2026年7月15日水曜日

子どもの心を追い詰めたもの

息を殺した夜

夫がほんの少しでも、

私たちに優しさを向けてくれていたなら。


未来は、

少し違っていたのかもしれない。


それでも、

夫への気持ちが

戻ることは

なかっただろう。


義両親との関係が壊れたのも、

元をたどれば、

夫の存在が大きかった。


あの頃、

夜になると電話をかけてきて、

無理やり子どもに代わらせようとした。


「今は出られない」


そう断っても、

絶対に納得しない。


断り続けると、

今度は連日のように

家へ押しかけてきた。


私たちは、

夫が来たと分かると、

息を殺して過ごした。


全身の神経を

ドアの方へ集中させ、

物音を一切立てず、

部屋の中でじっと待つ。


呼吸さえ、

気を使った。


平日の夜遅く。

家の中にいることは、

夫も分かり切っている。


明らかな居留守だった。


それでも、

そのことには触れず、

夫は訪問を続けた。


そんな日々が続き、

精神的にも限界が近づいた頃、

ふと思った。


家に来られるよりは、

電話の方がまだマシかもしれない。


そうして電話に出るようになると、

今度は別の苦しみが

私たちを襲った。


父親の言葉

渋々、

子どもに電話を代わるようになると、

夫の長電話は、

ますます酷くなった。


本来なら、

五分でも長いと思うのに、

一時間以上も

解放されない。


せめて内容を把握しようと、

スピーカーで聞くようにした。


けれど、

夫は一方的に、

自分の思いをぶつけるだけ。


子どもの気持ちなど、

まるで考えていなかった。


それどころか、


「パパは、お前が居なくて寂しい」


そう言いながら、

子どもを責めるような言葉を

繰り返した。


「もう、生きていても意味がない」


もし本当に、

夫が辛い思いをしていたとしても、

小学生にする話ではない。


ましてや、


「一緒に暮らせないのなら、

消えちゃいたい」


「お前やママのことを

一生許せないかもしれない」


そんな言葉を、

子どもに向けるべきではなかった。


そういう話をされるたびに、

子どもはうつむき、

少しずつ前かがみになっていく。


そして最後は、

小さく、

小さく、

うずくまった。


そんな子どもに向かって、

夫は言った。


「パパにこんな仕打ちをしておいて、

よく普通に生きてられるね」

子どもの心を追い詰めたもの

息を殺した夜 夫がほんの少しでも、 私たちに優しさを向けてくれていたなら。 未来は、 少し違っていたのかもしれない。 それでも、 夫への気持ちが 戻ることは なかっただろう。 義両親との関係が壊れたのも、 元をたどれば、 夫の存在が大きかった。 あの頃、 夜になると電話をかけてき...