2026年4月9日木曜日

出勤前の攻防

長い夜のあとに

眠れないまま、朝を迎えた。


何度も時計を確認して、

5時を見た時、

そのまま出社しようと決めた。


眠気はない。

ただ、重たい疲労感だけが残っていた。


横になったまま時間をやり過ごしていると、

カーテンの隙間から朝日が差し込んでくる。


ようやく朝が来たのだと、実感する。


長くて暗い夜が終わった。


あの恐ろしい時間に区切りをつけるような光に、

少しだけ安堵した。


子どもも、きっと眠れなかったのだと思う。


何度も寝返りを打って、

そのたびに顔を覗き込むと、

ぎゅっと目を閉じていた。


本当に眠っているなら、

こんなふうに力は入っていないはずだ。


少しでも安心させたくて、

背中をそっとさすった。


朝方になって、

ようやく眠りに落ちた様子の子ども。


起こすのは気が引けたけれど、

学校に遅れるわけにはいかない。


耳元で、小さく


「朝だよ」


と声をかけた。


夫は相変わらず、

テレビのある部屋で眠っていた。


大の字になり、

自分の上着を掛けただけの姿で。


私たちは起き上がり、

できるだけ音を立てないように、

静かに朝の支度を始めた。


家に一人で残られる不安

支度をしていると、

夫が起きた気配がした。


それを感じながら、

パンを焼き、牛乳を注ぐ。


夫の分は用意していない。


もともと準備していなかったのに、

自分の分もあると思ったのか、


「俺は食わねーよ」


と声をかけてきた。


「分かった」


とだけ返して、

そのまま黙々と準備を続ける。


子どもは、朝ごはんを待つ間に、

学校の荷物を玄関へ運んでいた。


いつもなら、こんなことはしない。


出る直前になって慌てて持ち、

飛び出すように家を出る。


けれど、この日は違った。


1分でも、1秒でも早く、

この家を離れたかったのだと思う。


私も、同じ気持ちだった。


ただ、一つ問題があった。


出かける時間になっても、

夫が帰ろうとしない。


「俺も少ししたら帰るから」


そう言いながら、

まだくつろいでいる。


このまま一人で家に残すのは嫌で、


「一緒に出よう」


と声をかけても、

知らないふりをされた。


鍵を持っているから、

出入りは自由だとでも言いたげな態度。


言い争っている時間はない。


結局、私たちは先に家を出た。


大切な場所を、

そのまま残してきてしまったような感覚。


自分たちの居場所を、

侵されてしまったようで、


心が、落ち着かなかった。

出勤前の攻防

長い夜のあとに 眠れないまま、朝を迎えた。 何度も時計を確認して、 5時を見た時、 そのまま出社しようと決めた。 眠気はない。 ただ、重たい疲労感だけが残っていた。 横になったまま時間をやり過ごしていると、 カーテンの隙間から朝日が差し込んでくる。 ようやく朝が来たのだと、実感す...