していた。
いや、絶対にそんなはずはない。
大切な人をあれほど傷つけるなんてこと、あるはずがない。
そう伝えても、納得できない様子だった。
そもそも、夫には虐待した自覚が無い。
あれは教育だった、という言葉も本人的には嘘ではないのだと思う。
でも、常識から考えてあれは虐待だった。
日常生活や勉強のことに関して物凄いプレッシャーをかけていた。
元々優しい子なので、プレッシャーをかけられればかけられるほどそれに応えようとしてしまった。
それで追い詰められた。
言われても言われてもできなくて、また怒られる。
永遠にそんなことの繰り返しで、私が口を挟もうとしても一切聞き入れてもらえなかった。
『お前なんかに何が分かる!』
それが夫の口癖だ。
私のことはバカにしても良い。
でも、子どものことは虐めないで欲しかった。
子ども自身も気づかないうちにストレスによって正常な思考が阻害された。
次第に簡単な問題も解けなくなり、テストでは凡ミスが増えた。
書き取りも事前にこれでもかというほど勉強していくのに本番になるとできない。
それで夫が更に怒って
「お前みたいなのは人の何十倍も努力して初めて普通になれるんだ」
と子どもをなじった。
これが一度や二度ではない。
何度も繰り返されたこの言葉は、子どもの自尊心を深く傷つけた。
その結果、自己肯定感も低くなり『自分はダメな人間なんだ』と思い込むように・・・。
一度そう思ってしまうと考えを改めるのはなかなか難しい。
ポジティブな言葉を投げかけても『でも』とか『だって』と答えるばかり。
そんな子どもの意識を変えるために、日々前向きな言葉で接している。
会いたいと言われても
離れてから、夫は頻繁に連絡してきた。
一人離れて暮らすことになって寂しいのだという同情心もあったけど。
あまりにも回数が多い。
こう頻繁に連絡されるとやっぱりストレスになる。
だからやんわりと回数を減らしてもらえるように伝えたが、
「こっちは我慢してるんだ」
といつものごとく正当化された。
一度電話に出てしまうとなかなか切ってくれないこともストレスになった。
こちらが何をしていてもお構いなしで延々と自分の話をし続ける。
やっぱり人ってそう簡単には変わらないんだなぁと思った。
本当は迷惑だと感じていたけど、そんなことを言ったらまた怒るだろう。
怒ったら何をするか分からないから、できるだけ穏便に済ませようとした。
最初は私と普通に電話をしていても、少し経つと
「(子ども)は居る?」
と聞いてくるのもいつものことだ。
それで、
「居るけど?」
と答えると
「ちょっとだけ代って」
と言ってくる。
こんなに普通に電話を代って欲しいと言ってくる神経も理解できない。
子どもだってあなたと話したいはずがないじゃない。
本気でそれが分からないのなら、もう何を言っても無駄だと思った。
夫はしつこいので子どもに聞いてくれと何度も言われたが、確認することさえためらわれた。
だから、いつも色んな理由をつけて断った。
実際に子どもに聞いてみたこともあるが、その拒絶反応は凄かった。
直前までは穏やかな顔で楽しそうに遊んでいたのに、途端に顔が強張って無口になった。
ほらね。
こんなに嫌われてるんだよ。
私だって夫からの着信があると緊張から鼓動が早くなって手が震えてしまう。
呼吸が浅くなっているのが自分でも分かるし、声は震えていると思う。
子どもも同じみたいで、電話があるとおかしな呼吸になって肩で息をしていた。
異変に気付き、慌てて背中をさすったのだが、手の平に子どものドキドキが伝わってきた。
怖いんだよね。分かるよ。
ママだって怖くて本当は逃げ出したいんだ。
電話が来ると子どもがおかしくなることが多いので、『代って』と言われても確認するのは止めようと思った。
なるべく一人の時に出るようにして、目の前でのやり取りも控えた。
本当は私も出たくなかったのだが、全く出ないわけにもいかない。
連絡がつかないと実家にまで電話をするので、迷惑をかけないように時々は対応した。