家に戻ってから迎えた、最初の夏休み
家に戻って数か月。私たちは、初めての夏を迎えた。
朝から蒸し暑い日も多く、
本当はずっとエアコンをつけていたい。
でも、光熱費が心配で、
つい我慢してしまう。
それでも日中は危険な暑さになる。
だから子どもには、
「昼間はちゃんとエアコンつけてね」
そう伝えて、仕事へ向かっていた。
こんなふうに節約しながら、
なんとか家計を回していた我が家。
でも実は、
夫がいた頃も大して変わらなかった。
どんなに暑い日でも、
夫の許可がないと
エアコンは使えなかった。
しかもその許可は、
夫の機嫌次第。
彼の言い分はいつも同じだった。
「お前の稼ぎが悪いからだ」
だから自分は、
暑さを我慢させられている。
そんなふうに、
いつも被害者のように振る舞っていた。
怒鳴る。
責める。
不機嫌になる。
私は毎日、
怒らせないよう必死だった。
どうしたら機嫌が良くなるのか。
どうしたら怒鳴られずに済むのか。
そんなことばかり考えていた。
暴言を吐かれても、
じっと耐える。
耐えていれば、
いつか嵐は過ぎるから。
……もっとも、
その嵐は何度も繰り返し来るのだけれど。
あの頃も。
二人暮らしになってからも。
「我慢している」という意味では、
同じだったのかもしれない。
だけど、
抑えつけられていたあの頃とは違う。
気持ちは、ずっと楽だった。
暑いねって笑える。
お風呂上がりにアイスを食べても、
怒鳴る人はいない。
自由って、いい。
私たちはしみじみ、
そんなことを思っていた。
留守番中の子どもを守るために
ただ、
ひとつ大きな不安があった。
私の仕事中に、
夫や義両親が来ること。
子どもだけだと知ったら、
きっと居座る。
そんな気がしていた。
高学年の子どもを、
無理やり連れて行くことはないと思う。
でも。
強く言われたり、
同情を誘うようなことを言われたり。
そうやって、
子どもの気持ちを動かすことはできる。
あの人たちは、
それをよく分かっている人たちだった。
夏休み直前。
私は子どもと一緒に、
どう過ごすかを何度も話し合った。
塾は短時間だけ。
それ以外は、
どうしても家にいる時間が長くなる。
友だちと遊んでも、
昼には帰ってくる。
どう考えても、
一人になる時間ができてしまう。
「チェーンをしたら大丈夫かな」
そう言うと、子どもは、
「ずっとインターホン鳴らされたり、
大声で呼ばれそう……」
と、不安そうに言った。
そしてその夏。
私たちがどうやって乗り切ったかというと――。
近くの図書館に通い詰めた。
冷房もある。
軽食を食べられる場所もある。
朝、お弁当と水筒を用意しておけば、
お金もほとんどかからない。
家から遠すぎない、
その図書館が。
夏休みの子どもの居場所になった。
