何故、夫は採用されるのか
長い長いブランクを経て再就職先を決めた時、私は正直驚いた。もう夫は働けないだろうと思っていたからだ。
働きたいと思っていても採用してくれる会社がなければ実現できない。
夫の場合はあまりにもブランクが長すぎたため絶望的に思えた。
だが、そんな予想を覆し、早々に再就職先を決めた。
あの時はもう、あっぱれと言うしか無かった。
私だったら到底無理な話だ。
手に職というほどのスキルもないし、同じような経験を持つ人は大勢居る。
夫だって決してレアなスキルを持っているわけではないが、どういう訳がスムーズに決まった。
ただ、その仕事も数か月であっさり辞めた。
本人にしてみればあっさりでも無かったのかもしれないが。
傍から見ると、ラッキーを使い果たして手に入れた職なのに勿体ない気がした。
その数か月の間にも本当に色んなことがあった。
夫との離婚交渉がとん挫したり具合が悪くなったり。
義実家関連でも相変わらず問題が発生したりして。
とうとう落ち着かないまま職を手放した。
その時、もう夫は働けないのだと思った。
再就職後の夫は自分の待遇とかポジションに固執して会社への不満を募らせていた。
それを爆発させて辞めたわけだが、どこに行ってもそういうことはあると思う。
また同じようなことを繰り返すんだろうな、と思ったら再就職は厳しい感じがした。
そもそも、長いブランク → 再就職後数か月で離脱 という人を雇いたい会社があるだろうか。
私は無理だと思ったので、この件は二度と触れないでおこうと決めた。
それなのに・・・。
義両親が義実家に戻ってから数か月後、いきなり夫が二度目の再就職を果たした。
その時も実にあっさりと内定を勝ち取ったようで、本当に驚いた。
自分の生活費を出して欲しい
二度目の再就職先も一度目と同じような仕事内容だった。
だから決めたんだろうけど、また数か月で辞めたら今度こそ次は無いだろうなと思った。
そんな私の心配をよそに、内定した瞬間から夫は再びマウントを取り始めた。
威張られるのも下に見られるのも慣れているから構わない。
「あんな仕事でよくモチベーション保てるな」
という嫌味もスルーできる。
ただ、稼いでいるのなら自分の生活費くらい出して欲しくて、交渉しようかずっと迷っていた。
このくだり、何度繰り返したか分からない。
収入がある間に話を進めてしまわなければと焦って交渉するのだが。
やはり夫の方が上手なのだ。
口が上手いから、気づいたら言いくるめられていることが多くて、私の思い通りにいった試しが無かった。
それでも諦めたらそこで終わりだと思い、何度も交渉を試みた。
あんまりしつこくすると逆鱗に触れて何をしでかすか分からないから。
そのあたりの匙加減も非常に難しくて・・・。
必要以上に慎重になり過ぎてしまった。
でも、そんな努力が実を結び、二度目の再就職の時には何とガス代だけ払ってもらえることになった!
電気代も払って欲しかったけど、それを言ったらガス代の方まで無かったことにされそうで言うのを止めた。
そこに私たちは住んでおらず、使っているのは夫や夫の関係者だけだ。
義両親だったり、夫の友人だったり。
いずれにしても私には関係が無いのだから、本来は夫が払うべきだと思う。
でも、夫の理論では『部屋の契約をしている人が払うべき』ということになるので。
結局、夫が譲歩して温情で払ってくれている体になった。
納得がいかないけれど、払ってもらわないよりは良い。
こんな感じで、私は色んなことを我慢して妥協して譲歩を引き出してきた。
そうでもしなければ交渉のテーブルにつくこともできなかった。
夫の方は、本当は金銭的にも余裕があって出す気になれば出せるのに。
必死で交渉するこちらの反応を見て楽しんでいるようだった。
