サバサバ系女子は頼りになる
夫のとりまきの中には何人かの女性がいる。その中の一人Sは夫の良き相談相手だった。
何があってもとにかく擁護してくれる。
だから、夫もちょっとした相談をよくしていた。
耳の痛いことを言ってくる相手を選ばないところが実にあの人らしい。
私たちが初めて顔を合わせたのは既に夫のモラハラ虐待が酷くなっていた頃だった。
その前から仲間内では姉御肌として慕われていて頼りになる存在だと聞いていたのだけれど。
会った時の印象はそのままだった。
私にも妹のように接してくれた。
最初から非常にフレンドリーで、内輪ネタの会話に入れない時には他の話題に切り替えるなど気遣ってくれて。
この人は他の友人たちとは少し違うのかも、なんて思ったりした。
夫なんて
「コイツ、ノリが悪くてごめんな~」
とまるでその話題に入ってこれない私が悪いみたいな言い方をするんだから。
そういう所も本当に嫌だった。
妻をディスることがカッコいいとでも思っているのだろうか。
少なくとも私は大事にしている人の方がよっぽどカッコいいと思った。
ただ、そこで下手な態度を取って夫の機嫌を損ねるのは避けなければならなかったから。
ニコニコしながらひたすら黙って愛想を振りまいた。
ああいう場面では夫の発言に対して周りの皆が『そうだよなー。気持ちわかるよ』という感じになる。
そんな中、Sだけは、
「今の発言はダメだよ!」
とビシッと指摘してくれるのが救いだった。
それまでサバサバ系女子というのは実際には大抵ネットリしているものだと思っていたのだが・・・。
Sのような人も存在するのだと、認識を改めた。
お洒落で優しかったSが居なくなった
夫のとりまきの中で唯一心を開ける相手だったSは、お洒落大好き女子でもあった。
いつも素敵でキラキラしていて、見ていて眩しかった。
私なんて子どもっぽいし、夫の命令によりスカートの丈まで決められていたから。
つまらない人間に見えているんだろうな、と卑屈に思うこともあった。
でも、一度も否定的なことを言われたことがない。
むしろ『似合ってるよ』と褒めてくれたり『このワンピースにはこういうタイプの靴が合うよ』とアドバイスをくれた。
なんだか本当のお姉ちゃんみたい。
実の姉は居るのだが、また違った方向で頼りになる感じで。
Sと話すのはいつも楽しかった。
夫の仲間との交流が続くのは嫌だけど、でもその間はSとも話せる。
そう思っていたのだが・・・。
Sは突然居なくなった。
実はSには長年付き合っている人が居て、相手は既婚者だった。
サバサバ系のSがそういう恋愛をすることは意外だったが、私がとやかく言うことでもないから黙って聞いていた。
どうやら消えた理由はその相手との駆け落ちらしく、直前に匂わせるような発言もあったようだ。
数か月後、別の町で暮らしていることが分かり一同はホッとした。
ただ、あれほどまでにつるんでいた仲間なのに、実はSのことをほとんど知らなかった。
実家も知らなければ、家の場所も知らない。
駅までは教えてもらっていたから、ざっくりとした場所なら分かるという程度だった。
そう言えば、あんなにみんなの話を聞いて面倒を見てきたSだったけれど自分の話はほとんどしなかった。
もしかしたら、Sが心を開ける相手はそこには居なかったのかもしれない。
ふと、駆け落ちした人がそういう相手なら良いな・・・なんて。
不謹慎だけど、そんなことを考えてしまった。
