気の重い訪問
義実家を訪れた日。目の前まで来ているのに、
最後の一歩が出なかった。
恐怖で足がすくんでいた。
一度、心を整えようと、
少し下がって深呼吸する。
それでも顔を上げて家を見ると、
また体がこわばる。
同じことを何度か繰り返し、
ようやく玄関の前まで進んだ。
恐る恐るインターホンを押す。
応答を待つ間、
心臓の音がうるさい。
それが余計に、
緊張を強くしていく。
じんわりと汗がにじみ、
全身が震える。
嫌な想像ばかりが浮かんだ。
インターホンを押すと、
すぐにお義母さんの声がした。
「待ってたのよ〜」
そう言って、
玄関のドアが開く。
目の前に現れたお義母さんは、
少し疲れて見えた。
うちとは違い、
玄関からすぐには部屋は見えない。
廊下の先にあるのがリビングだ。
きっとそこに、
夫とお義父さんがいる。
どんな表情で座っているのか。
怒っているのか。
それとも、
何か企んでいるのか。
ひとりで向かうのは無謀だったと、
この時点で既に後悔していた。
「冷たい」と言われても
リビングのドアを開けると、
夫とお義父さんが座っていた。
挨拶をしても、
表情は変わらない。
お義母さんだけが、
落ち着かない様子で動いている。
私にも気を使い、
「ほら、座って」
と声をかけてくれた。
促されるまま席に着く。
その瞬間、
目に飛び込んできたものがあった。
テーブルの脇に置かれた、
段ボール箱。
私が送り返した物だと、
すぐに分かった。
中身が見えていたからだ。
一番上の写真が、
はっきりとそれを示していた。
わざと、
そこに置いたのだろう。
そして夫は、
開口一番こう言った。
「それ、持って帰れよ」
この段ボールを?
手で?
思わず見つめていると、
「俺は一度送ったんだからな。
持てないなら、
宅急便でも手配しろ」
怒鳴り声が飛んできた。
その声に体が震え、
反射的に
「分かった」と言ってしまう。
すぐに後悔した。
せっかく送り返したのに。
冗談じゃない。
まだ来たばかりなのに、
やるべきことが決まった。
この荷物を、断る。
それだけのことだ。
でも、夫とお義父さんの中では、
持ち帰るのが当然になっている。
どう断るか。
私は必死に、
言葉を探していた。
