二人ぼっちの運動会
学校行事には極力参加するようにしていた。だけど、平日に行われるものは行きたくても行けないことがある。
ただでさえ時間的な配慮をしてもらっているんだから。
仕事も疎かにしてはいけないと、それまで以上に気を使った。
そのあたりのバランスがとても難しいんだよね。
そんな中でも運動会は絶対に見に行っていた。
二人ぼっちの運動会。
これは保育園時代から変わらない。
夫は働いている頃、
「忙しくて参加できないから、そっちで何とかして」
と言っていた。
その時は、『まぁ仕方ないか』程度に思っていたんだけど。
無職になった後も来なかった。
体調が悪いから、とか。
雨が降りそうだから、とか。
色々と理由を付けて、見に来ることはほとんど無かった。
たまに来たとしても嫌がらせばかり。
かけっこが一等じゃなくても良いじゃないの。
ダンスがずれていても良いじゃないの。
そう言うと、夫は
「結果が出なければ、やらなかったのと同じだ!」
と言い放った。
あの時、こんな人と一緒の職場じゃなくて本当に良かったと思った。
会社でもパワハラをしそうだし、頑張っても認めてもらえなそう。
「努力なんて意味がない」
なんて言う人には見に来て欲しくなかったので、内心は不参加を喜んでいた。
二人で伸び伸びと過ごすには夫が居ない方が良い。
居たら居たで子どもを叱責して委縮させてしまうだけなのだから。
保育園時代には、1度来ただけであとはスルーだった。
子どもも競技の合間に私を見つけると、あたりを見渡してパパが居ないことにホッとしていた。
夫よ、なぜ来たの?
あんなに面倒くさそうにしていたのに。
別居後、夫がいきなり運動会に現れた。
私は子どもの出番が近づいてきたらそばまで行って見学していた。
時折声をかけたり、子どもがこちらに気づいた時には手を振ったり。
楽しんでいる様子を見ると胸にこみあげてくるものがあった。
色々と大変なことはあるが、それを乗り越えて今があるのだと実感できる瞬間だ。
以前は
「がんばったね」
と声掛けすると、
「でも上手くいかなかったよ」
と言うことの多かった子ども。
パパと離れて暮らし始めてからは、
「楽しかった!」
と言うことが増えた。
私はそれだけで良かったのに、夫がわざわざ見に来て難癖をつけた。
「○○のところはもうちょっと○○した方が良かったんじゃないか」
みたいな謎の助言を連発。
子どもは固まっていた。
「楽しめたのなら良いんじゃないの?」
とかわそうとしたら、
「楽しいだけじゃろくな人間にならないぞ」
と意味不明な持論を展開した。
はっきり言って迷惑だった。
周りもチラチラとこちらを見ていて、子どもは恥ずかしそうに下を向いた。
この人はいつもそうなのだ。
子どもの気持ちなんてお構いなし。
それからいくつかの競技が行われ、お昼になり・・・。
どこで待っているのか知っているはずなのに、子どもはなかなかやって来なかった。