夫の元へ。送り返した荷物
ここにも何度か書いているが、夫は非常に狡猾だ。
言動のひとつひとつが、
まるで計算されているように感じる。
だから、正面からやりあうのが
とても難しい。
もともと私は、
人とぶつかるタイプではない。
普通に生活していれば、
強く怒ることもほとんどなかった。
けれど夫からは、
一方的に怒りをぶつけられ、
怒鳴られるばかりだった。
どう闘えばいいのか、
その方法すら知らなかった。
こんな私だから、
きっと扱いやすかったのだと思う。
荷物を送り返したあと、
もうひとつ、気になっていることがあった。
箱の中身は、
ざっと見た限りでは
夫の普段使いのものばかりだった。
けれど、その中に
思い出の写真が紛れていた。
なぜ入れたのか。
何を考えているのか。
その意図を読み取ろうとした。
でも――
考えれば考えるほど、怖くなった。
平常心では、いられなかった。
騙されてはいけない
あの写真に写った置物を買った時の光景を、
はっきりと思い出せた。
まだ夫への不信感も薄く、
自分は愛されているのだと
信じていた頃。
旅先で、ひとつの置物を買った。
今思えば少し微妙なそれも、
あの頃はただの楽しい思い出だった。
「ちょっと微妙じゃない?」
そんなふうに笑いながら、
話のネタとして買ったもの。
それは長い間、
家の見える場所に置かれていた。
夫が義実家に戻ったとき、
一緒に持って行ったはずなのに。
それが、なぜ。
送り返された荷物の中に
入っていたのか。
夜、眠る前に
子どもの顔を見ながら
これからのことを考えた。
あの人はきっと、
私の心を揺さぶろうとしている。
揺さぶって、
この別居を
なかったことにしようとしている。
そんな意図を込めた荷物を、
すぐに送り返したら。
彼は、どう出るだろう。
――ただでは済まない。
そう思った。
不安を抱えたまま、
その日は眠りについた。
そしてその予感は、
外れることはなかった。
あのときの夫の怒りは、凄まじかった。
ようやく落ち着き始めていた生活は、
再び崩れていった。
子どもと自分を守ることで、
精一杯の毎日になった。
