久しぶりの対峙
予定通り、義実家にやってきた奥さん。その表情は、心なしか晴れやかだったそうだ。
吹っ切れたのかもしれない。
ずっと悩んできたことから解放されると、自分でも驚くほどの開放感を味わうことができる。
私の場合もそうだった。
この時点ではまだ夫との離婚交渉が進んでいなかったけれど。
今なら分かる。
決心できた時の気持ちが。
その表情を見て、『もしかしたら、やり直せるかも』と勘違いしてしまった人物が居た。
それは、お義兄さんだった。
彼女がよほど穏やかで良い表情をしていたのだろう。
それを見て、改心して戻って来てくれたのだと勘違いした。
この考え方がそもそも間違っているように思う。
あの頃、義実家に戻ったお義兄さんはずっと『被害者』みたいな振る舞いをしていた。
でも、実際には被害者などではない。
それをどう勘違いしたのか、自分は被害者で、奥さんが加害者という感じだった。
それを咎めるどころか加勢した義両親も悪い。
そりゃー自分の子どもが可愛いのは分かる。
でも、あの場合はどう考えてもお義兄さんに非が無いとは言えない状況だったのに。
そんな針の筵のような場所に、奥さんはやってきた。
決着をつけるために。
その決心を聞き、お義兄さんは明らかに動揺していて、義両親はそんな息子を不憫に思ったようだ。
「あなたの一方的な思いだけでは決められない」
と奥さんを責めた。
責められても、こういう時ってもう気持ちは変わらないんだよね。
奥さんは、
「離婚届けに記入したら、こちらに送ってください」
と住所を渡した。
突然の慰謝料請求
ここからは本格的に身バレにつながりそうであまり詳しく書けないのだが。
実は、この後にまだひと悶着あった。
義実家に来た後、再び連絡がつかなくなった奥さん。
何度も同じようなことがあったので、そのこと自体には誰も動じなかった。
ただ、数か月後にいきなり慰謝料を請求され、度肝を抜かれた。
円満に離婚へと向かっているのだと誰もが思っていたのに。
まさか慰謝料請求をしてくるとは・・・。
以前、
「慰謝料を払って欲しい」
とは確かに言っていた。
でも、本気に受け止める人は居なかった。
いつの間にか弁護士を入れたようで、やり取りは弁護士を通して行うことになった。
もう直接話すこともできない、と落胆するお義兄さん。
この状況では、そんなことに気落ちしている場合ではないのに。
家を売っても残債が残り、更に奥さんから慰謝料を請求されている。
それをどうやって払うのかも考えなければならない状況で、呑気に『奥さんとのやり取りが~』なんて考えていたようだ。
しかも、お兄さんの仕事だって危うい。
はっきり言ってすぐにでも職を失いそうな状況だった。
お義兄さんの方は弁護士を雇う余裕も無かったので相手の言いなりになるしかなかった。
結局、慰謝料を払うことに。
ただ、お金を持っていなかったので、実際には払えていなかったと思う。
その後、仕事も本当に辞めてしまい、奥さんに払うどころでは無くなった。