私一人が悪者に・・・
誰かを悪者にすれば、きっと自分の罪悪感が薄れるのだろう。手っ取り早く悪者にできるのが私だったというだけだ。
あの日、みんな殺気立っていた。
普段冷静な振舞をする人も取り乱していたし、落ち着いて話ができるような雰囲気ではなかった。
不安でイライラしているのか、攻撃的な人も居た。
そんな状況だったから、少しくらい嫌味を言われても気にならなかった。
元々夫との生活で嫌味を言われ慣れていたというのもある。
ちょっとしたことでチクチク言われていたため免疫があったのかもしれない。
夫は扱いが難しく、些細なことで臍を曲げてしまう人だ。
日々ご機嫌をうかがいながら過ごしていた。
それがどれほど大変なことか、経験した人にしか分からないのかもしれない。
一方で、友人たちの間では思いやりがあり、気の良い仲間だったようだ。
だから余計に私のことが許せなかったのだろう。
彼らに責められた時、義両親は分かってくれているのだと思い込んだ。
でもどうやら『勝手に出て行った嫁』というレッテルが貼られていたようで・・・。
結局、夫婦間のゴタゴタがあのような事件を引き起こしたのだと結論付けられた。
もう何も言うまい。
どうせ言ったところで否定されるだけなんだから。
それよりも、あの事で子どもが影響を受けないようにしなければと思った。
幸い子どもは何も気づいておらず、その件で出かける時も仕事を装った。
仕事中も鳴りやまない電話
考え方は人それぞれだから何か言われるのは仕方がない。
それよりも困ったのは頻繁にかかってくる電話だった。
仕事中でもお構いなし。
机の中に入れていても気になるほどだったので、着信音を消した。
電源を切れなかったのは、子ども関連の連絡がいつ来るか分からなかったからで。
それが無ければとっくに電源を切っていた。
本当は着信拒否にしたかったのだけれど、それはそれで角が立ちそうで止めた。
攻撃したくて仕方の無い人たちに格好のエサを与えてしまうようなものだ。
着信音を消す前、あまりにも鳴るので机に入れてしまおうとしたら、同僚から
「どうしたの?トラブル?」
と聞かれた。
「まあ、トラブルって言えばトラブルですね~」
なんて言いながらそそくさと着信音をゼロにし、平静を装いながらそのままバッグにしまった。
中にはわざわざメッセージを残す人もいて困惑。
重要な要件なら分かるけど、内容が、
「お子さんを連れて来てあげてください」
とか、
「顔も出さないなんて無責任ではないですか」
とか。
全てスルーしたくなるようなものだった。
私だって何も考えていなかったわけではない。
夫のことも少しは可哀そうに思っていた。
ただ、それよりも大きかったのは・・・。
これでしばらくは夫から解放される!という思いだった。
義両親からすれば、とんでもない話だと思う。
思い詰めてあんな行動に出てしまった息子を放っておいて、伸び伸びと過ごしているなんて。
でも、これは嘘偽りない私の気持ちだ。
もちろん義両親には悟られないようにしたけれど、それが本心。
彼らからの連絡を懸命に避けていたら、その間に夫も段々と回復していた。
元通りの生活に近づいているのを知り、ホッとした。
夫の友人たちが本格的に私たちの離婚問題に参戦しようとしていたのは想定外だったけど。
