叩くことも子どものためだと言う夫
カッとなると夫はすぐに手が出ました。暴力は止めてください、と何度言ったことか・・・。
そのたびに、「俺だって好きで叩いてるんじゃない。子どものためだ」と反論されました。
夫のマイルールはどれも独特で、理解に苦しみます。
受け入れがたいものも多いのですが、それに対して意見を言うことは許されません。
私たちはただ言われたことに対して『はい』と返事をして従うだけ。
夫の言うことを聞いていれば間違いないのだから。
そんな風に言われ続けました。
おかしなもので、最初は『こんなのオカシイ!』と感じていたのに、段々と『そうなのかもしれない』という気持ちになってくるのです。
どうせ意見を言っても受け入れてもらえないから諦めてしまったというのもあります。
否定され続けることに疲れ果て、いつしか考えることを止めてしまいました。
考えられなくなったというのが正解なのかな。
想像できますか?
一番安心して過ごせるはずの我が家がもっとも緊張する場所だなんて。
ピンと張り詰めた糸のように、家の中は常に息の詰まるような空間でした。
それでも不満そうに見えたり文句を言えば怒鳴られます。
どのような状況でも機嫌良く過ごすことを求められ、私たちはいつも張り付いたような笑顔で夫と接していました。
偽りの笑顔なのに、本当は全く楽しくなんかないのに、夫は満足そうでした。
たくさんのルールがあると、時には意図せず守れないこともあります。
『破ってしまった!』と気づいた時の焦りは言葉では上手く言い表すことができません。
全身から汗が噴き出て、思わず身構えました。
私に対しては直接的な暴力というのはほとんどなくて、当たらないように物を投げるという程度だったんですけどね。
問題は子どもに対してでした。
目の据わった夫が怖かった
守れなければ罰を与える。
それが夫の考え方です。
決して脅しなどではなく、本当に心がズシーンと重くなるような罰を与えます。
特に子どもには酷かった。
鬼なんじゃないかと本気で思いました。
だから、私がかばうと更に怒ることが分かっていても、かばわずにはいられませんでした。
ある日、子どもが学校に忘れ物をしました。
ちょうど宿題が出ていたドリルを机の中に忘れてしまったのです。
帰宅後のそういうチェックをするのは夫の役目です。
私の方はフルタイムで仕事をしていて、子どもが帰る時間にはまだ家には居ません。
一日中家に居る夫が子どもが帰ってくるのを待ち、宿題や次の日の持ち物を確認してくれます。
それ自体はとても助かっていました。
でも、何かミスをすると信じられない位に怒って罰を与えるのがとても嫌でした。
その日、ドリルを忘れてしまったことに本人がすぐに気づき、青ざめました。
絶対に怒られることが分かっています。
だから、それよりも早く『ごめんなさい。ごめんなさい』と謝りました。
謝るだけでは夫は納得しません。
それまでにも同じようなことを経験していた子どもは、咄嗟に『学校に取りに行ってくる』と言いました。
それ以上怒られる前に家を飛び出していき、夫も渋々それを見送ったのですが・・・。
数十分後に戻ってきた子どもは手ぶらでした。
あいにく、その時に学校で何か集まりがあって入れなくなっていた、とのことでした。
だけどドリルを持ち帰らないわけにはいかず、しばらく校内を行ったり来たりしてウロウロしていたようです。
まだ低学年の子どもがいつまでも帰らないのを見た教員は、たぶん心配して『早く帰りな』と言ったんです。
そう言われた子どもは泣きそうになりながら家へと向かいました。
インターホンを鳴らし、玄関を開けた時の夫の表情は容易に想像できます。
目が据わって、大人の私でも身のすくむような形相になっていたことでしょう。
ご飯も与えずひたすら子どもを無視する夫
罰にも色々あります。
その時はご飯を与えず、ひたすら無視をしていました。
子どもが話しかけても、全く反応しません。
そうかと思えば、急に自宅用に購入したドリルを出してやるように促します。
こういう時は言葉で指示するのではなく、座っている子どもの目の前に置いて圧をかけるんです。
そんなことをされたら、子どもだってやらざるを得ないですよね。
強制的に勉強をやらせて、自分はさっさと就寝。
そういうところも信じられませんでした。
だけど、『飯はやるな』と言われてしまった時にはかえって好都合です。
目の前でご飯を与えると更に怒るので、夫が寝てからこっそりあげていましたから。
それでも、いつものようなご飯を食べさせてあげることはできません。
せいぜい小さなお握りやパンなどを用意するくらい。
それでも食べないよりはマシです。
夫がいつまでも起きている日などは、早く子どもに何か食べさせたいのにそれができない。
これは非常に大きなストレスになっていました。
育ち盛りの子どもにご飯も与えず、話しかけても無視をすることのどこが【子どものため】なのでしょうか。
何時間もお説教されて泣きつかれて眠ってしまった時には、暗がりの中で私の手を探しギュッと握っていた子ども。
その小さな手を握り返しながら、【夫がここに居なければ良いのに】と思いました。