自分が特別な存在だと信じて疑わない
夫はよく、『自分はそこら辺の人たちとは違って特別な存在だ』というニュアンスのことを言っていた。さすがに直接的な表現では無いのだけれど。
言葉の端々から『特別なんだから敬え』という思いが透けて見えた。
はっきり言ってこんな考えを持つ夫は非常に面倒くさい。
普通の対応で納得してくれることは無かった。
対応を間違えると怒られるのだけれど、怒られたって私にはそう見えないんだからしょうがない。
無反応を貫いていればそのうち気も収まるだろうだろうと静観するも・・・。
その予想はだいたい外れていた。
何度も同じことを繰り返して学習したが、私が尊敬の念を表すまで夫の不機嫌は続いた。
余談だが、私は嘘をつけない。
本当は夫のことを尊敬していないのに、表面上だけ取り繕うことがどうしてもできなかった。
だけど、そのままでは事態は悪化の一途を辿る。
だから、何とか上手くやり過ごそうとした。
実際にはそんな夫を冷めた気持ちで見ているんだけど、表向きは持ち上げて褒めるという・・・。
やってる最中『私、何やってるんだろう』と虚しくなったが、家庭の平和を守るためには仕方が無かった。
心にもないことを言っていると、そのうちこちらの気持ちも荒んでくる。
何でこんな風に嘘をつかなければならないのか。
自分がやっていることに対して罪悪感のようなものも生まれた。
それで段々と苦しくなって、こんな不毛な時間が長引かないように話題を変えたりした。
「子どもは自分似」と思い込みたい夫
虐待していた割には、夫はよく子どもを『自分似』だと言っていた。
ただし、それは貶す時以外。
気に入らないことがあって怒った時などは、
「ママにそっくり!」
と言っていた。
子どもも自分に似ていることを喜ぶだろうと夫は思っていたようだが。
そんなわけがない。
内心、夫に似ていると言うのを耳にすると酷く落胆していた。
「えっ、(あんな最低な)パパに似ているの?」
とにわかには信じられない様子だった。
それでよく私に
「ねぇ、どの辺がパパに似てるの?」
と聞いて来た。
もちろん私は全力で否定して、
「似てるところなんて無いよ。ゼロだよ。100%ママ似」
と言っていたけど、これはあながち嘘ではない。
というのも、子どもは良いのか悪いのか衝撃的なことが起きてもしばらく経つとケロッとしていた。
これはまさに私の特徴で、夫と正反対の部分。
その上、のんびりマイペースで可愛い物が大好き。
それに対し、夫はせっかちでいつもイライラしていた。
可愛いものを愛でる私たちを冷ややかな目で見ながら、なぜか不服そうにしていたのも印象深い。
今でもなぜ不服そうにしていたのかは分からない。
怒った時に子どもや私の大事にしていた可愛いものを捨てようとするので、『やっぱり好ましく思ってないんだな』というのは感じた。
夫はよく怒鳴ったり子どもに暴力を振るったり、長期間無視を続けたりした。
私たちの大事なものを捨ててしまったことも。
わざわざそんなことをしてまで悲しませたいんだなと思っていたし、家族からどう思われようが構わないんだと思っていた。
あんなことをしておいて好かれるはずがないから、それも自覚した上でのことだろうと考えていたが・・・。
どうやら何をしても家族にとって特別な存在だと信じていたらしい。
だからあんなにも強気だったのだ。
実際のところは、二人とも好きとか尊敬とは真逆の感情を抱いていた。
生涯覆ることはないだろう、強烈な拒否感と共に。
