我が家のお風呂は音声つき
うちのマンションは築35年を優に超えていると思う。
でも、意外と綺麗に見える。
水回りを除いては・・・。
水回りというのは年代がよく分かる部分なので、やはりよく見るとくたびれている。
カビた跡なんかもあるし、ゴシゴシとこすっても落ちない汚れもある。
そんな我が家のお風呂も、一応音声つきになっていて便利ではある。
お風呂が溜まったら教えてくれて、お湯も勝手に止まるので溢れる心配もない。
実家で使っていた前のお風呂なんかを思い出すと『便利になったなー』と思う。
あっ、お知らせしてくれるとは言っても、ついているのはごくシンプルな機能だけね。
・電源を入れた時に音楽が鳴る
・お風呂が溜まったら音声で教えてくれる
・溜まっているのに蛇口を開けっぱなしにしていると、音声で警告してくれる
ざっくり言うとその程度なので、複雑なことなど何もない。
お風呂場の中にはボタンなどは無く、これまた非常にシンプル。
逆に言うとお風呂場で何か操作するようなことはできず、操作ができるのはキッチンに備え付けてあるパネルのみとなっている。
まぁ十分だよ。
実際にそれ以上の機能を欲するようなシーンもないし。
このシンプルで便利なお風呂で事件は起きた。
誰も居ないはずのお風呂で誰かが呼んでいる・・・
その日は子どもも帰りが遅くて一人だった。
そろそろお風呂にお湯を溜めようかなーなんて思ってチラっと時計を見た。
今からいれれば8時くらいには入れるか。
そう思いながらキッチンに向かった。
だけど、途中で用事を思い出してリビングに戻り、そのままテレビが気になってついつい見てしまっていた。
その時だった。
お風呂のシステム音声が鳴ったのは。
『お風呂で呼んでいます』
そう聞こえたので、咄嗟にお風呂場に飛んで行った。
だけど、何もない。
そりゃそうか。
今からいれようとしてたんだから。
そう思いながら戻ろうとした時、ふとこの音声自体がオカシイことに気づいてしまった。
えっ、ちょっと待って。
誰が呼んでるって?
今一人なのに?
そもそも我が家のお風呂にはそんな機能は無いけど?
そうなのだ。
お風呂場にボタンは無いから、そんな音声が鳴るはずは無いのだ。
そもそも家には私以外に誰も居ないし。
気づいてしまったら何だかとても怖くなって、ゾゾゾ~っと鳥肌が立ってしまった。
しかも、お風呂のシステムは電源さえ入っていなかった。
つまり、電源オフの状態では音声も音楽も鳴るはずがないのである。
それからしばらくは、一人の時にお風呂に行くと思い出してしまい、ゆっくり湯船につかることができなくなった。
あれ以来一度も呼ばれてはいないけれど、今でも時々思い出す。
一体何だったんだろう。