夫の変化
せっかく送ったお菓子も、食べてもらえない。
子どもに、
強く拒絶されている。
そんな現実を、
薄々感じ始めていた夫は、
さすがに弱気になったようだった。
将来を悲観したり、
子どもと暮らしたいと言ってみたり。
『とにかく今のままではダメだ』
そんな焦りが、
ひしひしと伝わってきた。
でも、
少し違和感もあった。
元々、
家族を傷つけたのは夫自身だ。
それなのに、
いつの間にか
自分が傷つけられた側のようになっている。
いつものことではあるけれど、
彼の中では、
一体どういう認識になっていたのだろう。
そのたびに、
私は訳が分からなくなった。
そんな状況でも、
相変わらず、
「子どもに代われ」
と要求してくる。
もちろん断った。
落ち込んでいる姿を見て、
それすらも演技なのではないかと、
疑う気持ちもあった。
それからの夫は、
目に見えて変わった。
良い夫。
良い父親。
まるで、
そんな存在になろうとしているようだった。
頻繁に電話が来ることには
困ったけれど、
突撃訪問をすることはなくなり、
私の警戒心も
少しずつ薄れていった。
モラハラや虐待をしていたことが、
嘘だったかのような変化。
「本当に同じ人なの?」
そう思ってしまうほどだった。
良い方向へ変わってくれることは、
正直、嬉しかった。
もしかしたら、
このまま変わってくれるのかもしれない。
そんな期待が、
全くなかったわけではない。
でも、
だからといって、
無かったことにはできなかった。
どれだけ夫が変わっても、
私の中で、
"離婚"への決意が
揺らぐことはなかった。
義両親の本音
夫が変わったのは、
私たちに対してだけではなかった。
義両親にも優しく接するようになり、
二人は手放しで喜んだ。
「元々優しい子だったんだよ」
「心を入れ替えたんだ」
そう言って、
夫を褒めた。
我が子を信じたい気持ちは、
よく分かる。
私だって、
同じ立場だったなら、
最後まで自分だけは信じたいと思うだろう。
時々、
嬉しそうな声で、
「今日はこんなことをしてくれた」
と報告してくれることもあった。
長い間、
苦しい時間が続いていた私たち。
だからこそ、
ようやく始まった穏やかな日々を、
素直に嬉しく感じていた。
安心して過ごせるということが、
こんなにも快適なのか。
久しぶりに、
そんな感覚を味わっていた。
電話がかかってきても、
もう怒鳴られることはない。
無理な要求を、
押し付けられることもない。
何かに怯えながら過ごさなくていい。
それだけで、
毎日は驚くほど穏やかだった。
私も子どもも、
すっかり安心していた。
でも、
そんな生活は、
長くは続かなかった。
義両親の考えが、
突然変わったのだ。
そして、
”離婚を阻止する”側へ回った。
我が子を思う気持ち。
親として、
子どもを信じたい気持ち。
その愛情が、
ようやく手に入れた穏やかな時間を、
少しずつ壊していった。
