2026年7月4日土曜日

まさか、こんな所で会うなんて…

休みボケが抜けない新学期

秋の入口。

まだ日中は暑い日もあった。

それでも夜になると、

ふっと涼しさが入り込んでくる。


夏が終わったことを、

ようやく実感する。


何とか、

乗り切った夏だった。


電気代のこともあった。

けれど、それだけじゃない。


それ以上に、

気を張り続ける毎日だった。


夫の干渉を避けること。

子どもを守ること。

それだけで手一杯だった日々。


何度か、

心臓が止まりそうな場面もあった。


それでも、

壊れるようなことは起きなかった。


どうにか、

終えた夏休み。


その間、

塾の先生方には救われた。

図書館にも、何度も逃げ込んだ。


本当に、

ありがとうございました。


休みボケした子どもは、

新学期の空気にまだ馴染めなかった。


一番の問題は、

朝、起きられないこと。


わかっていたつもりだった。

それでも、

すぐには元に戻らなかった。


少しずつ、

ズレていく生活リズム。


そのまま、

新学期に押し込まれるように始まった。


そして、もう一つ。

宿題に抜けがあった。


初日の朝。

それに気付いた。


もう、

どうにもならない時間に。


胸の奥が、

嫌な音を立てた。


私の確認不足だった。

頭の中が、

あの人のことで埋まっていたから。


子どもは、

ただ黙っていた。


そのまま、

小さくうなずいて登校していった。


帰ってきてから、

ようやく口を開いた。


「どうだった?」

「怒られた?」


少しだけ間を置いて、

子どもは首を横に振った。


何も言われなかった、と。


提出期限だけが、

静かに延ばされていた。


助かったのに、

安心しきれない。


何かが、

まだ残っている気がした。


塾の秘密が見つかった日

順調に見えていた。

最初は本当にそうだった。


私たちだけなら、

問題なんて何もなかった。


でも、

それは長くは続かなかった。


一か月ほど経った頃。


静かに、

何かが崩れた。


その日も子どもは、

いつものように塾へ向かった。


途中で、

友だちと待ち合わせ。


少し早く着いたから、

時間を持て余していた。


バッグの中を確認したり、

店の中をぼんやり眺めたり。


そのとき。


視界の端に、誰かが映った。

ガラス越しに、友だちの姿。


振り向いて、手を振る。

少しだけ笑って、また歩き出す。


何気ない時間だった。


そのまま、

塾へ向かっていった。


話していたのは、

小テストのこと。


「今日のは、ちょっと苦手かも」

「わかる。でも、あの先生、説明うまいよね」


その声は、

いつも通りだった。


だから、

気付けなかった。


後ろに、

もう一人いることに。


足音は、

確かにあったはずなのに。


間もなく、塾に着く。


その瞬間。


子どもは振り返った。


そして、

止まった。


息が、止まった。


目の前にいたのは、一番会いたくない人、

パパだった。

「……何で」


声にならない声。


返事はなく、

代わりに、問いが落ちてくる。


「お前、どこ行くんだ」


空気が、

一瞬で変わった。


塾には行っていないことにしていた。

だから、何も言えなかった。


夫は、

看板を見上げたまま言った。


「ここに通ってるのか」


その声は、

静かだったのに重かった。


以前、

突きつけられていた条件。


塾に行くなら受験しろ。

行かないなら、義実家へ行け。


選べなかった。

選ばせてももらえなかった。


だから、

「辞めたことにした」


そうするしかなかった。


あの日、

たまたまそこにいた。


その偶然がすべてを壊した。


パパの顔が、

ゆっくり変わっていく。


その変化だけが、

やけに鮮明だった。

まさか、こんな所で会うなんて…

休みボケが抜けない新学期 秋の入口。 まだ日中は暑い日もあった。 それでも夜になると、 ふっと涼しさが入り込んでくる。 夏が終わったことを、 ようやく実感する。 何とか、 乗り切った夏だった。 電気代のこともあった。 けれど、それだけじゃない。 それ以上に、 気を張り続ける毎日だ...