警戒しながら帰宅
警戒しながら帰宅したその日、久しぶりに学校へ迎えに行った。
ほんの少しだけ早退して。
とてもではないが、
一人で帰らせる気にはなれなかった。
もし帰宅した時に、
まだ夫がいたら。
そんな想像をするだけで、
背筋が冷たくなる。
夫を警戒することで、
私たちの行動はどうしても制限される。
先のことを考えすぎて、
身動きが取れなくなることもあった。
それでも、
安全を優先するしかなかった。
家に着いて、
まず最初にしたのは、
ドアを開けて室内を見回すこと。
夫は鍵を持っている。
だから、鍵がかかっていたとしても、
中にいないとは限らない。
次に、部屋の中に変わった様子がないか、
一つひとつ確認して回る。
物を使われているとか、
配置が変わっているとか、
そんなことはどうでもよかった。
怖かったのは、
何か仕掛けられているのではないか、
という不安。
疑心暗鬼になっていた。
テレビで見るように、
盗聴器があるのではないか、
と思ったりもした。
何をされるか分からない。
そんな恐怖の中で、
しばらく警戒しながら過ごした。
手紙に残されたもの
帰宅してすぐ、気づいた。
テーブルの上に、手紙が置かれていた。
また、自分勝手な言い分を書いてきたのだろうか。
そんな思いと一緒に、
怒りに似た感情が込み上げる。
けれど同時に、
これだけで済んだのなら良かった、
とも思ってしまった。
恐る恐る読んでみると、
そこにあったのは主張ではなく、
どちらかといえば泣き落としだった。
繰り返されていたのは、
「パパは寂しい」
という言葉。
子どもは嫌がって読もうとせず、
結局、目を通したのは私だけだった。
手紙の中には、
ゴールデンウィークの誘いも書かれていた。
読んだ時に浮かんだのは、
「やっぱり」という気持ちだけ。
前の日、
手土産を持ってまで来た理由を考えた時、
思い当たるのはそれしかなかった。
その頃、夫の頭の中は、
ゴールデンウィークのことでいっぱいだったのだと思う。
義両親とも約束してしまったらしく、
一緒に過ごすことが前提になっていた。
断っているのに納得せず、
無理にでも進めようとしてくる。
その理由が、ようやく見えた気がした。
夜の8時になれば、また電話が来る。
その時、どう答えるか。
手紙を見た瞬間から、
私は断る理由を探し始めていた。
