「少しでも良いから子どもと過ごしたい」と言う夫
長期休みになると、子どもはゆっくりと穏やかに過ごしていた。学校がある時には通うだけでもとても大変だったから。
通学がないと楽だった。
時々はお友達と遊ぶこともあり、可能な限り私が連れて行ったり、相手の子の保護者が連れて来てくれたりした。
そうやって少しずつあの環境に適応していき、そこそこ楽しそうに過ごしていた。
あとは夫と離婚して本当の意味での再出発の日を待つだけ。
そんな気持ちだったのに、夫ののらりくらり作戦により離婚の目処は立たなかった。
長期休みは、良いことばかりではない。
お迎えとか学校の行事などがないからその分楽になるけど。
夫がその時期を心待ちにしていて、いつも『父親の権利』を主張してきた。
あの人は、何度伝えても理解してくれないのだ。
子どもももパパと過ごすことを嫌がっているのだと再三にわたり伝えているのに。
私が意地悪を言っているのだと思い込んだ。
自分に都合の良い受け取り方をするのは前からだ。
別居してから始まったことではないが、それにしても話が通じないのはとても疲れた。
あまりにも通じないのでスルーしようとしても、夫はしつこくコンタクトを取ってきた。
長期休みの間、ずっと逃げ続けるというのも難しい。
相手は大体の期間を把握しているから、その間ずっと諦めずに連絡し続けてくる。
こちらはせっかくゆっくり過ごしているのに、いつ連絡が来るかと気が気でなくて緊張状態が続く。
こうなるともう根競べだ。
そこに義両親が絡んでくると更に複雑になる。
特にお義母さんは泣き落とし作戦に出るので、私は心を抉られるような思いで断り続けた。
どんなに相手を拒絶していても、泣かれてしまうと弱い。
これは私の欠点だ。
だが、いざそういう場面に出くわしてしまうと冷静ではいられなかった。
それでも拒否するなんて、とてつもなく酷いことをしているような・・・。
そういう性格を知っているから、夫もよくお義母さんを使っていた。
言葉は悪いが、夫の場合はまさに使っているという感じだった。
他人を利用することをなんとも思わない人だから、親だっていざとなったら利用する。
具体的にはお義母さんの感情を揺さぶるようなシチュエーションをわざと作り、涙を流させるというやり方で・・・。
最初に気づいた時にはかなりドン引きした。
詳しく書いてしまうと身バレにつながるので書けなくて申し訳ない。
あんなことを思いつくのは夫くらいのもので、そのたびにサイコパスだと思った。
「1日1万円でどう?」
別居中、夫は何度も慰謝料を要求してきた。
私を困らせたかったのだろう。
そう言われた時には非常に困惑し、どうしたら良いのか頭を悩ませた。
子どもを連れて家を出たのは確かだし、体調不良の夫を見捨てたと言われれば否定できない。
ただ、その話には肝心な部分が抜けていて、虐待やモラハラから逃げたという事実があった。
それなのに、その部分は夫の中では私がでっち上げたことになっていた。
これもモラハラ夫らしいと言えばそれまでだが。
そういう人なのに、長期休みになるとにじり寄って来て、
「1日1万円でどう?」
と言ってきた。
この言葉が何を意味するのかと言うと、『1日1万円払うから、子どもと一緒に過ごしたい』ということだ。
1日過ごしたら1万円。
3日過ごしたら3万円。
1週間過ごしたら7万円。
日数分だけお金を払うから、一緒に過ごしたいという提案だった。
もちろんすぐに断った。
お金の問題ではないし、たとえそれが義両親の願いだとしても受け入れられなかった。
それに、預けたら何をされるか分からないのに安心して預けられるはずがない。
虐待をしていたくせに、
「(子ども)のことは本当に可愛いんだ!一緒に居たい」
と言ってきては、私を非難してくるのも煩わしかった。
「一方的に引き離された側の親は、何も要求できないのか?」
と文句を言われても、私だって困ってしまう。
「まず、過去に虐待をしていたことを認めることからだよ」
と勇気を出して言ってみた時には、
「またそれか!あれを虐待なんて言うのはお前くらいのもんだからな!」
と激怒していた。
痣ができるくらい叩いたり、真冬に薄着で閉め出したり。
真夜中まで説教をして寝かせなかったりしたこともたびたびあった。
あれらが虐待でないというのなら、自分も同じことをやられたらいい。
子どもが大事にしていた物を目の前で破壊し、
「お前が悪いんだからな!」
と言った時の夫の意地悪な顔を私は一生忘れない。
あの時確信したのだ。
この人には親としての愛情など無いのだと。