動きの遅い夫をサポート
夫はいつも威張り散らしていた。自信満々に人の指摘をし、言う通りにしなければ非難した。
そんなんだから自分はさぞかし素晴らしい対応をするのだろうと思いきや、そうでもなかった。
何でも口出しするくせに、動きはとても遅かった。
というか何でもやり始める前から粗探しをするため、スタートを切るまでが長かった。
慎重派と言えば聞こえは良いが、はっきり言って決断力が無いだけだ。
物事を斜めから見る癖がついてしまっているのも問題だった。
周りは非常にやりにくいし、助言なんて聞かないんだから助けを求めてこないで欲しかった。
そう思っても、怒り狂う姿を想像すると恐ろしくなって手を貸してしまうことが少なくなかった。
いつもは、渋々サポートしていた私。
でも、アパート探しだけは自分から動いた。
早く出て行って欲しいという気持ちが強かったので、積極的に声掛けもした。
夫は自分中心のお目出たい人なので、『俺の事、そんなに考えてくれてるんだな』と喜んでいたに違いない。
そういう勘違いが、あの件では役に立ったということだ。
そのタイミングでは、夫は働いてきちんと収入も得ていた。
長年同じ所で働いている私よりも高額な給料をもらい、遊びに趣味にと勤しんでいた。
よほど高い物件でも無ければ、家賃を払うのも全く問題なかった。
一つだけ気になったのが勤続年数。
まだ再就職してから数か月だったから。
ただ、これも条件の厳しい所でなければクリアできそうだから、夫がおかしな注文さえつけなければすぐに決まるのではないかと感じた。
難航する夫の部屋探し
夫の手取り収入の3分の1だと、結構良い物件を借りられることに気づいた。
アパートというか、築浅のマンションでも問題ない感じで。
正直、羨ましくなった。
自分が住むわけではないのに、いつの間にか情報を見るのも楽しみに。
あーでもない、こーでもないと言いながら探していると、時折掘り出し物と思われる物件も出てきた。
それを興奮気味に伝えると、
「結構良いね。あー、でも○○が・・・」
と難癖をつける夫。
本当にそんなところにこだわってるの?と怪しんだりしたが。
こればかりは本人の気持ちなのだから仕方がない。
その後も何度か良い物件を見つけては夫に提案。
そのたびに些細な問題点を指摘され、段々と私もばからしくなってきた。
本気で探す気はあるの?
引っ越したいと言ったのは夫だよ?
結局また振り回されているだけの気もしたが、諦めるわけにはいかなかった。
だって、どうしても家を出て欲しかったから。
そんな中、これは!という物件に出会った。
駅からの距離、築年数、設備、建物の綺麗さ。
どれをとっても申し分無かった。
私だったら即決だろうという部屋だったので、自信満々に夫に伝えた。
そうしたら、数時間後に
「あー、ここは雰囲気的に良くないわ」
という意味不明な返信があった。
どういうことかと聞いてみたら、どんな良い部屋でも本人が直感的に気に入らなければダメらしかった。
しかも、
「家賃が予算オーバーしてる」
と言うので計算してみたけど、手取りの4分の1程度に収まっている。
問題無いのでは?と思ってそう伝えたら、
「他にも生活費がかかるんだから厳しいだろ!」
と怒られた。
そんなことを言ったら、私なんてどうなっちゃうの。
それよりとても厳しい条件でずっと家計を支えてきたのに。
この不満は口には出さなかったが、無反応になったから気づいたのか、
「お前、ある意味すげーわ」
と褒められてるのか貶されてるのか分からないことを言われた。
「あの手取りで家賃払えるって奇跡だわ」
と言われ、あーこれは貶されてるんだとはっきり分かった。