結婚してからもトラブルの絶えなかった義兄夫婦
食事会の件以降、義両親は義姉のことを毛嫌いしていた。まさか本人には言わないと思うのだが、私たちの前ではよく
「あの嫁はダメだ。性格がキツすぎる」
と愚痴をこぼしていた。
確かに気の強い部分があることは否定しない。
でも、義兄だって十分に酷い態度を取っていた。
だから、あの夫婦の場合には”おあいこ”なんじゃないかと思った。
どちらか一方だけが責められるような関係ではいずれ追いつめられてしまうから。
・・・そう、我が家のように。
だけど、義両親にとっては文句も言わずせっせと夫の世話を焼くような人が良かったみたいで、義姉の話をする時にはいつも不満そうだった。
そんな状況でも、最初の頃は何とか上手くやっていた。
段々と歯車が狂い始めたのは入籍してから3カ月位が経った頃だった。
余談だが、義兄たちは結婚式をしていない。
義姉が親戚とも疎遠で呼ぶ人が居ないからと言っていたが。
そうだとしても、家族だけ集めてこじんまりとした式とか挙げなくて良いのかな、と心配した。
食事会の時に、結婚式への憧れのようなものがあると教えてくれた義姉。
あの時は酔っていたけれど、彼女の様子からは本当は式を挙げたいと思っているように見えた。
それを正直に言えれば良いんだけどね。
そういうキャラじゃなくて、『式なんて興味ない』と言ってしまうようなタイプ。
義兄の方も彼女の気持ちを慮って何かをするタイプではない。
そうすると、心の中で思っているだけでは何も伝わらない。
パッと見や第一印象とは違って、実は義姉は結構『乙女』なタイプだったと思う。
結婚に対する理想もあったようだが・・・。
相手があの義兄なので、期待していたような結婚生活は送れなかった。
喧嘩ばかりの義兄たち、そこに義両親が参戦
義兄たちの夫婦喧嘩は頻繁だった。
あまりにも頻繁過ぎて、周りは慣れてしまった。
でも本人たちは結構大変だったんだと思う。
段々とぶつかることにも疲れてしまったようだった。
やがて義兄は衝突すると実家に帰るように・・・。
義姉もそれを促すように『実家に帰れ!』と言った。
こうなると問題を解決するのが困難になる。
何か話し合いたくても相手への嫌悪感から素直になることができない。
二人は元々上手く行っていなかったけど、状況は更に悪化した。
階段を一段ずつ降りるように少しずつ少しずつ。
こういう時って、周りはどちらかの肩を持ってはいけないのだと思う。
でも、義両親は義兄の肩を持ち、義姉を非難した。
『可哀そうに』と繰り返し言って、義姉への苛立ちを隠さなかった。
「あんな人と結婚させるために一生懸命育てたんじゃない」
という言葉が、義両親の気持ちをよく表していたのだと思う。
真新しい新居にたった一人残された義姉。
毎日どんな風に過ごしていたのだろうか。
話し合いたくても義兄が実家から帰ってこない。
自分には帰る家もない。
義姉は早くに両親を亡くしていて、たった一人のお兄さんとも疎遠だった。
私は未だに
「家庭運が薄いのよ」
と寂しそうに笑っていた義姉の横顔が忘れられない。
今度こそ幸せになれると思ったに違いない。
それなのに、ずっと一人で生きてきてようやくつかんだ幸せが幻だった。
それを悟った瞬間の失望は想像を絶するものだったに違いない。
義兄にはまだ逃げる場所があるから良かったけど、義姉にはそれが無かった。
結果的に、段々と精神的に追い詰められてしまった。
その異変に気付ける人も居なく、気づいたら取り返しのつかないことになっていた。