2026年5月25日月曜日

塾を辞めたことにした

コソコソと塾通い

「子どもの意思を尊重する」


夫はいつも、

聞こえのいい言葉を並べた。


でも実際は違う。


塾のこともそうだ。


子どもの気持ちなんて無視して、

一方的に「辞めろ」と言った。


いったい、

なんの権利があって──と

何度思ったことか。


でも、

逆らって怒らせるほうが面倒だから。

私は、従ったふりをした。


本当は、


塾を続けて受験するか。

塾を辞めて、

夫の母校へ進むか。


その二択を、

突きつけられていたのだけれど・・・。


私たちも必死だった。


「塾を辞めるだけでも譲歩した」


そう見せかけて、

これ以上踏み込ませないようにした。


そして裏では、

こっそり塾へ通い続ける日々。


今思えば滑稽だ。


でも、

夫に知られるほうがずっと怖かった。


子どもは、

塾から帰る時になると

まるで遊び帰りみたいに

振る舞った。


家には私しかいないのに。


それでも、

“普通のふり”を続けた。


演じ続けているうちに、

本当に塾を辞めたような

気さえしてくる。


もし問い詰められても、

平然と嘘をつけそうだった。


そうでもしないと、

子どもを守れなかった。


自分たちを守るための嘘

私はずっと思っていた。


子どもと夫を、

直接やり取りさせてはいけない、と。


子どもは純粋だ。

誘導されれば、

簡単に飲み込まれてしまう。


しかも夫は狡猾だった。


素直なうちの子では、

太刀打ちできない。


だから私は、


「本当は辞めたくなかった」

「かなり傷ついている」


そんな芝居まで続けた。


毎日、

いつバレるかと怯えながら。


もし発覚したら、

「私が無理やり続けさせました」

そう言うつもりだったけど。


それで、

守り切れるという確信もない。


幸い、

三か月経ってもバレなかった。


そして子どもは、

少しずつ元気を取り戻していった。


秋になる頃には、


「あれをやってみたい」

「こんなことに興味がある」


そんな未来の話を

するようになった。


それまでは、

ほとんど聞いたことがなかった言葉だ。


目を輝かせながら、

将来を語る子ども。


そんな姿を見て、

ああ、

続けてよかったと思った。


恐怖に負けなくて、

本当によかったと。


でも同時に、


これから先も、

夫は何度でも口を出してくる。


その現実を思うたび、

胸の奥が冷えていった。

塾を辞めたことにした

コソコソと塾通い 「子どもの意思を尊重する」 夫はいつも、 聞こえのいい言葉を並べた。 でも実際は違う。 塾のこともそうだ。 子どもの気持ちなんて無視して、 一方的に「辞めろ」と言った。 いったい、 なんの権利があって──と 何度思ったことか。 でも、 逆らって怒らせるほうが面倒...