夫が出かけた隙を見計らって決行した家出
私が初めて家出をしたのは子どもがまだ2歳くらいの頃。夫が出かけた隙に家を出た。
前日、一方的に怒鳴られてなじられて心はズタズタだった。
でも、夫はそれを『夫婦間の言い合い』だと言う。
普通の喧嘩だととらえている時点で大きな認識の相違があると思う。
だが、夫はそれに気づかない。
なぜなら、誰もが自分と同じように言いたいことを全部言えると信じているからだ。
そんな夫の言い分はこうだ。
『一方的だと言うのなら、お前も言い返したら良いだろう』
人の心が分からない人だとは思っていたけれど、これほどまでとは。
そもそも、目の前であんなに怒り狂って怒鳴り散らしている相手に言い返せる人がいるだろうか。
もしそんな強心臓の人がいたとしても私には無理だ。
一緒に暮らしていたら段々と通じ合えるものだと思っていたのに。
時間が経てば経つほど心の距離は広がるばかり。
ただ、この時は本気で家に帰らないという覚悟があったわけではない。
息抜きをしたかっただけ。
外に出て夫の居ない場所でリフレッシュして。
また違った視点で物事を見られるようになれば良いな。
そんな風に思って家を出た。
とは言っても、何も言わずに出るわけだから少し緊張はしていた。
これでまたなじられるだろうな。
何日無視されることになるのかな。
その後の仕打ちが怖かったけれど、このままでは爆発してしまいそうで決行した。
子どもの小さな手を引いて家を出たあの日
わが子の小さな手を引いて、玄関のドアを開けた瞬間のこと。
あの時の気持ちは今でも鮮明に覚えている。
小さな冒険が始まるようなワクワク感と、その後のことを想像して憂鬱な気持ちと。
息苦しい空間から抜け出したという解放感もあった。
さて、どこに行こうか。
ふと見ると、子どもはお出かけだと思っているらしくはしゃいでいた。
そりゃーそうだ。
私に連れ出されただけなのだから。
しかも、お出かけ用の上着も着せてちっちゃなリュックも背負わせた。
この一連の流れからは、完全にお出かけに出かけるようにしか思えない。
不安な気持ちでカギを閉めていたら、子どもが元気良く
「いこっか!」
と言った。
その言葉でハッと我に返り、急いで階段を下りた。
ここで見つかってしまったら連れ戻されてしまう。
自分で納得して戻るのと、無理やり連れ戻されるのとでは全く違う。
それに、万が一ここで見つかったらどんなモラハラが待っているかも怖かった。
怒鳴られるだけじゃ済まないな。
物が飛んで来たら危ないから、そうなったらひたすら謝るしかないのかな。
とにかく子どもだけは守らなくちゃ。
そんなことをグルグルと考えながら駅へと向かった。