独り暮らしの不安
元々は、私たちが家を出た後一人で暮らすのが不安だからとお義父さんに来てもらった。お義父さんの都合の悪い時には代わりにお義母さんが来ていた。
だけど、お義父さんの就職によってそれができなくなった。
家計を考えるとそれ以外の選択肢は無い。
お義兄さんや夫が働けるのなら話は別だが、二人とも動く様子は無かった。
夫は一度再就職できていたし、やる気になれば働ける状態だったはず。
でも、一人になった途端、
「体調が悪くて独りで居るのがシンドイ」
とアピールしてきた。
こういうところが信用ならない。
本当に具合が悪いというのなら仕方がないが、きっとそうでは無かった。
だって、友だちと飲みに行っていたし遠出もしていたのだから。
それならば義実家に帰れば良いと思って、
「実家に戻れば?」
と言ってみたら即却下された。
お義兄さんが居るから自分の部屋が無いのだそうだ。
辛い辛いと言うけれど、生活費なんて負担してもらっていなかった。
『お前らが出て行ったのが悪い』と言われても、こっちが文句を言いたいくらいだった。
だけど一言でも何か言えば何十倍にもなって返ってくるから黙っていた。
その代わり、
「申し訳ないけど何もしてあげられない」
と伝えた。
期待されても困るから、けん制したつもりだ。
どこからか話を聞きつけた子どもが、
「パパ、一人なの?」
と質問してきた。
「そうだよ」
と答えたら複雑な表情になったので、
「もしかして可哀そうだと思ってる?」
と聞いたら首を横に振り、
「こっちに色々言ってきたらヤダなぁと思って」
と言った。
これが子どもの本心だ。
夫の元に戻る可能性なんて1mmも無いのだ。
いつの間にか友だちが集まるように・・・
心配した夫の友人たちが頻繁に集まるようになった。
一応私の借りている部屋なので、その動向は常に気にしていた。
たまり場になって夫が居心地の良さを感じてしまうと家を出ていく日も遠くなるかもしれない。
そんな不安を抱きつつも、表立った行動はできずにいた。
もし指摘したら、
「お前が何もしてくれないからだろ?」
と正当化してくるに決まっている。
非難されることが分かっているのに口を出すことなどできなかった。
お義父さんの方は仕事を始めてから少し生き生きしてきたように感じ、ホッとしていた。
やっぱり家にこもって考えるよりも外に出て気が紛らわせた方が良いのだと思う。
お給料が入り、義両親二人分の年金もある。
何とか義実家の生活は立て直されているように感じた。
夫は私のお給料も当てにしていたのだが、それは気づかないフリをした。
気付いている素振りを見せてしまったら、それこそ無視できなくなる。
だから鈍感なフリをしてやり過ごした。
それにしても、30代の息子が二人も居るのに未だに稼ぎ頭が定年後のお義父さんだなんて・・・。
正直言って大変な事態だ。
夫やお義兄さんが危機感を感じなければいけない状況で、何故か私が一番ヤキモキしていた。
自分でも損な性格だと思うのだが、そういうのを見ると放っておけない気持ちになる。
ただ、状況が状況なだけに私が動くのは得策ではないから、じっとその動向を窺がった。
結局大きな動きもないまま、春を迎えようとしていた。