ペナルティばかり与える
夫は子どもにペナルティを与えるのが好きだった。日々の生活には細かなルールがあり、それは全て夫の作ったマイルールだったのだが。
子どもや私にもそれを守るように強要した。
だけど、いつも同じようにいくわけではない。
突発的なことも起こるし、いつも通りにいかないこともある。
何か特別な事情があったら臨機応変に対応すれば良いのに夫は例外を認めなかった。
破ったことに対して【これでもか】という位に責めてきて、それだけでもかなり精神的にくるものがあった。
だが攻撃はそれだけでは終わらず、更にペナルティーが与えられた。
私に対しては、例えば夜PCをいじるのを禁止とかテレビを見てはいけないとか、そういうくだらないことばかり。
元々ほとんど自由のない生活だったので禁止できることも少なかったのだろう。
子どもに対しては、おもちゃで遊んだりDVDを観るのを禁止とかママと買い物に行ってはいけないとか。
こちらも基本的にはくだらないのだが、時には勉強量を増やすこともあった。
元々いっぱいいっぱいなのに、それに加えてペナルティ分が課されるなんて。
これではいくら従順な子どもでも参ってしまう。
小学生にもなっていない頃からそんな感じだったので、夫が怒った時には何を言われるだろうかと二人とも身構えた。
私たちに対して罰を与えるというからには自分にもさぞかし厳しいのだろうと思われるかもしれない。
だが、決してそんなことはない。
周りへのポーズとして自分を責めるような態度を取るが、実際に自身が不利益を被るような状況は作らない。
『俺はこんなに反省しているんだ』というアピールだけで終わっていた。
しかも、そのやり方がずるくて・・・。
わざわざ私の目の前で自分の足とか頭とかを拳で叩きながら
「あー!!!もう俺は本当にダメだ!!!」
と叫んでいた。
恐ろしいやら鬱陶しいやらで固まっているとチラチラこちらを見てきて、私が
「その件はもう良いんじゃない?」
と言うのを待っていた。
これだと夫が反省しているから私が許したような感じになってしまい、それ以上は追求できない。
いつもこの手で自分の件はうやむやに終わらせていた。
クリスマス時期のペナルティは・・・
子どもは保育園時代にはまだサンタさんを信じていた。
だから12月に入ると手紙を書いていた。
と言ってもまだ字が書けなかったので、子どもが言うことを代筆してあげた。
翌日ポストの前まで行き、いっしょに投函(するふり)。
本当に出したら大変だからね。
サンタさんにもお手紙を出したし、あとはケーキの予約をしなくちゃね。
そんな話をしながら帰った日。
夫が晩御飯の後に急にキレ出して、
「もうお前にはウンザリだ!」
と叫び出した。
こうなるともう止められない。
だから、二人ともただただじっとその様子を怯えながら見つめていた。
わざと何も言わないのではなく恐怖で声を発することができないのに。
夫はそれも気に入らない。
「何か言い訳してみろよ!」
と理不尽なことを言い始めて、子どもににじり寄った。
そんなことを言われたって、子どもだってどう答えたら良いか分からない。
普通は怒らないようなことで怒るんだから、実際のところ何がいけないのかも分かってない状況だ。
大人の私がそうなのだから、子どもなんてもっと分からないに違いない。
それなのに夫は
「分からないんなら分からせねーとな!」
とキレまくって、急に
「今年はもうクリスマスも無しだ!」
と宣言した。
「ケーキなんて買うなよ」
と私にも釘を刺し、ツリーを出す準備をしていたのにそのままゴミ袋に詰められた。
何も捨てることは無いだろうに、と思いながら悲しい気持ちでその片づけをしていたら、
「まさか捨てずに隠しておくつもりじゃねーだろーな」
とけん制してくる始末。
勿体ないけど、どうせ残しておこうとしたって見つけられて捨てられるんだから捨てますよ。
そう思いながらふと子どもの方に目をやったら、夫に背中を向けたままポロポロと涙をこぼしていた。
その日、朝起きた時から楽しみにしていたのに、また理不尽にも奪われてしまった。
その辛さが手に取るように分かり、夫への嫌悪感は増すばかりだった。