舌打ちが合図だった
子どもが幼児の頃からすでに、夫の言動には不可解な点が多かった。
次第に「何で?」と思うことも増えていった。
赤ちゃんの頃は、
想像していたより可愛がっていたし、
世話もしていたように思う。
だけど2歳を過ぎた頃から、
徐々に変わってしまった。
元々の性格に戻っただけの気もする。
それでも、幼い子ども相手に
本気で怒鳴る姿は、どう見ても異様だった。
余談だが、穏やかに見える時期でも
私へのモラハラは続いていた。
毎日チクチク責められ、
感覚はマヒしていたけれど……。
日々のすべては夫の管理下にあった、
と言っても過言ではない。
ある日。
コップの練習をしていた子どもが、
誤って飲み物をこぼしてしまった。
練習中なら、よくあることだ。
繰り返しているうちに、上手になる。
私は慌てず、
テーブルに広がった飲み物を拭き、
濡れた子どもの手も拭いた。
そのままにすれば、
濡れた手であちこち触ってしまうから。
その様子を見ていた夫が、
何も言わずに舌打ちをした。
その音に、全身が凍り付いた。
夫が「切れた」合図だ。
思わず身構え、
夫の方を振り返った。
夫の我が子への冷酷な仕打ち
舌打ちのあと、
夫は何度もため息をついた。
気づかないフリをして、
やり過ごそうとする。
この恐怖は、
体験した人にしか分からないだろう。
わざわざ近寄ってきて、
すぐそばでため息を続ける。
無視しきれなくなり、
思わず口にした。
「仕方ないよね」
直後、冷たい表情で
「仕方ないって、どういうことだ!」
と怒鳴られた。
そのままの意味だ。
まだ幼い子どもが、
拙い手つきでコップを持ち、
こぼしてしまっただけ。
遊んでいたわけではない。
だから怒らなかった。
それが「甘い」と責められ、
顔に息がかかるほどの距離で
「お前!どういうことだ!」
と詰め寄られた。
何度も言うが、
このとき子どもは、まだ2歳。
最初はキョトンとしていたが、
やがて口をへの字にし、
「うわーん」と泣き出した。
それでも、夫は止めない。
このとき、
子どもの手を叩いたこともショックだったが、
それ以上に言葉に衝撃を受けた。
「てめぇ!」
2歳児に向ける言葉だろうか。
恐怖を一瞬忘れるほど、
この一言が引っかかり、
数日間、何度も
その場面を思い出してしまった。
